【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

文字の大きさ
52 / 616
第二章 交わる会合

052.満たされてない腹に、鳥の報せ

しおりを挟む
「……殻を全部食べてもまだ欲しいみたいですよ?」
「そこは我慢させるしかないね」
「ふゅぅ……」
「カティアのご飯が最初に食べれたんだからワガママ言わないの。神力含んだ殻も食べたんだから、それがお腹いっぱいって覚えないと」
「ふゅ?」

 ぽんぽんと自分のお腹をさすってみても、大して膨らんでないからか実感が湧かないみたい。

(この小ちゃな身体のどこにあれだけ放り込んだのかわかってないようだなぁ?)

 僕がコフィー飲んでたら飲みたそうに目を輝かせてきたけど、苦いからやめさせた方がいいなぁと思って僕はメッと窘めた。

「クラウには苦いからだーめ」
「ふゅぅ……」
「もうすっかり主人が板についてきてるねカティア?」
「そうですか?」

 ペットは飼ったことはないので、昔の飼育委員の杵柄使ってみてる感じなんだけども。

「けど、聖獣達が交信してたなんて知らなかったなぁ。クラウ、君ずーっとカティアみたいな子を呼んでたの?」
「ふゅ?」

 くるんとフィーさんの方に振り返ったクラウだけど、相も変わらずわかってないのか首を傾げていた。

「……まあ、いいけど。とりあえず、君はカティアの守護獣になるんだから生まれたばかりだからって自覚は持ちなよ?」
「ふゅ!」

 まっかせてーってな感じにクラウはぴっと両手を上げた。

「愛らし過ぎますわ……」

 アナさんはぷるぷる肩を震わせながら口を押さえてた。出はしないだろうが、多分鼻血を防ぐためだろう。
 それくらいクラウの一生懸命さは可愛過ぎだ。僕だって間近で見てて同じように口を押さえたからね。
 とここで、エディオスさんの後ろから誰かがやってくるのが見えた。

「陛下。少しよろしいでしょうか?」

 さっきの人とは別の給仕のお兄さんが、手に紙で出来た立派な鳥を持ってきたのだ。

「ん?……って、その鳥の形は」
「はい。ヴァスシードからの通達になります」

 と言って、エディオスさんにその鳥を差し出してきました。

「んだよ、ユティの野郎なんかあったのか?」
「ユティ?」

 雰囲気からして、さっきも聞いたヴァスシードって国の王様のことだろうか?   もしくは例のお料理上手だと言う王妃様?
 セヴィルさんを見ると、ああ、と言って、

「ヴァスシードの国王でユティリウスと言うんだ」
「ほぉ……」

 エディオスさんが鳥を受け取り、ふって息を吹きかければ紙が折り紙を開いていくように崩れていき一枚の紙に変わった。

(……あれの仕組みって一体どうなってるんだろう?)

 エディオスさんが中身をさらっと読まれるとギョッと目を丸くされた。

「はぁ⁉︎   今日の夕刻にもう来るだと‼︎」
「何⁉︎」
「まあ、もういらっしゃいますの?」
「……なんか早くない?」

 反応は様々だったが、僕はいまいち飲み込めてないのでクラウと首を傾げていました。
 ただ、わかったのはヴァスシードの国王様が急にこのお城に来ることくらいだ。詳しいことはエディオスさんが読み上げてくれないからわからない。
 アナさんやセヴィルさんは席から立って、エディオスさんの後ろに回り込んでお手紙を覗き込んでおられました。

「まあ、ユティリウス様。この前は後三日後と仰ってましたのに……?」
「どうやらファルミアにも異存はないようだな。この速さ……おそらく転移方陣を使って来るようだが」
「だよなぁ……」

 エディオスさん頭痛がしたのか、こめかみを押さえておられました。

「っかし、ユティはともかくとしてなんでファルが止めに入らねぇんだ?」
「たしかに珍しいな。公務はあちらとて暇ではないはずだが……」

 事情を深く知らない僕でもそれは疑問に思う。
 いくらこの国が世界のトップでも、配下に散らばる国々の王様だって立派な役職だ。職務放棄してまでこちらに来るなんてよっぽどの理由があるはず。

「あの……陛下。それが真でしたらば」

 とここで放置状態になりかけてた給仕のお兄さんが割って入ってきた。
 焦るのも無理はない。国王様からの電報?は勝手に見ないだろうし内容が内容だから、お兄さんがオロオロしかけてる気持ちもわからなくもない。

「ああ。今も聞いてただろうがヴァスシードの国王夫妻が夕刻にここに来ることになりそうだ。マリウスとライガーには食事は俺らと一緒にするように言っておけ。護衛や使用人らの方は中層を一部使っていいから対応は任せる」
「はっ」

 お兄さんは一礼すると足早に裏へと行ってしまった。そんな粗相はこの場合誰も気にしていないから無視。
 ただ、さらっと決まっちゃったけど初対面の僕やクラウが同席してもいいのかな?

「ん?    カティアどうかした?」

 話に加わってなかったフィーさんが僕が考え込んでたのを不思議そうに首を傾げた。

「あ、いえ。そんな大袈裟なことではないんですが」
「十中八九、君がユティ達と同席してもいいのか悩んでたんでしょ?」
「え、はい……」

 やっぱりバレてましたか。初日から僕は顔に出やすいって言われてたしね。
 そしてフィーさんが、くすりと口元を緩めた。

「遠慮する必要はないと思うよ?    君ももうこの城の一員と言っても過言じゃないし」
「そ、そうでしょうか?」
「水くせぇなぁ、カティア。誰もお前が邪魔なんて思ってないぜ?」
「ああ」
「そうですわよ、カティアさん」
「あ、ありがとうございます……」

 嬉しいお言葉に胸がなんだかこしょばゆい。
 まだ出会って1週間くらいなのに、もう皆さんと過ごすのが当たり前になってきている。僕って、家族やツッコミ親友以外はコミュニケーションが乏しかったから、こんな親身になってくれる人達からの優しい言葉や態度には弱いんです。
 愛想がなかったわけじゃなくて差し障りのない普通のお付き合いと言うか。昔の僕からじゃ考えられないくらい毎日がとっても楽しい。

(そ、それに、こ、婚約者まで出来たもの。お互いの気持ちは確認し合ってないけどさ)

 未だ美形さんとそう言う関係になれたなんて信じ難い気持ちでいっぱいだ。

「ん?    エディオス、お前この間ユティリウスに識札を飛ばしていなかったか?」
「あ?」

 セヴィルさんの問いに、エディオスさんは思い出すべく顎に手を添えて首を捻り出した。
 しばらく唸ってたが、ややあってさぁーと血の気が引くのがわかるくらい青ざめていった。

「……直接的ではねぇが、カティアのこと知らせたな」
「おそらくそれだろう……」
「ですわよね」
「ぼ、僕のことですか?」

 まさかセヴィルさんが僕の御名手になったとかじゃないでしょうね⁉︎

「来たら美味いもん食わしてやるってくらいだ。ゼルとカティアの御名手のことは時期が来るまで秘匿すんのがいいだろ?    いくらユティにだからって言うわけねぇよ」
「そ、そうですか……」

 それにはほっと出来ました。
 セヴィルさんも小さく息を吐かれていた。

「ですが、それだけでしたらファルミア様がお止めになられない理由にはならないと思われますが」
「……たしかに」
「だよなぁ?」
「あの公務重視のミーアがユティと一緒くたになってそんな急いで来るほどでもないよねぇ?」

 と、皆さん渋い顔色になってしまわれた。
 僕はと言うと、王様と王妃様が来るからにはピッツァを振舞ってくれってエディオスさんに頼まれていたから、どんなのを用意しようか悩むしかなかった。

(だって、あの王妃様が来るんだよ?)

 料理好きだから家庭的な奥様なイメージとかしてたけど、王妃様と言う立場上厳しい面も持ち合わせなきゃいけないだろうから多分違うかも?
 だけど、舌が肥えてる上に料理上手な方に僕なんかがどんなピッツァ出せばいいのか。普通で大丈夫だろうか?

「ふゅぅ……」

 クラウが眠たげな声を漏らした。
 さっきから静かだなと思ってたら眠たかったんだね。僕は抱っこしてからトントンと翼上の背中を軽く叩いてあげた。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...