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第十二章 異界の年明け
355.年明けのパンツェロッティ
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年が明けました。
「「……つっっっかれたぁあ!!」」
黑の世界で、過ごすようになってからまだ一年も経っていませんが……僕は、お城で無事に年越し出来ました。
式典とかには、王族のご親戚って偽の身分があっても年齢がまだまだ幼い体だということで免除されました。
と言う理由は後付けだけど……イシャールさんやセリカさんのような魔眼持ちの方がいるかもなので……元の僕の姿がダブって見えて、大混乱を起こさないためもあったから。
イシャールさん達にそう見えた日から、半月以上は経ったけど……未だに封印が解けるどころか、僕に異変も何もない。
日常生活で困っていることは……特にないけど。早く元に戻りたい欲望は膨らんでいく。
だって、セヴィルさんの隣に堂々と立っていたいんだもん!!
「お疲れ様です」
とは言え、むやみに解除しようとすると僕の体に……また何かしらの異変があるかもしれないと言うことで、我慢は我慢だ。
今はお昼休憩……と言うかおやつの時間だけども。
式典に参加出来なかった僕は、一緒にいたフィーさんとパンツェロッティを作りました。熱々サクサクがきっと胃袋を癒やしてくれるはず。
「年一のことだからって……マジで疲れたぁ」
「……おまけに俺のもだが、イシャール達の御名手発表もだろ?? 次はお前さんだからって、じいさん達がうるさかったからなあ」
「……うぜー」
サイノスさんとアナさんもだけど……イシャールさんにシャルロッタさんの御名手もとい、ご婚約決定のニュースは凄いからねぇ。
ちゃーんと、フィーさんが関わっているから誰も文句が言えないらしいです。普段は腹ペコ美少年なのに、神様らしいお仕事はきちんとされているようだ。
(とは言っても、エディオスさんとセリカさんのはなあ……)
今ここにセリカさんはいないけど、だからって御名手の事実をエディオスさんの前で暴露するわけにはいけない。セヴィルさんは知っているから、ちょっと目線を合わせれば苦笑いされた。
セヴィルさんの表情の変化も、だいぶ表に出るようになってきたよ? きっかけが僕なら……結構嬉しい。
「お? これ、なんか酒に合いそうな味だな?」
サイノスさんがパンツェロッティのひとつを口にされると、僕は嬉しかったので答えることにしました。
「お魚の油漬けを使ったんです。そのままじゃなくて、ペーストにしてオーロラソースと混ぜて。あと、イーヴの塩漬けをスライスして混ぜ込みました。カッツもたっぷりです」
「「うんめぇ!!」」
「匂いは少し独特ですけれど……たしかに、お酒が欲しくなるお味ですわ!」
「……オイルを足すと、さらに美味い」
「ゼルお兄様……相変わらず、足し過ぎですわ」
「……そうか?」
はい、本日もセヴィルさんは青いタバスコをかなりかけていらっしゃいます。
「ふゅぅ、ふゅゆぅ!」
「美味しい? クラウ?」
「ふゅゆ!」
僕も食べたけど、たしかに白ワインとかが食べたくなる味だった。アンチョビマヨネーズって、飲兵衛の鉄板的な組み合わせだからねぇ?
普通のパンツェロッティも作ったし、サワークリームももちろん。
年明けでお節もなにもないけど……こう言うお正月もいいかもしれない。地球で、お母さんやお兄ちゃん達がどうしてるか気にはなったが、多分……元の世界には戻れない。
でも、戻る選択肢があっても選ばないだろう。
大好きなセヴィルさんがいるからだ。
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