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第十六章 異界のバカンスのために

472.会いたいために(ディシャス視点)

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 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(ディシャス視点)









 解せん。

 ……非常に、解せない!!


(……何故だ!? 何故、カティアに会えん!?)


 最後に会ったのは……秋季の時。

 それも、ほとんど話せずに主人を乗せてから……神域に移動した程度。

 以降、季節をかなり跨ぎ。

 夏期となった今も。

 カティアとは……全く会えないでいるのだ!?

 何故だ何故だ!!


『……長、若い衆が怯えます』


 竜種の一角にそう言われるまで……自覚がなかったが、どうやら苛立ちが顔にまで出ているようだった。

 落ち着くのに息を吐いたが、あまり意味がないだろうな。

 周りから、『ヒィっ!?』と念話が届いたからな?


『……しかし、カティアとは会えん』


 一度、ここを抜け出し……あの子に会いに行って神獣殿の卵の元へ連れ出したが。

 あれ以降……主人が、弁えろと言うのだから、カティアと会わせてくれぬ。

 そろそろ良いだろうと思うのに……今は主人の誕生式典ゆえに、その暇がないのだろう。

 だからとは言え……待たせ過ぎだ!?


『カティア? とは?』


 我に声を掛けてきた竜種の者の前で……念話が届いてしまったのだろう。

 首を傾げられたが……聴こえてしまったのなら、正直に言うことにした。


『……我が気に入っている、ヒトの子だ』
『長自ら?』
『うむ。セヴィルの御名手みなてだが……良い子だ』
『せ、セヴィル!?』


 ああ、此奴もあの者が苦手であったな?

 あれの守護獣である……フェルディス以外、好意の目を向けん。

 輝かんばかりの美貌はあるのだが……父親に似ず、笑顔がほぼ無い。

 風の噂では……カティアにだけ見せているようだが。

 くっ、羨ましい!!


『……セヴィルが独占しているようだが、あの子に会いたいのだ』


 はじめだけは怯えられたが……我が親愛の情を見せると、嬉しそうに懐いてくれた。

 あの顔が。

 とても愛らしいと思ったのだ。

 もう一度会えた時も、我を守護獣らの長としてでなく……ひとつの『存在』として扱ってくれた。

 あのような事……主人ですら、我が幼い頃しかなかった!!


『……であれば、長よ』


 話を聞いていたのか……竜種ではなく、一角の者がこちらにきた。

 しなやかな体躯の持ち主だが、瞬時に光を纏い……人型となったのだ。


『一角の?』
『人型で会いに行かれては? その方が怪しまれませぬ』
『……変幻フォゼか』


 その方法は、考えておらなかった。

 であれば……練習とやらをせねば。

 我は此奴と違い、そこまで魔術を駆使した機会が少ない。


『お手伝い、致します』
『うむ』


 そのために……飼育の人間に隠れ、こっそりと試みたのだが。


『あ、あら……?』
『何故だ……?』


 何度試してみても。

 主人らのような生育した人型にはならず。

 幼いヒトの子にしかならなかった!?


(……だが、待てよ?)


 これなら、下手に警戒されずにカティアに会いに行けるかもしれん。

 そう思いつくと、服とやらもきちんと着てから……我は、匂いを頼りに厩舎を出たのだった!!
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