王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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番外編②

第139話 魚卵の可能性

 今回はサケの卵で仕込んだのだが、イツキのいた異世界……特に、『二ホン』ではもっと魚の卵を食すことが多かったそうだ。


「いくらよりも身近なのが明太子だったんですよね~。タラコにしてもいいんですけど、辛みがマイルドなのがリーゾによくあって。麺にも最適なんです。パスタでもうどんでも」
「……そんなにも、好みなのか?」
「比率は国にもよりますけど。日本だと女性に好まれていましたね。なので、もれなく私も大好きです。リュシアーノ様も多分お好きだったとは思うんですが」
「……殿下が、魚の卵を?」
「今度、文通で聞いてみますねー」



 殿下が異世界からの転生者だというのは、ごく一部の関係者しか知られていない。だが、イツキが唯一の共感者であり、友人でもあるのなら……食べたいものを叶えるために努力したかったのだろうか。

 もちろん、イツキ自身も食べたかっただろうが……あの粒々たちが本当に美味しくなるのか、まだ想像がつきにくい。


「明日には食べられるのか?」
「そうですね。麹と味噌なので、ひと晩でしょっぱさは浸透すると思います」
リーゾに直接か?」
「アルベルトには、おかゆにしてあげたいので少し煮込みますが」
「……固くならないか?」
「出汁が染み渡って美味しいんですよ」


 粥は何回か食べたことはあるが、俺はイツキが最初に出してくれた『オジヤ』が好きだった。粥はもっとどろっとしていたが、比較的あっさりめが強い。それに濃い味付けのイメージがあるあの魚卵を混ぜる予想がなかなか難しいが……彼女がそういうのなら、ひと口は食べてみたい気がした。

 食べるのは昼餉と決まり、せっかくだからとレクサスも呼んでの昼食会となった。粥は既に鍋に仕込んである以外は……器の中に、これでもかと見えたあの卵たちが。


「宝石なん!?」
「きれいなもんだな……」


 ふたりが言う通り、ひと晩漬け込んだだけなのが黄金とはまた違う赤みの強い輝きを放って器の中にいるようだった。

 これが食べ物だと、普通なら思わないがイツキは『違いますよ』と断言していた。


「これが、いくらの人気が異世界では高い理由のひとつです」
「すげぇな……」
「どんな味付けなん? しょっぱいん?」
「醤油と麹。もうひとつは味噌です。基本、しょっぱいですね」


 まずは炊き立てのリーゾをスープ用の椀に盛り付け……その上から、スプーンでたっぷりとかけていくのが宝石の川のように見えて、なお美しく見えた。

 俺もだが、ゲイリッシュ殿たちも感心した声を上げたのも無理ない。


「う、うまそ~~」
「宝石の贅沢食いしてええん? って気分やわ!!」
「ふふ。こぼすのはもったいないので、適度に……召し上がってください」


 俺にも行き渡ったときに、イクラの部分をのぞき込んでみたが……鏡ほどではないが、反射で俺の顔が映り込んでいるようにも見えた。

 しかし、口に入れたい衝動がはやり、スプーンで気をつけながら運んだ瞬間。

 ぷち、っと口の中で濃いもののまろやかな味わいが広がっていくのを感じた。
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