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第二章 交わる会合
043.連れられた場所
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目を開けた時には気絶しているのかと錯覚しかけた。
それくらい真っ暗闇の中に僕はいたからだ。
夢かな?と手探りで頬っぺたをつまめば、前に神域に一人でいた時と同じように痛みはない。
つまり、この暗闇は現実だ。
「ディシャス?」
「ぎゅぅるぅ!」
僕が声をかければディシャスはすぐに返事をしてくれた。
同時に体がまだ彼に抱えられたままなのにも気づけて、少し一安心出来た。
「ここはどこ?」
「ぎゅるぅ」
「……聞いても君の言葉は分からなかったね」
なら自分でどうにかするしかない。
「手に熱と光を集めて……」
まだ数回しかやったことのない魔法だが、習えば効力を問わずひと通りは出来ている。
チートかはわからなくても、魔力の保有量関係なく出来るのはありがたい。
イメージを強め、出来るだけ大きな球体を生み出す。
目を開けた時にはバレーボールくらいの光の球が出来上がっていた。
「浮かべ、明灯」
技の名前と共にその球を手から上に放り、離れたそれはゆっくりと上へ上へ浮かびながら周囲を照らしていく。
部屋などの灯りは半永続的に魔法を練った特殊なものらしいが、一時的なのならこの方法で事足りるとフィーさんに教わったのだ。
球が上に行くにつれすぐにディシャスの輪郭も浮かび上がり、彼の少し上で止まるとカッと更に光り出して、周囲の情景を僕に教えてくれた。
「……洞窟?」
届かない天井。
その天井から伸び出ている土色の氷柱。あれはテレビなんかでしか見たことがないけど、多分鍾乳石だろう。
それにしても広過ぎるし、高過ぎる。
ディシャスのような巨体が窮屈することもなく余裕で入ることが出来るなんて、普通の洞窟じゃないだろう。
この洞窟で彼は何をしたいのだろうか?
僕を連れてきて何を?
「ぎゅぅ、ぎゅぅるぅ!」
急に声を上げたかと思えば、彼は僕を軽く握り込んで前に進み出した。
声のように激しい足音は一切なく、とんとんと子供が歩くように軽やかなものだった。
光の球を急いでついて行くように付与術をかければ、彼の歩調に合わせて先を照らした。
「ぎゅるるるぅ!」
どうやらご機嫌さんなようだ。
「この奥に何かあるの?」
「ぎゅぅぎゅう!」
目的はちゃんとあるみたい。
帰してはくれるだろうし、気の済むまで付き合うしかないかも。今日はお休みの日だったから誰にも迷惑は……。
(かけてない、よね……?)
あの雄叫びが城一体に響き渡らないわけがない。
エディオスさん達の耳にも届いてたとしたら、城中がてんやわんやのはず。
その可能性を思いつくと、僕はディシャスに向けて顔を上げた。
「ディシャス!」
「ぎゅ?」
「戻れるなら戻ろう! エディオスさん達が僕らを探してるかもしれないよ!」
「ぎゅ、ぎぎゅ⁉︎」
ディシャスも馬鹿じゃないから、僕の言葉を聞くと一時停止してくれた。
部屋でもエディオスさんにバレた時を予測したように顔色が悪くなっていく。しかし、それを振り払うように大きく首を振ってからまた進み出した。
「え、なんで進むの⁉︎ 帰ろうよ!」
「ぎぃぎゅう、ぎゅう!」
説得してみても帰らない。
何度呼びかけても、ディシャスは早歩きで洞窟の中を突き進んでいく。
そんなに僕に見せたいものがあるのだろうか。
(けど、そんな急いじゃ……)
絶対危ない気がする。
焦るとつまずいて転んじゃったりとか。
そうなると僕がディシャス自身の重みで圧死する可能性がある!
ゴンッ!
案の定、異常に伸びていた鍾乳石の一つにごちんこと頭をぶつけてしまった。
「ぎゅ、ぎゅぅうぅ⁉︎」
「ディシャス、大丈夫?」
「ぎゅぅ……ぎゅぎゅ!」
しゃっきり顔を上げて、大丈夫だとディシャスは頷いた。魔法の明かりに照らされてる箇所を見上げた感じ、たんこぶにはなってないようだ。
「もうこれは、行くしかないか」
エディオスさんやセヴィルさん達に盛大に叱られるのを覚悟して、ディシャスの目的を達成するしかない。
ディシャスの顔には届かないから、巻きついてる彼の手をヨシヨシと撫でてやった。
「わかったから、焦らず行こう?」
「ぎゅぎゅぅ!」
僕が了承すれば、ディシャスは大きく何度も頷いてからゆっくりと歩き出した。
(ここって、お城から遠いのかな……?)
ディシャスが雄叫びで発動させたのは、多分転移って魔法だ。憧れる要素満載だけど、僕にはまだ到底手の届かない魔法。
この世界じゃ、短距離は詠唱で長距離だと札か何かしらの魔法アイテムが必須らしい。ディシャスがそうじゃないのは聖獣だからだろうね。元々がチートな存在だもの。
ともあれ、転移だけと言う手段しかわからず、どこの洞窟に来たかはわからない。
「ディシャス、目的のとこまで遠い?」
「ぎゅぅぎぎゅ」
出来るだけ早く帰りたいので聞いてみると、ディシャスは首を横に振ってくれた。
「じゃあ、もうすぐ?」
「ぎゅぅぎゅぅ!」
歩きながら勢いよくディシャスは頷き、空いてる手?足?で前方を指した。
それを辿って前を向けば、僕が創った光の球とは別に白い光源があるのが微かに見えた。
目を凝らしてもこの距離じゃまだ何があるかはわからない。出口、だったらいいけど。
(いやそれならこの洞窟に来る意味がわかんないし)
僕に見せたいものかもしれない。
それから特に会話?せずにディシャスの手の中で揺られていれば、次第に光が粒からビー玉、ボールへと大きさが変わっていき、その中にあるモノも見えてきた。
「……卵、だよね?」
ぶっとい鐘乳石が地面から僕の今の身長くらいまで盛り上がり、1つの台座になっているような場所。そこに、光の正体が佇んでいたのだ。
手のひらサイズの物なんかじゃない。
昔テレビかなんかで見たダチョウなんかのでっかい卵が、光りながらも鐘乳石の台座の上に鎮座していたのです。
「ぎゅっぎゅぅるぅ!」
これこれっと、ディシャスは嬉しそうに声を上げた。
(と言うことは、目的はこの卵?)
これと僕を連れてきた関連性がわからないけど。
「ディシャス、僕にこの卵を見せたかったの?」
「ぎゅっ」
じゃあ、任務完了ってとこかな。
と思ってたら、いきなりディシャスが僕を地面に降ろし出した。
とんって地面に足がつけば、ディシャスはゆっくりと僕を解放してくれたよ。
そうして、前にある卵の方に向かって指を向けた。
「あれに触るの?」
「ぎゅぅぎゅぅ!」
「だ、大丈夫だよね?」
「ぎゅ!」
とは言え、ディシャスの期待には応えないとなぁと僕は卵がある台座に向かった。
鐘乳石は台座の周り以外はそんなに生えておらず、すんなりと歩くことが出来た。
近づけば近づくほどその卵が圧倒的な存在感があることがいやでもわかってくる。よくよく見れば、その卵は白いだけじゃなくて表面が真珠かオパール石のように薄っすら虹色の光沢があった。
「ほへー」
台座の前に立つと、卵はやっぱり大きくて綺麗だった。
ちょうど僕の顔の目の前辺りにあったそれは、一種の芸術品のように見えた。
理想的なフォルムに艶々の表面に薄っすらと虹色の光沢。
この洞窟の中で一際異質な卵は、わずかな光苔らの光源を反射して光ってるのか仕組みはわかんないけども眩しく僕の顔を照らしていたよ。
艶々の表面には薄っすら僕の顔を鏡のように写していたし。
「……やっぱり、触って大丈夫かなぁ?」
こんな神々しいものに僕なんかが触れていいものか。
でも、ディシャスを待たせるわけにもいかないし、早く済ませないとお城に帰してもらえそうにないしさ。
だから、女は度胸!と勝手に意気込んでそのつるっとした卵を両手でぺたりと包み込んだ。
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