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第九章 不可思議な罠達④
第5話 管理者の傍観③
しおりを挟む(ほほう……菓子、か??)
守護ゴーレムを、マシュがいささか物騒な耳長族由来の魔法で倒した直後。
妾は何も手を貸してはおらぬが、魔素が衝突し合い……ゴーレムの身体をベースとして雪砂糖の結晶が生じたのじゃ。
ジェフは見るのが初めてではなかったゆえに、真っ先に確認してから味見をしおった。そのあとに、トラディス達にも食べさせていた。
妾も食べたかったが……魔剣がトラディスに何か耳打ちをするのに気づき、調理するのか……かまどを作り、鍋をいくつか用意しておった。
(油も使うようじゃが……なんじゃ??)
菓子もじゃが、ヒトの子の料理なぞ……ダンジョンマスターである妾はほとんど口にしたことがない。匂いに釣られて登ってはきたが、ダンジョンマスターゆえにあまり食事をする必要がないのじゃ。普段は魔素があれば充分。
だが、今トラディスが作ろうとしている菓子には興味がある。
妾はマシュの頭から降りて、トラディスの邪魔にならぬようにかまどの近くで止まった。
「ん? 気になる??」
トラディスは、妾を邪険に扱うことはなく……一度調理の手を止めて、クダウサギと化けている妾の頭を撫でてくれた。その手つきの優しさに、この子はほんに……心根が優しい男じゃと改めて理解出来る。
戦闘などの能力はまだまだ荒削りじゃが……悪くはない。
経験を積めば、きっと良い冒険者となるであろう。
トラディスは、妾を少し撫でた後に調理に戻った。念話での魔剣の指示に従い、銀色の大きな器に結晶を入れて……溶かしていた。
そのままでも充分に美味であるのに、何を作るのじゃろう??
「えーっと……溶けたら、パンを」
ジェフはともかく、マシュに気づかれぬよう……トラディスは魔剣が所持しておる技能、亜空間収納から……パン、を取り出した。
細長く、固そうに見えて切り込みが表面にいくつか……なんじゃ、このパン? と妾は口出ししたくなったわい。
トラディスはそのパンを、鞄から出したギザギザの包丁のようなもので切っていき、それを……出来上がると熱していた油の鍋にどんどん入れて行ったんじゃ!!?
(パンを……揚げおった!!?)
結晶も使うとは言え……どんな菓子になるんじゃ!!?
まったく想像がつかぬゆえに、妾は油跳ねに気をつけながら……トラディスの後ろに周り、油鍋の中を見てみる。
カリカリに揚がるようで……これだけでも美味そうに見えた。
トラディスは、挟む銀の道具を使って……それらを鍋から引き上げると、網と受け皿のような銀の道具に入れていく。
すべて引き上げてから……鍋で溶かしていた結晶の中に、なんの躊躇いもなく入れたのじゃ!!?
「こんなものかな……??」
じゃが、揚げたパンを入れたそれは……。
飴細工のようで、実に美味そうに見えたのじゃ!!
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