王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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全員のまかない

第16話 隊長のまかない①

 イツキが……異界よりこちらの世界に渡ってきてから、約三年。

 僕とリュシアーノ様はすぐに婚姻を結べませんが、イツキとアーネストはいつ結んでもおかしくないと言う具合でしたのに、いつまでもそれが兆しもなかった。

 それが……レクサスとサフィア嬢の婚約から成婚になると聞いた後に、後押しされたのかイツキと結婚すると報告がありました。

 喜ばしいことですが……結婚のお祝いを何にしようか、非常に悩みました。

 イツキは異界から来た人間なので、所有物などはほとんどなかった女性でした。今は、管理室で寝泊まりしているので増えて当然ですが。

 それでも、宝飾などにあまり興味を持たず……下賜されたものをすぐに気づかない鈍さ……ハクト殿が気にいるほどでしたからね?

 なので、同じ悩みを持っていたレクサスとワルシュ料理長へ聞きに行けば……料理長も悩んでいらっしゃり、結果……陛下方の提案に僕らも乗っかったわけです。

 リュシアーノ様とご一緒にケーキ作りをするのはとても楽しかったのですが……予想以上の労力に、イツキはひとりでこれより小さくとも『ウェディングケーキ』を作ったとは信じられませんでした。

 そこはやはり……異界の人間と言うのもありますが、『特級料理人』と言うスキルもあるお陰でしょうね?


「凄いわ。…………私達の時も、イツキが作ってくれるのかしら?」


 ひと休みしていると、リュシアーノ様が僕の隣にやって来られました。

 僕と婚約した時期から、少しずつ成長なされ……あと十年後が楽しみになる美しさと可憐さを備えていらっしゃる。

 その横顔に……髪に口づけを贈りたいと思いましたが、皆の居る前だと彼女が盛大に嫌がるので我慢しました。


「そうかもしれないですね? その頃には、二人にも子供がいるかもしれないですが」

「イツキの赤ちゃん……絶対可愛いと思うわ」

「ですね」


 最初は料理長の提案で軽い男装をさせていましたが……女性からも注目されていた彼女のことです。生まれてくる子供は、イツキもですがアーネストの良いところを受け継いでいる可能性が高いでしょう。

 料理の腕前だけは、流石にわかりませんが……。


「……お父様が作らせたお屋敷。イツキとアーネストだけで生活させるのかしら?」

「……そうですね。そこは僕も把握していませんが」


 仮にも、アーネストは公爵家の人間。

 それでも、城の独身寮でこれまで生活していたので身の回りのことは自分で出来るようになっています。イツキに関しては、元からその通りなので……ですが、陛下が御用意された屋敷は、一度見に行きましたがそこそこの大きさです。アーネストは城で近衛騎士として務めますし、イツキだけで管理出来るでしょうか?

 何名かは、使用人を雇って管理させるとは思いますが。


「あーあ。学園のことがなければ、しょっちゅう遊びに行きたいのに」

「……我慢ですよ?」

「わかっているわ」


 イツキもしばらくは、城の厨房にこれまで通り来てくれるとは言え……これからは、それぞれの生活があります。

 同じようにはいかない……ですが、新しい道の幕開けとなるでしょう。


「僕らには、僕らのこれからもあります。城以外の場所でも……お強くなってください」

「ふふ、当然よ!」


 この方と……婚約出来るとは思わないでいた。

 そのきっかけとなった……イツキには感謝してもしきれません。

 アーネストと、是非幸せになっていただきたい。

 僕とリュシアーノ様の婚姻はだいぶ先でも……育んだ幸せを、大切に、さらにその手で育てて欲しいものです。

 ケーキの方は、出来上がったら料理長の亜空間収納に入れておくことになり、僕らは余った材料で簡単なケーキを試食することが出来ましたが……やはり、料理長の指示があったお陰でとても美味しかったです。
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