王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

文字の大きさ
462 / 868
番外編

第16話 我慢の限界

 頑張れ。

 超頑張れ、自分!!

 せっかく作ったクッキーを、粉々にさすような真似したらあかん!!


(けんど、めちゃんこ可愛い!!)


 自分のカミさんは……なんでこう可愛いんや!!

『氷の美女』って誰が言い出したんや?

 たしかに、表情の出方は乏しいとこはあるけど、ちゃんと喜ぶとこはわかりやすい。

 今もちびちび食べながら、頬紅つけとるし……可愛い!!

 さっきから、可愛い連呼しとんな。自分。

 は、さておき!


「こちらの模様……美しいですね!」


 サフィアは俺が作ったクッキーで、茶と白のを見ていた。ピンクは四つだが、そっちは細かくして……なんと十二個。

 うまくいってよかったが、サフィアはもったいないと思ったの。しばらく眺めておったわ。


「そっちはココア味や」

「……いただきます」


 自分が味のことを言うと、サフィアはやっと可愛い口を開けてひと口かじった。

 んでもって、すぐに嬉しそうに目元をゆるませて。

 乏しいはずの表情がほころんでいくんや。恋人以上に旦那の前やから、見れるんやけど!

 嬉し過ぎて、また抱きつくのを堪えたわ!!


「……どや?」


 答えはわかっとっても、一応聞くことで衝動をさらに堪えた。

 サフィアはこっちを向くと、クッキーを飲み込んでから……小さく頷いてくれた。


「甘さが控えめで美味しいです! 旦那様はやはり器用でいらっしゃいますね」

「……喜んでもらえて何よりや」


 ああ、ああ。

 やっぱ、我慢出来へんわ!!

 笑顔キラッキラの嫁さんの顔を見たら、理性なんて意味ない!!

 思わず頬に手を添えて、ぐっと顔を近づけてから唇を重ねた。

 しっとり柔らかく……今さっきクッキーを食べたから、甘い味わいがたまらん!!

 舌は……さすがに我慢したけど、少しの間喰むように味わい。

 そろそろいいか……と離れたら、あかんかった!!

 久しぶりのキスやから、めっちゃ息切れた上に赤くなった顔が可愛い!!?

 けど……これ以上はまずい、と抱きしめるので我慢した。


「……だん、なさま」


 抱きしめたら……ちょぉ、声が怒っとる?

 いきなりキスしたから? と思って顔を覗いたら……サフィアがちょっと頬ふくらませてた。


「ど、どした?」

「……口付けは嫌ではないのですが。クッキーがつぶれてしまいます」

「あ」


 自分もすっかり忘れとった!?

 さっきはちゃんと頭入れてたのに!!

 慌てて箱を見たが、ちょこっと割れているだけで済んでて破壊は免れてたわ。

 安心してから、もっかい謝り……二人で仲良く食べることにした。

 サフィアから、学園での殿下のこととかを聞かせてもらったが……殿下は学園でうまくお過ごしのようや。

 イツキはん以外の友人が出来なさそうな感じやったけど。

 誰か別の存在もおることはええことや。

 将来は、隊長と結婚するにしても。

 まだまだ先は長いからなあ?

 俺かて、サフィアと一緒に住めるのもお預けやしな!!?
感想 323

あなたにおすすめの小説

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

拾ってないのに、最上位が毎日“帰る”んですがーー飼い主じゃありません!ただの受付係です!

星乃和花
恋愛
王都ギルド受付係リナは、今日も平和に働く予定だった。 ……のに。 「お腹すいた」 そう言って現れたのは、最上位の英雄レオン。 強いのに生活力ゼロ、距離感ゼロ、甘え方だけは一流。 手当てすれば「危ない」と囲い込み、 看病すれば抱きしめて離さず、 ついには―― 「君が、俺の帰る場所」 拾ってない。飼ってない。 ただ世話を焼いただけなのに、英雄が毎日“帰ってくる”ようになりました。 無自覚世話焼き受付嬢 × 甘えた天然英雄の 距離感バグ甘々ラブコメ、開幕! ⭐︎火木土21:20更新ー本編8話+後日談9話⭐︎

極うま魔獣肉に魅了されたおっさん冒険者は辺境の町で訳あり美少女エルフと癒し食堂を始めたようです

夢幻の翼
ファンタジー
長き期間を冒険者として過ごした俺――グラードは四十五歳を迎えるにあたって冒険者を引退、かつてから興味のあった料理人へと転職を決意した。調理は独学だが味に自信のあった俺は店舗経営の知識修得の為に王都の人気料理店で修行を始めるも横柄なオーナーのせいで店はおろか王都からも追放されてしまった。しかし、魔物の素材に可能性を見いだしていた俺は魔物が多く住むと言われる北の魔樹海側の町を拠点とし、食堂経営に乗り出すことに。 旅の途中で出会った変わり者の魔白猫や呪いのために一族から追放されたエルフの少女と共に魔物素材を使った料理で人々を幸せに癒す。冒険者を引退した料理好きのおっさんが繰り広げるほのぼのスローライフ開幕です。

【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。