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第十章 冬来たりて
321.隠し事(セヴィル視点)
しおりを挟む☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セヴィル視点)
冬が訪れる前から……カティアは、俺達に少し隠し事をするようになった。
エディオスが時折執務をサボりたがると言うようなことではない。
ある時から、以前よりも増して……フィルザス神の持つ神気を感じるのだ。
問いかけようかとしたが、彼女が俺やエディオス達に隠し事をするのはよっぽどのことだ。フィルザス神は知っているようだが、俺達に告げることもない。
なら、カティアが答えてくれるのを待つのみ。
それを信じるしかない。
(…………それにしても、アナが久しぶり風邪か)
俺も久しく罹ってはいないが、エディオスも特に症状が見られない。
疲れ……などが一因となり、罹りやすくなることもあるが、アナに急ぎの仕事もない。サイノスと御名手となり、婚約したことで方々に挨拶することも……今は終わっているから、気疲れか??
少し前に、カティアが提案した遊びの時は張り切っていたが。
(……考えても仕方がない)
今は、カティアがアナに風邪の時に飲みやすい飲み物を作って、持って行っているはずだ。ウルス米の酒が必要だったそうだが、火を使うので酒精の部分はなくなるらしい。
カティアが来て、エディオスもだが俺も久しく酒を口にしていない。晩酌よりも、彼女が作る馳走のお陰で満足してきたせいだ。
「……呑みてぇ」
休息を挟んだところで、エディオスがそんなことを言い出したが。
「…………酒か」
「カティアがああ言っただろ? なんか、久しぶりに飲みたくなってきた……」
「……晩酌まで我慢しろ」
「そうだけどよ!?」
今は成人の身体ではないカティアを参加させたら、万が一のことがあるのでいけない。
苦手なものは、あのヴィラカダだったが……あれについてはほぼほぼ克服したようだ。なら、それ以外にあるのだろうかと考えても……思い当たらない。
だが、80歳程度の身体で呑みはさせられないのだ。
「そーんな、エディに良いもの持って来たよ??」
「フィー!?」
「……フィルザス神」
いつ来たのか、フィルザス神もだがカティアがクラウを抱えながらやって……と言うか、戻って来たのか??
アナへの飲み物の差し入れについて提案してきてから、まだ一刻程度しか経っていないはず。
「アナについてはもう大丈夫。しっかり寝てるから、エディ達にも持ってきたよ? アナにも作った飲み物」
フィルザス神だけが使える亜空間収納の魔術から取り出したのは……カナリア色のようなふわふわした黄色い飲み物。
器を受け取ると、あまり酒の匂いはしなかった。
「うんめ!?」
既に飲んでいたエディオスが声を上げた。熱いのか、勢いよく飲みはしなかったがとても美味いのか何度も同じ言葉を繰り返していた。
なので、俺も少し口にしてみた。
「…………甘い」
だが、嫌な甘さではない。
蜂蜜の甘さがほんのりしていて……ふわふわした部分も踏まえると、優しい味わいだった。熱いため、勢いよくは飲めないが……これは女が好きな味だろう。
しかし、甘いのが得意でない俺でも飲めると言うことは、これは凄いことではないだろうか??
「大丈夫ですか? セヴィルさん??」
近寄って来たカティアは心配そうな表情をしていたが、俺は空いている手で彼女の頭を撫でてやった。
「……ああ。平気だ」
その気遣いに、いくらか頬が緩んだ気がしたが。
後ろに控えていた近侍らが、いきなり何かを大きな音を出したのでこちらが振り返れば、壁際に思いっきり張り付いていた。
「「「か、閣下が!!?」」」
「「「わ、笑った!!?」」」
……どうやら、常日頃『冷徹宰相』などと呼ばれている俺が。カティアに向かって笑みを見せた事に非常に驚いていた。
それについて、エディオスとフィルザス神がケラケラ笑ったので、制裁は下したがな?
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