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第二章 交わる会合
046.小さき者の正体は
しおりを挟む「しかし、ディシャスが余裕で歩けれる程の大洞窟と言えば……」
「あそこしかありませんわね」
セヴィルさんとアナさんの眉間が急に険しくなりました。エディオスさんもだけど。
「多分、間違いねぇな。カティアが連れてかれたのは」
「この城地下の『聖洞窟』だよね」
「って、フィー!」
エディオスさんの言葉に被せて少年特有の甲高い声が扉から聞こえてきた。
扉を見れば、開けっ放しの扉脇に黒髪の美少年がもたれかかっていた。この黑の世界の管理者のフィルザス様ことフィーさん。
なんだかお疲れ気味だけど、彼まで僕らを探すのにあちこち回っていただいたのなら大変申し訳ない。
「遅かったな?」
「あのねぇ、僕探してたのその近くだったんだよ? あの遠吠え聞こえても、場所から言って転移を使ったって遅れるよ」
「え?」
けど、僕とディシャス以外誰もいなかったよね?
僕が首を捻ってるのに気づいたフィーさんは小さく苦笑いした。
「不思議に思ってるだろうけど。カティア、ディシャスが途中頭に何かぶつけなかったの覚えてる?」
そう言いながらフィーさんは扉を閉めてこちらにやって来る。
僕はその間に洞窟であったことを振り返ってみたけど……あ、たしかにあった。
「おっきな鐘乳石に頭をごっちんこさせちゃいましたね?」
「不自然だと思わなかった? あの巨体がぶつけれる長さのがたまたま一本だけでもあるなんて」
「うーん……僕揺さぶられてたんでよく見てなかったんですが。あの鐘乳石って何か?」
「僕が地上から探査してる最中に足止めのためにいくつか態と伸ばしたんだ。まあ、あんまり効果なかったし、君達そのまま奥行っちゃったからね」
あれは自然の長さじゃなかったんだ。
けれど、僕がディシャスに連れてかれたのはこのお城の地下にある洞窟らしいのはわかった。
具体的にどこかは今は別に聞かなくていい。それはお城探検の時の楽しみにとっておこう。
「しっかし、まさか大昔からあそこに置いてた神獣の卵の存在をあれが知ってたなんてねー? おまけに今になって孵化するなんてどーゆーことって言いたくなるよ」
「「「神獣⁉︎」」」
「ふゅ?」
「へ?」
もしかしなくとも神の獣と書くあれですか?
僕がいた蒼の世界でもお伽話や民話なんかで伝承されてるが、空想の存在だと言われてる……この獣ちゃんが?
僕らが驚いてると、フィーさんは力強く頷いた。
「そ、僕ら神の眷属たる獣達。この世界でもごく僅かにしか存在してないあの獣の一種だよ」
「そりゃわかってるっつの‼︎ じゃねぇよ! フィー、あそこにいつ置いたんだよそんな貴重なもん⁉︎」
エディオスさんが焦るのも無理ない。
あんな暗い場所になんでそんなけったいな代物置いちゃうわけですか?
エディオスさんに聞かれたフィーさんは思い出すためにか顎に手を添えた。
「ああ。えーっと……ディオが生まれる前くらいかな? じい様にもらったのはいいけど神域だとその頃は神脈……カティアにわかりやすく言うと大地に流れる魔力の溜まり場ってとこかな。それがまだまだ足りなくてね。なもんで、このお城が出来る前から神脈が豊富だったあの洞窟奥で卵に神力を注いでたんだよ」
「そ、そんなにも昔に⁉︎」
「親父が生まれる前って、千年じゃねぇよなぁ?」
「ふゅ?」
なんかスケールでかい話になってきた……。
獣ちゃん本人は全然わからないから相変わらず安定の可愛さよろしく鳴いていたけども。
「僕にも扱いがわからないものだったからね。たまーに様子は見に行ってたけどぜーんぜん変化なかったしさ。ついこの頃は見に行くの忘れがちでいたけど」
「最後に見に行ったのは……?」
「あ、えーっと……最低でも100年前かな?」
「「「おい⁉︎」」」
「そんなにも放って置かれましたの⁉︎」
「あはは……」
フィーさんはごめんごめんと頬を掻いた。
「だって、一向に変化無さ過ぎたし。もちろん孵化したら何かしら僕に知れるように術は施してあったよ?」
と言ってから僕と獣ちゃんの側にまで寄ってきた。
「けど、神獣って聞いてた割には幼いなぁ。あんなに神力吸い取ってても、生まれてこの大きさってのが変だね」
「これで小さいんですか?」
ダチョウもしくはペンギンサイズの卵だって言うのも結構な大きさだと思うんだけどな。
「うん。僕の本邸を警護してくれてる子とかは、生まれてからすぐに外気に含まれてる神力を吸い取って急激に成長するのばかりだったからね」
「……どれくらいです?」
「今のディシャスよりはふた回り程小ちゃいよ」
でもそれなりにおっきいんですね。
獣ちゃんのサイズは一メートルにも満たないぬいぐるみくらい。そしてとっても軽過ぎる。中身が綿かと思うくらいにね。
「ふゅ?」
「……気の抜ける鳴き声だなぁ。まあ、見た目がこれだから変じゃないけど」
フィーさんは獣ちゃんの頭を撫でてやりながらはぁーっと息を吐いた。
「ところでカティア。肩にかけてるその袋はなーに?」
「あ、これですか?」
忘れてた、ちゃんとした物的証拠。
獣ちゃんを片手で抱っこしてから僕は袋を肩から外してフィーさんに渡した。
フィーさんは受け取ると早速中身を見るべく開けてくれた。
「……やっぱりあそこに置いてた卵のようだね。でも、君が行った時になんで孵化したのかなぁ?」
「僕もわかんないです。ディシャスに触ってみてみたいに言われてから少ししてヒビが入ったので」
「カティアが触っただけで?」
「はい」
それからすぐに生まれた事とここまで連れてきた経緯も全部話した。
終わるとフィーさんは眉間にシワを寄せた難しい顔になりました。
「変だね。今の君の魔力だけじゃこの世界の幼子以下なのに、神力を供給源としてる神獣がほんの少しの触れ合いで孵化する?」
「僕の魔力ってそんなにも少ないんですか?」
「封じられてるせいか泉の力のせいかはまだまだ検討中だけどね。とりあえず……この神獣はどうやらカティアを主人に選んじゃってるみたいだなぁ」
「「「は?」」」
「僕が、主人?」
なんですと?
「ふゅ、ふゅー!」
獣ちゃんはそうそうって言う感じに鳴きながら背中の翼をピコピコ動かしていた。
(ああ可愛い……じゃないって!)
なんか凄いことになりそうなんだけども!
「多分生まれたばかりの刷り込みのせいもあるかもだけど、ここまで君に懐いてるし離れようとしないだろう?」
「あ、はぁ……」
人間とは違って、動物が生まれた時に一番最初に見た対象がってあれですか?
それで僕がこの子の親もしくは主人に認定されちゃったってわけなのか?
聞けば、フィーさんは多分ねと頷いた。
「あとは殻取るの手伝ってあげたから、余計に好印象持たれたんだろうね」
「ふゅ」
「……君はカティアがいいの?」
「ふゅ!」
獣ちゃんにフィーさんがそう聞けば、獣ちゃんは力強く鳴いた。
どうやら、生まれたばかりだけども僕らの言ってることはわかってるみたいだ。
獣ちゃんの反応にフィーさんはふーっと息を吐いた。
「本来は僕の管轄下になるんだけど、いいよ。カティアの守護を君に任せてあげよう」
「ふゅ!」
「ちょ、なんでそうなるんですか⁉︎」
「いいじゃない。いずれは君にも聖獣とかはつけてあげるつもりでいたし、この子が望んでるんだから叶えてあげなよ?」
「え、あ、いやその……神獣なんて凄い存在が僕なんかにいいんですか?」
「まあ、お互い助け合う形でちょうどいいんじゃない? 僕が連れてても本邸側の子達に任せっきりになるだろうし」
だから任せた。
ってな感じでフィーさんは親指をぐっと立てた。
これ絶対押し付けの意味もある気がする。
100年も放置してたのもあるが、生まれて即懐いた僕の側に置いておいた方が引き剥がした時なんかに泣かせてしまえば酷い惨状になるのが目に見えている。それとかを回避するためだろう。
かと言って、僕も無責任に放棄出来ない性格だし、獣ちゃんは可愛くて側に置いておきたい欲求はあったから引き剥がせない。
こうなったからには引き受けるしかないと小さく息を吐いた。
とここで、
ぐぎゅるぅう。
「「ん?」」
「あ?」
「まあ」
「……お腹空いてるの?」
可愛らしいお腹の虫は獣ちゃんからでした。
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