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第五章 新たな一員
168.辿るたどる糸の先
しおりを挟む「戻ったらフィルザス神に聞かねばな……」
何気ない言葉なのに、黒い雰囲気纏われてるのは気のせい?
そう思いたいのでこの場合スルーしましょう。
「まあ、試しに魔法を使うのは帰ってからにしてくれ。魔力の量はあんま変わってないが、流れが変われば術の質も変わってくるさ」
「わかりました。ありがとうございます」
「いいって。話って言うか、用はこれについてだ。時間もそうないだろ? 帰るまではこの辺りを自由に散策するといい。逢引でここまで来るなんて早々なさそうだからな?」
「は、は……い」
最後の部分だけは、僕だけに聞こえるようにこっそり呟いてくれた。セヴィルさんはまだフィーさんにどう問い詰めてやろうかとぶつぶつ言ってるので聞こえないにしても、あんまりお昼ご飯前のような事態にはなりたくないから。
「あ、いい場所があるな。ここを出て右手の方向をずっと進めば、小さな滝がある。そこに珍しい花々が見れるぞ? よかったら行くといい」
「水場、ですか?」
「聖樹水じゃないから飲んでも問題はないぞ? まあ、神脈が通ってるから多少は神気を取り込むことにはなるが」
「く、クラウだけにさせますね……」
何かあってからじゃ遅いから。
「ああ、聖樹水について少し言い過ぎたからな? 毒と言っても身体を蝕むのと少し違う。魔力の障害だったり、異常に力が向上したりとかで病や死に繋がるわけとは別だ。さっきの量ならそう言った副作用はフィー様が抜いてるから大したことにはならない」
「さ、先にそれを言ってください!」
「普通、ヒトの仔があそこに行くのは不可能だしな? そこのセヴィルや今の神王以外じゃ、ライアシャイン様の番である仔くらいだ」
「エディオスさん達の、ご先祖様?」
「亡くなってはないぞ? 番の仔は神霊と交わったことである意味ヒトとは違う存在ではいる。神域よりは離れてるらしいが、度々戻ってくるそうだ」
「まだご存命なんですか⁉︎」
「あの方が番を手放すはずがないな」
羨ましいって含みがあるように聞こえたのは気のせい?
ここも一応スルーしておきましょう。
「そら、俺のことは思い出したら来るくらいでいい。さすがにフィー様に知らされちゃ、神脈に行くのはサボれんしな」
「それはフィーさん関係なく行ってください」
「手厳しいが、違いないっ」
一応の口約束をしてから、僕らはリーさんの洞窟を後にした。セヴィルさんは無理に揺すったら正気に戻ってくれたのでなんとかなりました。
「ふーゅゆ?」
クラウは何が起こるかわからないからか、ちょっと興味津々で僕の頭の上です。
「……すまない、考えに耽ってしまって」
「気にしてないですよ?」
物騒な内容でも、僕のことを考えてくれてたのだからちょっと嬉しかった。
とりあえず、で、デートの続きということで、リーさんのオススメスポットを目指すことに。
洞窟を出て右手には森が広がっていて道は茂みも少なく歩きやすかった。
何故か自然と手を繋いで歩くことになったのにはちょっとドキッとしたけど、デートだから?と納得させることにした。
「距離はそう遠くないのか?」
「ずっと行けば、としか……」
大雑把な説明ばかりだったから、具体的な目印も何も聞かされてなかった。
「ふゅふゅぅ!」
「クラウ?」
ふよんと僕の上から離れて宙に浮き、見上げる前にすいーっと飛んでしまい、勝手に奥へ行ってしまった。
「く、クラウ!」
「あの早さじゃ、このまま走っては追いつかないな。すまないが、抱えるぞ!」
「は、はい!」
恥ずかしがってる場合じゃないので、了承してからセヴィルさんにお姫様抱っこしてもらいました。
体勢が安定してからすぐにセヴィルさんは駆け出し、クラウが飛んで行ったと思う方向に向かってく。
けど、どれだけ早く飛んでったのかクラウの姿が全く見当たらない!
「ど、どこに行っちゃったんでしょう⁉︎」
「俺じゃ神気を辿れないから難しいな。出来るとしたら、主人のカティアかフィルザス神くらいだ」
「ぼ、僕がですか?」
「守護獣との契約が成されてるなら可能だと思う。意識を研ぎ澄まし、勘付ける場所に己の守護獣はいるものだ」
「や、やってみます」
何もやらないよりはマシだから、一度止まってもらった。
意識を研ぎ澄ますって高度なことは出来ないけれど、簡単に言えばテレパスに近いものらしい。
主従契約を結んでいれば、主人と守護獣の間には特別な繋がりが出来てるらしく、お互いの居場所は意識すると分かり合えるそうな。
ペットは飼ったことはないけど、クラウの行きたそうな場所を思い浮かべる要領でいいのだろうか?
とりあえず、目を閉じてクラウのことを考えてみた。
(……クラウ、どこ?)
なんで勝手に行っちゃったかわからないけど、とにかく見つけなきゃ。
口でも呟きながら意識を集中させてみたら、ピンってなった感覚が伝わってきた。
それと、
「い、糸?」
薄いけど、金色の糸。
宙に浮いてるそれは、僕の右手の親指からずーっと奥にまで続いていた。
「加護が糸状に見えるのか……悪いが、俺は視えないから誘導してくれ」
「はい」
走りはせずに若干早歩きで向かうことにした。
糸のような繋がりとやらは途切れることなく続き、道がジグザグのなっても宙に浮かんだままクラウの元まで導いてくれている。
茂みになった時にはセヴィルさんは僕をもう少し高く抱え、怪我が出来ないようにゆっくり進んでくれた。
「まだ先か?」
「全然切れないです……あれ?」
大きくはないけど、水が勢いよく落ちる音がするような?
「聞こえるな? リージェカインが行っていた滝壺が近いようだ」
「ってことは、まさかクラウ……」
「可能性は高いな。このまままっすぐでいいか?」
「あ、はい」
まだ消えてないそれをしっかり見ながら誘導を続け進んでいけば……僕らの予想通り、開けた場所に着くとリーさんが言っていた通り規模の小さな滝が見えた。
そして、糸の終着点には岸辺で頭を突っ込んで水をがぶ飲みしているクラウが上機嫌で翼を羽ばたいていた。
「クラウ!」
けど、呼んでもクラウはお水を飲むのに夢中になってて気づかない。
糸は僕が呼んだ時に消えてしまい、セヴィルさんに降ろしてもらってからクラウに駆け寄った。
「ちょっと、クラウ!」
「ぶゅ?」
無理矢理引き上げさせたら頬袋が出来るくらいにまで水を飲み込もうとしていた。
ごっくんと大きな音を立てて飲み込んでから、ようやく僕に振り返ってくれた。
「ふゅふゅぅ!」
「喜んでる場合じゃないでしょ……」
「ぶゅゆ⁉︎」
セヴィルさん程じゃなくても、自分でもわかるくらい低い声が出たと思う。
顔はどうなってるかはわからないが、きっといつも以上に怒った表情だろう。怒って当然だけどね!
「心配させないでよ! なんで勝手に行くの⁉︎」
「ぶ、ぶゅ……」
「しょげたってダメだよ? このお水が飲みたかったからって僕だけじゃなくてセヴィルさんにも迷惑かけたんだから!」
なので、お決まりコースのこめかみグリグリタイムだ!
いつもより長めに施せば、終わった頃には風船が割れたようにクラウの気力が萎えてしまった。
「ご飯抜きはやめておいてあげるけど、勝手にしたらこれ以上のお罰するからね?」
「ぶゅ⁉︎」
よっぽど堪えたのか、びっくびくって言う具合に体を大きく震わせた。
とりあえず、お説教はこのくらいにしておこう。
「……もう、話しかけていいか?」
「あ、はい」
すっかり放置してしまったセヴィルさんは、そろーって感じで僕に近づいてきた。
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