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第十二章 異界の年明け
371.泣かせてしまうが(ジェイル視点)
しおりを挟む☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(ジェイル視点)
言え。
言え。
言え、言え、言うんだ!!
サイノスもだが…………カティア嬢が俺の背中を押して下さったんだ!!
幸いにも、中庭には誰もいない。
真冬の雪がだいぶ落ち着いても、近づく者達がいないからだろう。カティア嬢らは、この辺りで遊んだりしたとサイノスから聞いたりはしたが。
とにかく……言う決意をして、シェイリティーヌを探し出し……ここに連れてきてから、振り返ったが。
彼女の表情は、不安でいっぱいに見えた。
(…………また、俺が叱ると思わせてしまったか)
と言うか、それ以外に……彼女と会話したことが、ほとんどないような。であれば、会話どころか一方的な叱り付けでしかない。
だから……誤解がないようにしたい、と……俺は初めて、シェイリティーヌの前で腰を折った。
「え!? ふ、副将軍!?」
驚くのも無理はない。
いつも叱るばかりの俺が……彼女に向かって腰を折るだなんてなかった。だからこそ……俺の誠意を見せたかった。
「…………毎回、強く叱ってすまなかった」
「……副将軍?」
この謝罪だけでは、やはり俺の心情までは読み取れぬだろう。
「……だが。無闇やたら叱っていたわけではない。それに……」
「……………………それに?」
言え。
言え。
言うんだ!!
たとえ……御名手かどうかわからずとも、背を押してくれたカティア嬢のためにも。
俺は身体を起こしてから……真っ直ぐにシェイリティーヌを見詰めた。いきなりのことだったからか、彼女はまた怯えたように肩をこわばらせてしまう。
「……………………ひとりの、女性として。気にしていたんだ」
言った。
直接的な言葉ではないが……彼女は阿呆ではない。それで理解してくれ!! と願っていると…………シェイリティーヌの方が『は?』と声を漏らした。
「…………夢やないん?」
何故か、自分の頬をつねっていた。それだけ、俺の口から愛の言葉を紡がれるとは思わなかったのだろうな……。
「本当だ。嘘じゃない……」
「ふ、副将軍……う、うち」
「ああ。……今のでわかった」
女性の扱いに疎い俺でも、その行動の意味を理解出来ないほど愚かではない。
涙を浮かべかけていた、シェイリティーヌの手を掴み……自分の腕の中へ引き寄せた。カティア嬢が言っていたが、泣いていたのと俺に嫌われそうだと思っていた理由がよくわかった。
「うわぁあああん!!」
結局泣かせてしまったが……泣いてくれてよかった。
それだけ……俺を気にしてくれていたのがよくわかったからだ。俺はキツく抱きしめてやりながら、泣き止むまで背中を軽く叩いてやった。
そのあとに、口づけをしようとしたのだが……。
フィルザス神様からの……御名手の儀式を、シェイリティーヌを媒介に告げられ。
俺は喜んで受け入れた。
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