【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第五章 新たな一員

161.男子会?での考察(ユティリウス視点)

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 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(ユティリウス視点)






 カティとゼルが逢引に出かけてしばらく。
 することもないから、俺は出来る範囲でお菓子を作ってエディとサイノスに持って行くことにした。
 ミーアは女子会だし、俺達へのお菓子も頼めば作ってくれただろうけど、せっかくの女性同士の集いだから邪魔はしたくない。彼女がこの城に滞在出来る時間は残りわずかだ。
 それは俺もだけど、帰国すれば公務の山が待ち構えてるからのんびり出来る時間はなるべく与えてあげたい。
 ミーアのおかげで少し身についた調理技術と四凶達の手伝いもあって、早い時間でおやつは出来た。
 久しぶりに作ったけど、なかなかにいい出来。
 食堂に呼ぶかどうか少し悩んだけど、今日のは少し汚れやすいからやっぱり識札を使って呼ぶことにした。
 エディとサイノスは応じてくれたけど、フィーはいないのか戻ってきた。仕方ないので、彼のはまた作ることにするかとマリウスに部屋を借りた礼を言ってから四凶達とせっせとセッティングした。

「お?    これほんとにお前さんが作ったのか?」
「ふふーん、自分の城じゃときどーき作るからねー」

 俺が四凶達と作ったのは、ミーア直伝のホットケーキだ。
 秋始めだけど、少しあったかいのがいいかなとこのメニューにしてみたわけ。何枚も積み上がった山みたいな薄焼きのケーキに、天辺にはバターの角切りと蜂蜜をこれでもかとかたっぷりかけている。
 ゼルだったらしかめっ面確定のお菓子だけど、今彼はいないからいいのだ。
 昨日のエクレアとかも俺大好物なんだけど、これも結構好き!   ただ蜂蜜とバターだけじゃ太るからとあんまりミーアは作ってくれないけどね。
 一応口直し的な果物の盛り合わせも用意している。俺なんていい奴!

「一枚ずつ切り崩しながら食えばいいのか?」
「そうそう。ケーキ自体にはそんな甘みはつけてないから、追加分の蜂蜜やバターはそこに置いてるよー」

 一人最低五枚作ったから、最初にかけたのだけじゃきっと足りないと思ってさ。
 女性達やゼルのいない八つ時は少し寂しいが、ヴァスシードじゃエディ達の代わりにミーアと四凶達とだから贅沢言えないしね。

「しっかし、もうだいぶ経つが進展あったかなぁあいつら」

 三枚くらい食べ終えたところでサイノスが切り出してきた。

「今までのゼルだったらさっさと帰ってるだろうが、仮にも惚れてる相手だしな?   色々と積もる話があんじゃんねーの?」
「かもねー?」

 ゼルがカティに首ったけ?なのはあからさまだし。
 俺親友やってて40年くらいになるけど、従兄弟のエディが感心するくらいの激変っぷりには随分驚かされた。
 あ、この会話は先にサイノスが防音の結界を張ってくれたから給仕達には聞こえてないはずだ。
 最初っから三人でこの話するつもりだったしね?

「カティアが元に戻ったら、あいつ相当焦るだろうなぁ?」
「「あり得る」」

 今でさえ可愛いらしい顔立ちだから、セリカと同じかそれ以上の可能性は大いにあるね。
 あの子どうしてか自分が平凡顔って思ってるようだけど、言っても信じにくい性格だからあえて言ってない。

(フィーはその方法を探すのに、色々動いてるのかな……?)

 もしくは別件かもしれないが、神の行動はよくわからないし踏み入れられない。
 いくら気兼ねない付き合いが出来てても、彼は唯一無二の創世神だから。

「お互い奥手だからなぁ……思ったよりは進んでるかも怪しいが」
「ないとは言えないねぇ?」

 普段の食事の席でさえ、特に会話をしようともしてないから。
 見える範囲でも、あの二人積極的に会話する機会があんまりない。
 恋仲、とも違う始まりだったからかカティはどうも付き合い方がよくわかってないと言うか。それはゼルもだけど。

「お前が言えるかサイノス?」
「うっ」
「やっぱりエディも知ってた?」
「昔っから一途だしな、こいつ」

 それくらいサイノスの片想い歴は長いってことか。
 アナとの年の差は大体80年くらい……カティの今の外見?
 え、一体いつからって聞きたいけど、サイノスの顔がこれでもかってくらいに赤面だからやめておいてあげよう。
 俺とミーアのようにわずか数年って年の差の方が珍しいからね、この世界の結婚基準って。

「エディはモテるのにいないよねー?」
「見つけように御名手って相手がいねぇんだよな?」
「……何言ってんだ。お前さんこそ一途に想ってる相手がいるだろ。自覚がないだけで」
「「へ?」」

 突然のサイノスの発言に、俺とエディは拍子抜けしたような声を出してしまった。

「お、俺が……?」

 本当に自覚がないでいるのか、エディは自分で自分を指すくらいだ。
 けど、幼馴染みのサイノスがこう言うから、40年程度しか付き合いのない俺じゃ気付かないのも無理ない。
 相手は誰なんだろうか?   

「お前さんが冒険者としての活動記録はフォックス達から聞いてんだぞ!   ほとんどがセリカ捜索だったじゃねぇか!」
「それは合ってるが……え、セリカ?」
「幼馴染みの中じゃ一等気に入ってただろ!」
「いや、それは、幼馴染みってだけで」
「ちょっと待った待った!   俺もわかってないけど、何?    エディの想い人がセリカだったってこと?」
「ああ」

 俺が仲裁に入ってサイノスに聞けば、彼はきっぱりと言い切った。

「え…………え?」

 エディ自身は告げられても、自覚症状は現れてないらしい。
 ただこれまでになく、拍子の抜けた情け無い表情ではあるけれど。

(エディとセリカねぇ……)

 傍観側で言わせてもらうと、とても似合いの二人に思えた。
 セリカ自身は、リチェルカーレ家二代前の侯爵夫人の生き写しと見紛うくらいの美貌らしいし、事情を知っても知らなくても彼女の美しさと気立ての良さは10人中10人とも射止めれるくらいの貴婦人だ。
 人生の大半を市井で過ごしてた過去があっても、侯爵家に戻ったからそこはいずれ元に戻る。
 対するエディは、何と言ってもこの世界の当代神王。
 歳も若いし、妃候補を募ろうにも御名手は強制的に引き合わせてはいけない風習が王族程強いので、大臣達も簡単に見合いの席を作れない。
 性格は少し粗野なところがあるけど、基本いい奴だし人当たりもいい。舞踏会の席でもゼルと違って、全員は応対しなくても少しは踊ってあげるって気前の良さ。
 まあ、顔も男らしいからモテるモテる。

(この二人が幼馴染みとして離れてた期間はあるけど、もし結ばれたら……)

 先代神王の時以上の恋語りが広まってしまいそうだ。
 俺とミーアのも脚色されてても舞台化されてるくらいだしね。

「どーなんだ?   自覚持てたか?」

 俺が考え込んでる間にサイノスがまた聞いてても、エディは放心してしまってた。
 どうやら、許容量を超えて頭と気持ちがごちゃ混ぜになっちゃってるみたい。

「サイノス、いつから気づいてたの?」
「確信持てたのは、一度セリカに話しに行った時だな?    こいつ、はとこの俺がもっと説得させるような台詞を自分が言いまくったんだぜ?   あからさまに戻ってきてほしいとか言いやがるし」
「ほーぉ?」

 そんな積極的な事を言うなんて。
 別にセリカを蔑ろにしてるわけじゃないけど、年頃の女性に対して戻って来いって。それ絶対セリカ惚れちゃわないか!  
 でも、お互いが御名手だってわかれば引き合う魂の繋がりがあるから、俺としては普通かな。
 自慢と言うか、俺がミーアに納得させようとしたのは随分と苦労したしね。それに比べれば、エディ達は障害少ないから大丈夫でしょ。

「けどまあ、反論する気力も起きないんならそう言う事だよね?」
「だよなぁ?   おい、いつまで呆けてんだよ」

 軽くサイノスが小突いても、エディはなかなか正気に戻らなかった。
 ただ、少しして立ち上がったかと思うと、自力でサイノスの結界に穴を開けてしまい、食堂から出て行ってしまったよ。

「自覚したかな?」
「整理しようとしてんのかもな?   自室に行っただろうから、仕事の残りは俺から近習達に知らせておくわ」
「無難だね」

 俺は臣下ではあっても、他国籍の者だから手を出せない。
 エディはケーキはきっちり食べ終わってたから、俺達は残してた分を食べ終えた後も、話を蒸し返すこととかはしなかった。
 四凶達は食べ終えてからずっと傍観してたけど、俺としては聞きたいことがあったんで、片付けを給仕達に預けてから借りてるゲストルームに彼らと戻った。

「ねぇ、四凶達。もう……いや、とっくに・・・・気づいてるだろうけど、あの二人についてはどうだった?」
『…………』

 俺が聞くことは予想済みだったのか、彼らはしばらく閉口していた。
 けれど、主人の番の問い掛けを無碍にしない性格が強い。
 だからか、少しして窮奇きゅうきが一歩前に出てきた。

「それは王としてか、一人の朋友ともとしてか」
「もちろん後者さ。エディにもだけど、セリカだって幸せになって欲しいからさ」
「是。長として我が告げよう。彼の神王と六大侯爵家の末姫。互いに御名手だ」
「おお」

 ほとんど予想してたから驚きはさっきより小さいが、感心はしてる。
 守護妖もだが、守護獣は主人や他人の結びつき、主に御名手の結びつきに関しては敏感に気づく傾向があるんだ。
 カティとゼルのも、四凶達だから容易く見抜けた。俺とミーアのも、実は彼らから教えてもらってたから積極的に交流しに行ったんだけどね。
 俺はさておき、問題はエディだ。
 自分の気持ちにはずっと気づいてなかったようだし、これからセリカと顔を合わせる機会は昔程無くても、彼女はカティと一緒にいることが多いから昼餉や八つ時なんかはカティと作るだろうから一緒に食べるはず。
 態度を繕うのはゼルくらい出来るのは普通でも、内面が心配だ。下手するとゼルと同じように初恋かもしれないから、平常心でいられないだろう。

「あーもう、あとちょっとで帰らなきゃいけないのになぁ」

 手助けしたくても、今エディのとこに行ったって意味がない。
 彼にだって、気持ちを整理したい時間は欲しいだろうから。
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