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第十四章 異界の春へ

417.中層厨房へ突撃

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 ◆◇◆












「……ゼル向けのピッツァを作りたい?」


 突撃しましたのは、中層厨房で……目的の人物は料理長のイシャールさんだ。


「はい! 日頃のお礼なども兼ねて……ですが」
「…………お前の場合、それ以上もだろ?」
「……それはご内密に」


 イシャールさんはともかく、お城のほとんどの人達には……僕がセヴィルさんの御名手みなてだという事実は知らないので、ここは黙ってもらうしかない。


「クレスタイト閣下に? さすがカティアちゃん、気遣い上手ね?」


 去年イシャールさんと御名手になられた、シャルロッタさんは本日も可愛らしい。と言うか、イシャールさんと婚約されたことで可愛らしさが増したかも。恋する乙女が可愛くなるって言うもんね?


「けど……ゼル向けっつったら、アレだろ?」
「はい。アクアスを使った……ピッツァを作りたくて」
「あ、アクアスを??」
「あれで、ピッツァの味変……ちょっとした変化をつけたい時とかに使うオイルを、セヴィルさんは愛用しています」
「うぇ……」
「本当……?」



 まあ、普通ならこう言う反応だろうね?

 僕もひと舐め出来ないあのオイルを……セヴィルさんは普通のタバスコ以上にかけて食べちゃうんだもん。そのセヴィルさんを満足出来るようなピッツァとなれば……そのアクアスを使うしかない。


「なので……奥の厨房使わせてください」
「お前なら、上層のを使わせてくれんだろ?」
「……マリウスさん達に止められるかと思って」
「……止められるだろうな」


 ピッカンテオイルの時は、ファルミアさんがいらっしゃったから……一応作れたというわけで。

 イシャールさんも……少しは渋いお顔になられたが、すぐに『よし』と声を上げてくださった。


「保護者がわりに、俺も手伝う。それなら、まだいいだろ? シャル、こっちは任せた」
「はい」
「ありがとうございます!」


 これで、セヴィルさんへのピッツァが出来るぞ!!

 意気込んでいると、上に乗っていたクラウもはしゃいでくれた。


「んで? アクアスを使ったピッツァってどんなだ?」
「そうですねぇ……」


 貯蔵庫から、イシャールさんがアクアスの箱を持ってきてくださったので……久しぶりに見るそれを改めて観察。

 本当に……綺麗なスカイブルーの唐辛子にしか見えないや。


「ひと口で、大抵の奴は拷問以上の苦しみを味わうんだぜ?」
「けど、セヴィルさんは普通ですけど」
「昔俺とかがけしかけたとは言え……あそこまでの激辛好きになるとはなあ」


 その話を聞いて、僕はある調理法を思いついた!
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