【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第六章 実り多き秋の騒動

208.採点、とパンケーキの食べ方

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 ◆◇◆






 ティラミスにひと手間を加えて、僕が作る方も上手く出来たので片付けもしてから表に戻ります。
 イシャールさんとジェイルさん、何故かチェイルで遊んでました。
 まあ、警備?する必要も特になかったし、暇だったろうから無理もないかな?

「お待たせしましたー」
「おお。ティラミスだけにしちゃ随分時間かかったな?」
「二回も同じものじゃと思ったので、僕は薄焼きケーキをふわふわにしたのを作りました」
「どんな……って、全然薄焼きじゃねぇだろ⁉︎」

 カイツさんと一緒にテーブルに置いたのは、カイツさんが作ったティラミスも添えたスフレパンケーキセットです。
 パンケーキの方は、ティラミスが添えてあるのでちょっと塩っぱめのリコッタチーズ入り。
 リコッタチーズはカッテージチーズと作り方はほとんど同じ。そのチーズは、カイツさんがメレンゲに苦戦してる間に作りました。
 カッテージもだけどこれを広めていいかまだ判断されてないから、こっそり急いで作ったので見られてないはず。
 さておき、デザートプレートは全員分用意したので、僕も一緒に食べます。
 と言うより、ちゃんとカイツさんの試食しないと合格点をあげられない。
 主に大人のイシャールさん達が採点でも、このお城でティラミスを伝えたのは僕だもの。

「ケーキの方には、蜂蜜にバターを合わせたものやココルルのソースもどうぞ」

 ソースはちょっと色々用意してみた。
 バリエーション豊富がいいのはもちろんだけど、子供の僕以上にメレンゲ作るのが遅かったカイツさんを見ながら動いてたら、ジャムソースやフルーツ盛りなども出来ちゃった。
 なので、パンケーキ屋さんのセットメニューくらい豪華になってしまいました。
 ツッコミ親友や先輩方に、ピッツァ以外も勉強だ!とかで休みの度に行列に並んでまで食べた記憶がここで役に立つとは。
 あれも美味しかったから、似た作り方を調べて家でも作ってたので今日も披露出来たわけです。

「……崩れそうだが」
「メレンゲをたっぷり使って焼き上げたからですね」

 ジェイルさんは期待と崩すのが怖い不安が混ざった目でパンケーキを見つめていらした。
 カラクリを教えると、イシャールさんは仕組みがわかったのですっきりされたのかニヤリと口端を上げられた。

「こりゃ、焼き時間かかるやつか?」
「そうですね。八半刻くらい必要です」

 スフレパンケーキの欠点って、生地によるけど大体15分以上かかってしまうのだ。
 これは、中層でも下層でも出しにくいだろうから、イシャールさんもやりたいとは言わなかった。

「とりあえず、食べましょう」
「そうだな」
「いただこう」
「ど、どうぞ……」

 カイツさんは緊張が高まってきたようで、歯ががちがち言い出して顔色が青くなっていく。
 まあ、無理もないです。
 イシャールさんはここの料理長でもあるけど、お貴族さんの中じゃトップクラスのお家柄だし、ジェイルさんも少し聞いたがシャルロッタさんとは違う伯爵家の次男坊さんだって。
 だから、当然舌は常人以上に肥えている上にこのお城でも毎日美味しいものを食べ慣れてるから、評価は厳しいだろう。
 僕は一応調理師志望で、ずっとちっちゃい頃から頑張って作り続けてたのと実務経験があるから、評価はまずまずもらえてるだけだ。
 あとは、まったく知られてない料理と言う物珍しさ。
 そして、今回はその料理を食べた上でほぼ素人同然の普通の人が作った。
 お遊びではないけど、カイツさんがきちんと基本を出来てたら合格点をあげれるのだ。
 僕も、妥協はしないでおこう。

(パンケーキは後で、まずはティラミス)

 手順とかはずっと見てたけど、悪くはなかった。
 料理からしばらく離れてるところはあっても、体は覚えてたみたいでとりあえずの基本は出来ていた。
 さて味は、と少し大きめに用意したスプーンでひとすくい。
 まずは、ビスケットの層じゃなくココアパウダーとクリームのとこから。

「……ちょっと固いですね」

 クリームの部分が少し。
 原因は、きっとメレンゲの固さ加減。
 出来具合について今回はアドバイスしなかったのは、この人の力量を見ておきたかったからだ。
 僕が言うと、ジェイルさんやイシャールさんも頷いた。

「一回目っつーとこを考慮すりゃ、悪くはねぇがあくまで家の中で出せるとこだな」
「少し前に出されたのに比べると、舌触りが気になってしまう」

 僕らの感想に、カイツさんの顔色が更に悪くなるも、自分でも確かめようとスプーンを取って、自分の前に置かれたティラミスをすくってひと口。
 いっぺんに飲み込まず舌の上で確かめてるのかほっぺがもごもご動いてた。

「……カティアちゃんのと、全然違います」
「その違いがわかりゃ、いい。あの泡立てる工程は要だ。魔法省のお前達の考え方でもわかるだろ?」
「ええ……」

 一応、卵なしの方も教えたんですが、カイツさん自身卵入りのが気に入ってしまい、作るならこっちがいいと頼まれたので教えたんです。
 ビスケットについては、悪くはなくてもメレンゲの加減は同じものを使ったから少し食感が落ちてしまってた。

「けどまあ、見た目はほぼ合格点やってもいい。あとは回数こなせ」
「は、はい!」
「じゃあ、ケーキの方もどうぞー」

 ここで待ってました!とジェイルさんもですが、イシャールさんも飛びついた。
 ただ、ケーキにナイフを入れた時の柔らかさには異常に驚かれた。

「これマジで焼いたのか⁉︎」
「泡のような感じだが……」
「じっくり焼きましたから大丈夫です!」
「……うわっ、ほんと泡みたいだ⁉︎」

 カイツさんもナイフを差し込んだだけで驚いてしまってた。
 収拾がつかないので、僕がまずひと口食べることに。
 たっぷりのハニーコームバターとホイップにチョコソース、なんて手作りだから出来る食べ方でパンケーキをぱくり。
 ふわ、じゅわっと溶けるような食感がたまらなく、粉気は少なくて軽いからいくらでも食べれそう。
 甘いのと塩っぱい味が交互にやってきて、舌の上で踊ってるような感じ。ひと口食べたら、次も食べたくなってきたので今度はちょこっと添えたイチゴジャムとハニーコームバターで食べる。

「……なんつー幸せそうに食うんだよ。そんなん見せられたら食いたくなるじゃねぇか」
「見てるのが毒だ。いただかせてもらう!」

 イシャールさんが苦笑いすれば、ジェイルさんは早速食べ出した。食べ方は僕を真似してみれば、即ほっぺが真っ赤になってしまうくらいの衝撃だったみたい。
 ひと口食べたらどんどんどんどん食べ進めていく。
 それを見てからイシャールさんやカイツさんも続いた。

「うっめ⁉︎   マジで泡みてぇだ!」
「甘いのに、塩っぱいのも合うなんて……」
「これ、実は食事にも出来ますよ?」

 サラダ風とか、お肉がっつりとか。
 ツッコミ親友はデザートもだが、食事系も好きでよくチーズハンバーグセットとかやってたっけ?

「だと、ハンブルクと合わせてもいいってわけか?」

 こっちのハンバーグはドイツ語のハンバーグ風と同じ呼び方らしい。
 しかし、さすがイシャールさん。すぐにその答えに辿り着くとは。

「薄い普通のでも美味しいですよ」
「中層ならそれでいいな?   下層だとこっちで出してもいいだろうが、待ち時間長いから仕事響く」
「調理場ですか?」
「いや、女中や男でも甘いもん好きな連中がだ」

 ティラミスでさえ、まだまだ完売が続くほどリピーターがすごいらしいのに、このスフレパンケーキの食べ方を色々教えたら、行列出来るだけで済まないってことか。
 たしかに、街中ならいざ知らず、ここあくまでお城の中だもの。
 なので、スフレパンケーキはやめてパンケーキの食べ方を僕の覚えてる範囲でお教えすることになった。
 ジェイルさんはもっと甘い物が食べたいらしいが、蜂蜜系が好きなら。

「樹液を加工した甘いシロップってありますか?」
「なんだそりゃ?」

 やっぱり、メープルシロップはないようだ。
 けど、わからないことはフィーさんか、文通してるファルミアさんに聞こうと頭の片隅に置こうとしたんだけど。

「カティア嬢、それは薄焼きケーキが更に美味になるのか?」
「え、あ、は、はい……美味しいです」

 ジェイルさんが食いついてきたので、とりあえず答えた。
 そうしたら、いきなり目の前で識札一式を取り出して、札に書き込んでから休憩室の扉を開けたら中型の鳥のなった札を飛ばしてしまった。

「え?」
「我が領地だけでも探させる!」
「おっ前、甘いもんには目がねぇしなぁ」

 今日で二回目だけど、ジェイルさんの甘い物への探究心が逆に辛い物好きのセヴィルさんに似てるなと思いました。

「そういや、カティア。ティラミスに少しココルル入れたのはなんでだ?」

 札を見送ってからまた食事の席に戻ると、イシャールさんがそう聞いてきた。

「ふふ。味はどうですか?」

 あとで加えたひと手間は、カイツさんと包丁で砕いたチョコだ。

「グレイルとは違った女向きだな。つか、コパト使ってんならココルルも合わないわけがねぇ」
「コフィーじゃなくて、ココルルのケーキに取り替えるのもありです」
「マジか!」

 果物だけのティラミスもあるが、今回は言わないでおこう。
 増えすぎると大変になるのは、イシャールさんだからだ。シャルロッタさんも反対しないと思うけど、激務な上に畳がけしちゃったら体壊しちゃうかもしれないので。
 パンケーキの食べ方くらいなら、ビュッフェスタイルの中層でも対応は出来るだろうからね。

「カイツ。お前んとこは一応バルだろ?」
「あ、は、はい」
「なら、増やすのはティラミスだけにしとけ。下手に増やし過ぎたら、バルじゃなくてカフィー扱いになんだろ?   親父さんの店なんだから、決めんのは親父さんだろうが」

 既に一回カフェ状態になったから、カイツさんもはっとされてから少し表情を引き締めた。

「はい。親父にも食べれる味にさせてから、家族で決めます」
「よし。そんなら、あと一回は俺が見てやる。カティアじゃ、遠慮が出ちまうからなぁ?」
「へ?」

 カイツさん、頑張ってください。
 僕は心の中で合掌しました。
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