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第十六章 出戻り②
第1話 このダンジョンマスター
しおりを挟む『……くくく、出戻ってきましたね。あの少年が』
持ち出すことが可能でないとされていた……ワタクシのダンジョンで眠っていた、あの奇怪な魔剣。
あれは、封印の楔でした。
適合者はいないと思われていたので……あの身なりもボロボロだった、薄汚い少年がそうだとは思わず。
手に取ったら、消滅するでしょうと思っていたら……そうではありませんでした。
だから……迂闊でした。
ワタクシが、アナウンスを送ろうにも……少年はあの魔剣を持って飛び出して行ってしまいました。……コアが多少暴走して、モンスターが溢れ出ても……少年は魔剣を得たことで、逆に立ち向かいましたが。
ワタクシはこのダンジョンを出ることが出来ません。
他のダンジョンのダンジョンマスターもほとんどが同じです。
『……だから……はやく、魔剣をこちらに』
でないと、ワタクシが制御しきれないモンスター達がさらにあふれ出てしまうばかりです。
ダンジョンマスターとしては、情け無い限りですが……あの魔剣があれば、このダンジョンは通常通りに稼働していくだけですから。
ふふっと笑っていると……上層のモンスターが一瞬で消されたアナウンスが届いてきました。
『……瞬時にモンスター達を??』
あの魔剣についての性能は、ダンジョンマスターであるワタクシとは切り離した存在。
コアが出来る以前からあったとしか……ワタクシの記憶にも存在していません。
少年以外にも……冒険者らしい人間が何人かいるようです。
となれば、別の魔剣もしくは……聖なる武器の存在か。
『くくく……であれば、このダンジョンをさらに活動させるいい原動力になるのかもしれませんねぇ??』
ダンジョンが活性化すれば、コアもさらに育つ。
コアが育てば、ワタクシもさらに成長するでしょう。
このような楽しみを得られるのであれば……あの魔剣が抜かれたのは良いことだったかもしれませんね?
モンスター達があふれ出るのはいただけませんが、今だけだと思っておくことにしましょう。
とりあえず、ワタクシは各層にある透し見の魔結晶を稼働させることにしました。
そして、一番上の階層に……身綺麗になりましたが、あの魔剣を持った少年が映りました。
『…………おや??』
少年の顔に、どこか見覚えがあるような気がしました。
このダンジョンの過去の攻略者……だったかもしれませんが。少年よりも、もう少し青年だったような。
なにせ、昔過ぎてよく思い出せません。気になるのは、色々面倒なので少年の行動を見つつ、記憶を辿ることにしました。
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