【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第五章 新たな一員

174.青いタバスコ

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 その前に、フードプロセッサーが終わったら消去の呪文で魔法を消します。

「彼方に虚ろへ、消去イレイザー

 無詠唱で指鳴らしとか手を叩く動作だけで行うにはまだまだ修行がいるのでこの方法でやっています。

「しっかし……真っ青過ぎない?」

 改めて言ってしまうと、直視しにくいですがもう後戻りは出来ない。
 このまま味見は出来ないから、あとで試食用に作ったピッツァにかけてみるしかないか。

「これでもいいんですが、網目の細かい笊を使って裏漉しすればさらに使いやすくなります。この作業がなくても瓶に入れて寝かせておけばカラナの部分が柔らかくなるのでお好みです」

 出来上がったら、まさに未知の調味料感満載。
 ブルーハワイのような鮮やかなのとも違い、少し黒っぽい。
 誰が食べるんだと言う感じではあるけれど、作ったのは主に僕です。
 量は小瓶ひとつ分。
 味はあとで確かめますが、セヴィルさん食べてくれるだろうか?
 とりあえず、ピッツァの仕込みもあるので乾燥タイプのにも取り掛かり、そっちは馴染みのあるオレンジっぽい赤色のタバスコが完成。
 こっちは、ふやかすのに使った水と酢とかも全部入れてから同じようにミキシングさせて裏漉しします。
 出来上がってから、それらを持って厨房に向かいます。フィーさんにはピッカンテを持ってもらいました。

「おや、もう出来上が……」
「どうしました、料理ちょ」

 マリウスさんが僕を見たら何故か一時停止してしまい、その後ろからライガーさんが覗き込むと同じように僕を見た途端固まっちゃった。
 ほぼ絶対だと思うけど、僕が手にしてるタバスコでも青い方を見てびっくりしたのかも。きっと、ジェノベーゼの時より驚いたんだろうなぁ。

「な、何なのそれ……」

 すぐに復活されたのはライガーさんで、やっぱり僕が手にしてる青いタバスコに指を向けてきた。

「調味料です」
「ま、まさかカラナでもかなり辛味の強いアクアスの⁉︎」
「これしか見当たんなかったらしいから、カティア作っちゃったんだよねー」
「………生を使う事がそうそうありませんのでほとんどを乾燥させてましたが」

 マリウスさんは若干顔色を青くしながら息を吐いた。

「それをピッツァにどう使われるのでしょう?」
「ずっと食べてると飽きが出やすいですし、少し引き締めてくれるんです。ほんの一、二滴かけるだけで全然違います」
「なるほど、味変えにですか。しかし、何故二つも?    フィー様の方にも違うようなものがありますが」
「フィーさんの方はリンネオイルに漬け込んだもので、僕が持ってるのはお酢がほとんどです。色違いなのは生と乾燥とどっちも作ってみたので」

 興味はあるようだから渡してみると、マリウスさんは天井の魔法灯にかざして透かすように観察し出した。

「こうして見る分には美しいですが、これがすべてカラナ……ですか」
「味見はマリウスさん達の分を作ってからにしましょう」
「そ、そうですね」

 どもる辺り、青いのはあんまり試したくないようだ。
 まあ、無理もないけれど。
 とにかくシカゴピッツァの方に移ることにして、調理は僕とフィーさんが。セリカさんには引き続きクラウの抱っこと見学に。

「今日はミービスさんのところで作ったのとは具材を変えてみます」

 ソースはミートソースを作ってもらいました。
 こっちじゃ、ロシッタソースって名前で前にお昼を食べた時に知った。とっても美味しいミートソースではあるけれど、味付けは僕がお願いしたちょっと濃いめにしてもらいました。

「四角パンの内側にこのソースをたっぷり塗って、ルーストの角切り、茹でたオレジャザ(ほうれん草)、カッツを交互に入れて詰め込んでいきます」

 ふたギリギリのラインに来たら、少しミートソースをかけて仕上げにトマトスライスでふたをする。

「これを天板の上に乗せて、釜で四半刻様子を見ながら焼けば完成です」
「これだけ詰め込んだら、たしかに焼けるのに時間がかかるし女の子じゃひとつも無理かも」
「でしたら、女性用にはもうひと回り小さめのがちょうどありますからそちらをお使いください」

 なので、ここからは手分けして食パンに材料を詰めて詰めて詰め込んで。
 全部のオーブン釜を使って焼いたり出したり保温結界をかけての繰り返し。

「あー、いーいにおいーーーー!」

 ミートソースとチーズの焦げる匂いが厨房内に充満してるので、フィーさんもだけど若いコックさん達の空きっ腹にも堪らないみたい。
 僕も、その一人ではあるけど。

「この調味料、全部試しますか?」
「そうですね。料理人として避けるわけにはいきません」

 ただ、時間も時間なので瓶の一割を別の小瓶に取り分けて、あとで使うことになりました。
 僕らは、ワゴンに人数分のシカゴピッツァを乗せて食堂に向かいます。

「帰国前にピッツァが食べれるなんて思わなかったよ!」

 ひゃっほいと飛び上がらんばかりにテンションが高いのはユティリウスさんだ。

「って、あれ?」
「いつもと大分違うな?」

 ユティリウスさんもサイノスさんも、今日作ったシカゴピッツァは知らなくて当然だから疑問に思うのは無理もない。知ってるのは、セリカさん以外だとエディオスさんだけだ。
 そのエディオスさんは僕が机に置いたタバスコ達を見て引き攣った表情になっていました。

「な、なんだその青いの⁉︎」
「ずっと忘れてたんですが、ピッツァの味変えに欠かせない調味料です」
「味変え?」
「あら、タバスコ?   そっちの薄い赤は見たことがないけれど」
「イタリア料理屋だと出すとこは出してますよ?    オーリオ・ピッカンテと言います」

 ファルミアさんにはピッカンテの方は馴染みがなかったようだ。
 ファミレスでも需要していると言うとやっぱりタバスコが主流だし、イタリアレストランでも置いてあるかどうかはお店による。
 タバスコ達もだけど、保温の結界で熱々なままのシカゴピッツァを皆さんにお配りします。

「ミービスじゃひと切れだったのが、今日は丸ごと食えんのか!」
「これどーゆーピッツァなのカティ?」
「シカゴピッツァです。シカゴは蒼の世界だと神王国規模の大きい国の中の都市の名前で、地元じゃスタッフドピッツァだったり、ディープディッシュピッツァとか言われてます」
「アメリカ独特のピザね?    直訳は深皿のピザ。生地もいいけれど、パンでも出来るなんて知らなかったわ」
「簡単ですよ?   白い部分を少し残しながらくり抜いて、ソースを塗ってから具材を交互に詰めて釜で焼くだけです」
「詳しい調理法はまた後で教えてちょうだいな」
「はい」

 とりあえず冷めないうちにと食べることに。
 だけど、今日はタバスコ達も使って欲しいので食べながら説明することにした。

「ほんの一、二滴かけるだけで全然違うんです。薄い赤の方は酸味がないんですが、他の二つはお酢と混ぜ込んであります」
「青いのはアクアスか?」
「ライガーさんが言ってましたが、結構辛いんですよね?」
「俺には大したことはないが」
「「「ゼルだけ」」」

 口を揃えられたのはエディオスさんとヴァスシード国王夫妻でした。
 他の人達もしきりに頷いたが、セヴィルさんは『そうか?』と首を傾げるだけでした。
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