王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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番外編②

第137話 妻の食べたい食材

 アルベルトの育児はまだまだ大変極まりないが、もうそろそろイツキとの共寝をしても問題がないのでは?と思った時期に……彼女から言い出したことがあった。

 冬になる前に食べたい食材があると。


「食べたい食材? こちらで手に入るものなのか?」
「多分。ですが、ゲイリッシュさんあたりならご存じかもと」
「というと、海の食材?」
「はい。魚の卵なんです」
「……どう。食べるつもりなんだ」
「基本は醤油とか麹漬けですが、おかゆの味付けにしても美味しいんですよね……」
「……そう、か」


 相変わらず、凄い食材をと思ったが。イツキのいた異世界ではなんら不思議でもない食材らしい。よく聞けば、まだ文化などが育つ前から食していた記録が残っているくらいだとか。さらには、北方だと魔物みたいな魚型のそれの卵以外も余すことなく食べるらしい。それはさすがに信じがたかったが。


「食べたいんです。……いくら」
「イクラ?」
「ぷちぷちした触感が堪らないんでっす!! 国や地域によっては捨てる臓物扱いなんですが。寄生虫とかの処理をきちんとすると美味しいんですよ!!」


 イツキが物凄くはしゃいでいる。それくらい、育児の疲れ以外に食事への欲求が高まったのだろう。用意してやりたいのはやまやまだが、俺では伝手があれど地元の漁師らを驚かせるだけで終わる気がした。

 なので、ここはやはりゲイリッシュ殿を呼ぶしかないと合図をして降りてきてもらった。警護になっているのはイツキも知っているので、彼が来るなり改めて説明を始めていたが。


「ほーん? サケの卵?」
「調理次第では、お酒のつまみにも最適ですね」
「そりゃ、いいな? 産卵期とやらはたしかに近いし……今の時期を逃すと少ないな」
「養殖しているところはないでしょうし……お願いできませんか?」
「よしきた。旦那、俺一旦離れるぜ」
「今日明日は大丈夫だから、お願いします」
「ほいよ。坊主の方もいるしな」


 レクサスとゲイリッシュ殿は交代でこの家の護衛に来てはくれているが、最近は賊の鎮圧も落ち着いてきたとの報告があがっているので、そろそろ彼らも本来の任務に戻らなければならない。

 近衛騎士団部隊長と暗部育成隊長直々の護衛だったからな……なかなかに豪華なものだ。

 それがイツキもなんとなくわかっているので、彼らにも馳走を振舞う気遣いさは相変わらずのことだ。


「あ~……こぼれいくらの丼とかしたいですね。あれぜったい仕込んだら美味しそう」
「こぼれるのがうまいのか?」
「これでもか、と具材になるいくらをリーゾの上にたっぷりと乗せる意味です。白米もいいけど、酢飯も捨てがたいですね。いっそ、両方……」
「……臓物でそこまで」
「珍味は癖が強いけれど、美味しいんです!! 獣の臓物も仕込み次第じゃ食べられましたでっしょう?」
「まあ……たしかに」


 食べられる箇所は、毒さえなければなんでも。

 魔物でも上位種のものであれば、錬金術の材料などには匹敵するが……イツキの考えているそれとはなぜか違う気がしておかしく感じた。
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