【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第四章 式典祭に乗じて

108.式典祭1日目ー流行りの恐怖ー(途中別視点有り)

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「追求はしてぇが、時間はねぇ。味はこいつでいいから、ひとまず用意しておいた分は頼む」
「ひとまず?」
「式典だからこの後すぐには来ねぇとは思うが…………とにかくティラミスの売れ行きはやべぇからな。老若男女問わずでジジイどもまでガキみてぇに取り合うんだよ」
「あははは……」

 お偉いさん達まで虜にしちゃったんだね?

「あとお前は仕事が出来てもガキだからこまめに休憩は取らす。水分補給は水だけでなくジュースもな?」
「お世話かけます」
「こっちが世話になってることが多いんだぜ?  気にすんな」
「じゃあ、先にシトラムのジュースどうぞ」
「ありがとうございます」
「ふゅふゅぅ!」
「クラウちゃんのもあるわよ?」
「ふゅぅ!」

 しかし、それだけ売れてるんじゃ小分けもだけどパーティサイズのも多分すぐ無くなりそう……ひとすくいどころか、器半分持ってっちゃう人もなくはない。バイキング形式の醍醐味だからね。
 シトラムのジュースを飲みながら、僕は出来るだけ予想を組み立ててみた。

「イシャールさん、シャルロッタさん」
「ん?」
「何かしら?」
「僕の予想が当たるかはわかりませんが」
「いいわよ。言ってみて?」
「多分、二時間一刻で全部なくなっちゃうんじゃ……」
「え、えぇ?」
「どーゆーことだ?」

 では、ここははっきり言ってみよう。

「朝来る時にシェイルさんから聞いた噂だと、僕の作ったティラミスはお城中に広まってるって言うのと、食べれてない人も多いようですね」
「まあ、全員に行き渡るのは無理ね?」
「ミュラドの方も、売り切れ次第断ってるらしいからな」
「そうですよね。そこまではまだ普通と認識してください」

 ここからは僕も憶測でしかないけども。
 だけど、お二人は真剣に聞いてくれている。

「今日からは式典で、一般客の来場もあるじゃないですか?   そこにお城中で持ちきりの魅惑のデザートの話なんてすぐに耳に入りますよ。お勤めされてる方がご家族にも話されていたら、ティラミス目当てで来られる方が後を絶たないんじゃないかなって」

 要はお祭り。
 直接的な宣伝はないにしても、メール便のような連絡手段は発展してるし、お城に寝泊まりされてるのは全員じゃない。
 だから、ご自宅での団欒とかで『こんなのが新しく出た!』と口に出せば気になるのは人間の性質だもの。
 あとは、

「それに厨房の方々もお家に帰ることがありますし?」
「…………おい、てめぇら!   家でティラミスの事話したか⁉︎」
「ぴょ⁉︎」

 まだ話途中で急にイシャールさんが声を上げられた。
 当然皆さんも驚かれたけど、何故かすぐに口を閉ざされちゃったよ?

(え、ビンゴ?)

 僕の憶測がまさか当たってたと⁉︎

「「「「「…………す、すみません‼︎」」」」」
「「「「だって、美味しかったからっ‼︎」」」」
「「「実際、売れ行き良かったし……」」」
「カティアちゃんのこともちょっとしゃべっちゃいました!」
「カティアちゃんのことまで⁉︎」

 最後のはシャルロッタさん。
 なんか猫っ毛が逆立っていませんか!

「この調子だと下層もだろうな……過ぎた事はしゃーねぇが、お前よくわかったな?」
「お、お祭りだとそうじゃないかなって……」

 学祭やレストランに勤めてた頃の、商店街出店とかで似た経験があるとは言ない。
 規模は違いすぎるけど、仕組みは大雑把なとこは一緒かなと思ったので。

「けど、とりあえずは様子見だな。ミュラドにも念のため識札で連絡はしておく。特に、考案者本人がこっちにいると知られてりゃ、余計にうちになだれ込んでくるな?」
「ほえ?」
「シェイル……シェイリティーヌってあの近衛騎士は、結構情報通なのよ。顔も広いし、来る前に会ったって言うなら近衛騎士団経由から全域に広まるわ」

 そう言えば、お城散歩の時も似たことが。
 あのお姉さん、なかなか遣り手の人なんだね?   なんでか関西弁だけども。

「同期だからって、話すんじゃなかったわ……」
「え?」
「あの子とは学園からの同級生なのよ。科は違うけど」
「あら」

 お友達だったんだ。
 じゃあ、僕のこと教えたのはシャルロッタさんだったんだね。これで納得。

「それとカティア。まだ話が途中だったな。他にも気づいたことがあるのか?」

 おお、そうだった。こっちもお話の途中だったね。

「なので、お一人様あたりの制限量とか決めておかないと大皿でも団体様で持っていかれる場合もあるのではと」
「………………食い意地荒い連中じゃやりかねんな」
警報アラートの処置を考慮すべきかもしれませんね」
「シャル、お前がやっておけ。小分けも一人一個以上持ってくやつがいるだろうし同様にしろ。苦情来たらいつも通りに対応して構わん」
「承知しました」

 大掛かりなことになりそうだけど、これくらいはやっておかないと。
 ただでさえ殺人的に問い合わせが来るくらいだから、先の先まで読まなきゃだから。だのに皆さん、僕の見た目が子供だからと言うのも忘れてテキパキ動いちゃってるよ。イシャールさんは、ミュラドさんに送る識札に色々書き込んでから鳥さんにして飛ばしました。
 ここで、お話はひとまず終了となり僕はシャルロッタさんが戻って来られるまでティラミス作りをしていることに。

「あ、卵ケーキこれで終わりだ。コフィーも」
「ふゅ?」

 夢中で作って保冷の結界張っていたら材料が切らしちゃった。
 なので、コックさん達のところに行こうとしたんだけど。

「卵ケーキ追加出来たよ!   粗熱もとっておいたから!」
「コフィーも落としておいたよ!  これだけあれば足りる⁉︎」
「生クリームも!」
「カッツクリームもこれでいい⁉︎」

 などなど、噂拡大への謝罪の意味合いも込めてなのか、皆さん既に材料を用意してくれてました。

「やれば出来るじゃない。とは言え、作り過ぎもダメよ?  保冷の魔法にかけ過ぎても口当たりがよくないから」
「「「「『は、はい!』」」」」
「さぁ、いよいよ一般開放も始まるわ。カティアちゃんの予想がどれだけ当たるか見ものね?」
「き、緊張しますっ」
「君はここで作ってくれてるだけでいいわ。いつももだけど、お客の入れ替わりが激しいから潰されちゃうだけで済まなくなりそうだもの」
「ソウサセテクダサイ」

 こんなちんまい体じゃ、動線抜けるの絶対無理だもの。甘えるところは甘えさせていただきます。代わりに、他のことで貢献するよ!








 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(エディオス視点)









 しょーじきに言おう。

(無茶苦茶かったりぃ!)

 仕方ないのも無理はない。
 王族でも神王国の直系に生まれたのだから、王位継承権は絶対だ。おまけに俺以外男の兄弟いなかったしな。
 それが即位してひとつの区切りを迎える節目まで来たんだ。期待とか諸々向けられるのはもう慣れたからいい。
 そう言うのよりも、だ。

「陛下が御即位なされて50年。ーーーー」

 聞くのもだりぃジジイ共の話が一人ひとり長過ぎんだよ!
 どいつもこいつも似た内容ばっかで、毎年変わり映えないから飽きてくるわ!  親父も爺様も500年以上在位しててよく耐えてきたな……いや、爺様結構面倒臭がり屋だから聞き流してたかもな。俺もしてっけど。
 その爺様はたしか王族席にいるはずと思って目線だけ動かしたが。

(い……ねぇ⁉︎)

 完璧に姿がないわけじゃない。
 幻惑の魔法で自分の分身を置いているだけだった。隣の婆様は気づいているだろうがちっとも動じてない。あれも幻惑かと疑いかけたが影があるので本物だ。幻惑には基本影が出来ないのだ。
 親父達も気づいてるはずなのに何も動かない。つーことは、口止めされてんだろうな?

(式典一日目で抜け出す阿呆がいるか⁉︎)

 俺だって計画してる途中だったのに!
 探しに行こうにもゼルやサイノスが両側に控えてるから出来ねぇ。やろうと思えば出来なくもないが、後が怖い。特にゼルが。
 そして完膚なきまで叩きのめす程の説教と威圧で押しつぶされること間違いなし。
 仕様がねぇが、祭典の儀が終わるまでは大人しくしてるしかない。

(どこ行ったんだよ、爺様?)

 特に真新しいことはない……いや、あったな。
 あの新し物好きな先先代が、ティラミス・・・・・に興味がないわけがない!








 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(アナリュシア視点)







(お祖父様がいらっしゃいませんわ!)

 祭典の儀の途中、ちらりと目配せした時でしたわ。
 お祖母様はごく普通に太政大臣の話を聞かれていらっしゃるのに対し、こう言う場が苦手でいらっしゃるお祖父様があくび一つせずに静かに聞かれてるのが意外に思いましたの。
 ですので、お母様の隣からほんの少しだけ目配せしましたところ、お祖父様のお席には幻惑の影のみしかいらっしゃいませんでした!
 何故お祖母様は平然としていらっしゃいますの⁉︎

「アナリュシア、席を外してはなりません」
「お母様?」

 すぐに探しに行こうと思いましたら、お母様に小声で制されてしまいました。
 たしかに、今は式典の真っ只中。王族で現在第一継承権を持つわたくしは、簡単には動けませんでしたわ。

「お義父様の事はご心配に及びません」
「ご存知でしたの?」
「事前におっしゃっていましたからね」
「まあ」

 エディお兄様の節目の式典ですのに、何故こんなお早い段階で抜け出されるのでしょう?
 すると、お母様は扇で口元を隠されました。

「どうしても自分の目で確かめたいことがあるからとしか、お教えくださらなかったの」
「ご自分の目で?」
「ええ。あのような真新しいものは後でエディオスに聞くにしても待てないとか」
「お兄様にですの?」

 でしたら、本日の晩餐会でもよろしいですのに。
 どれほど待ちきれなかったのでしょうか?
 けど、お祖父様がそこまで興味惹かれるものと言いましても…………。

(まさか、カティアさん⁉︎)

 ティラミスやピッツァのこともですが、ゼルお兄様の御名手のことも⁉︎
 いいえ、お父様方でさえお伝えしていませんもの。お祖父様が御存知のはずは…………ないとは言い切れませんわ、あの御方ですと。

(ああ、カティアさん。大丈夫でしょうか……)

 心配でたまりませんわ!
 エディお兄様もきっとお気づきでしょうから、お互い歯がゆくて仕方ありません!
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