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第六章 実り多き秋の騒動
226.神の本邸
しおりを挟むトテトテ、
ポテポテ、
ベショッ‼︎
男の子のお出かけ着?みたいなきっちりしたのを着たヨークシャテリア君は、フィーさんの前に着いた途端いきなり盛大に転けた!
「だ、大丈夫⁉︎」
僕が慌ててかけ寄ろうとしたら、ヨークシャテリア君はぴょこっと起き上がった。
「いつものことですので、大丈夫ですぞ!」
ヨークシャテリア君はしっかり立ち上がると、服に付いた土ぼこりをポンポンと肉球がある手ではたいた。
声は、犬の口らしいところが毛に覆われててモゴモゴと動いてるだけって器用な……。
隣にいたフィーさんは大きくため息を吐いた。
「ディックはいっつも止まる前に転けちゃうんだよねー」
だから、フィーさんは特に何も言わなかったんだ?
後ろの皆さんも、このヨークシャテリア君のディック君も行動を見ても特に何も言わないのは、毎回だからか。
「相変わらずだな、ディック」
「おお、サイノス様! 大変ご無沙汰しておりますぞ!」
彼の前に来たサイノスさんが、落としきれてないディック君の服に付いた土を払ってあげたら、ディック君は何故か敬礼。
「その癖も相変わらずだよなぁ? まあ、来るのは結構久しぶりだけどな」
「実に100年以上はお顔を見ておりませんゆえ!」
君付け呼ぶ前で良かった!
このヨークシャテリアさんは僕よりはるかに歳上の聖獣さんだったんだ。
「此度はお初めての方もいらっしゃいますな! フィー様より伺っておりますぞ! わたくしめは、コボティのディックと申します。よろしくですぞ、新しき神獣殿、そのご主人のカティア様!」
「ふゅふゅぅ!」
「よ、よろしくお願いします!」
ディックさんが直角にお辞儀しながら自己紹介してくれたので、僕もクラウを抱っこしながらつられて深くお辞儀を返した。
「ふーゅゆぅ!」
「あ、えっと……この子はクラウって言います」
「天上の綿帽子、ですな! 覚えましたぞクラウ殿!」
「ふゅゆぅ!」
会話、してるのかクラウはとってもご機嫌さんだ。
毛?繋がりだから親近感とか持てたのかな?
「ディック、ご飯の支度はもう大丈夫ー?」
「もちろんですとも、フィー様!」
「じゃ、行こっか?」
「皆さまのお荷物は、お部屋にお運びしましたので!」
「あ、んじゃセリカんとこ教えてくれよ」
エディオスさんが声を上げても、腕の中にいるセリカさんはまったく起きない。
ディックさんはそれを見ると、またビシって音がなるくらい敬礼をしました。
「では、わたくしめがご案内させていただきます」
「食事の方は僕が案内するよ。アナとサイノスはちょっとエディについてって?」
「は?」
「お、そうか」
「エディお兄様がセリカに手を出しかねませんものね?」
「は、はぁ⁉︎」
アナさんの一言に、エディオスさん再びお顔真っ赤。
「つか、あ、アナ……お、お前……なんで知って⁉︎」
「サイお兄様から少しだけ伺いましたの」
「サイノス⁉︎」
「アナが自分で気づいたから教えたまでだって」
それでさっき小屋に帰った時、アナさんあんまり驚いてなかったんだ?
エディオスさんの気持ちについては薄っすら気づいてたのかなって思ってたけど、そうじゃなかったみたい。
「セリカのためにも、御付きしますわ!」
「そうだな。女の着替えとかはアナの方がいい」
「手とか出すかっての⁉︎」
「どーだか?」
「案内してくださいませんか、ディックさん」
「かーしこまりました!」
無理にサイノスさんがエディオスさんの背を押しながら、皆さんは先に行ってしまわれた。
残されたのは、フィーさんとセヴィルさんとクラウを抱っこしてる僕だけ。
「キアルを受け取ってないのは良いのか?」
「まだ半日経ってないし、帰ってきてからでいいよ。あ、君達のは先にもらおうか?」
「ああ」
セヴィルさんが魔法袋から取り出したキアルを受け取ってから、フィーさんは行こうと前を歩き出した。
けど、玄関までがやっぱり遠い。
「入り口って遠いんですか?」
「あともう少し。エディ達の宮城よりは近いから大丈夫」
「俺の実家よりも広いのだがな……」
「僕の所有地だから、土地は結構あるしねー?」
「この国の四分の一もあるって聞きました」
「うん。でも、ほとんど森だよ? 小屋もあそこだけだし、それを除けば絶滅危惧種の聖獣や神獣の保護区って言ってもいいから」
なんか、不穏なワードが出てきました。
聞こうにも、いつのまにか玄関口に着いてしまったので一時中断。
エディオスさんの執務室とかに負けないくらいの豪華な扉だけど、フィーさんは自分のお家だから勢いよく開けて僕らを中へ入れてくれました。
「た、高い! 広い!」
「ふゅぅ!」
エディオスさん達のお城で豪華な装飾は見慣れてきたつもりだったが、ここは段違いでした!
三階建てどころか四階建てくらいの天井の高さに、大理石みたいな石造り。
その大理石の天井からぶら下がってるシャンデリアは、土台は銀だろうけど鎖状の石がクラウの水色オパールの目のように輝いている。
床は黒絨毯だったけど、少しキラキラした光沢があって綺麗。おまけにふっかふか。
「ま、一応創世神って神の役職ついてるからこれくらいはねー?」
「公爵家でもここまでないが」
「ギルは倹約家だしね?」
誰のこと?と首を傾げたら、セヴィルさんに父親のことだと言われて思い出しました。
一度しかお会いしていない、セヴィルさんそっくりのギルハーツさん。
次会う事はしばらくないだろうけど……もし会う時に奥さんのグラウディアさんもセットだろうなぁ。
あの大き過ぎるお胸に抱っこなんて、もう嫌です。
「ここ100年近くで、家の中もだいぶ広くなったな」
「しばらく帰ってないらしいけど、カティア連れてったら?」
「なっ」
「フィーさん何言うんですか⁉︎」
「だーって、御名手の事実は言えなくてもディア達カティアが気に入ってるじゃん。それと、表向きはセヴィルが後見人って事になってるんだし、一度くらいいいんじゃない?」
だからって、婚約者さんのご実家にご挨拶?
(無理無理無理、色んな意味で無理!)
ぷるぷる首を振ると、フィーさんはため息をつきながら歩き出した。
「たまには、城以外のとこも行っていいのにー」
「へ?」
「セヴィルと遠出出来る機会も、頻繁には出来ないじゃん? なら、セヴィルの家くらいいいんじゃないかと思ってさー?」
そう言えば、ほとんど篭りがちな僕はお庭くらいしか遊べない。
セヴィルさんはほぼ毎日お仕事だったし、今回は少し特別。
次いつ遠出出来るかなんて、フィーさんの言う通りわからない。
「で、でも、僕嘘つきにくいですし……」
「そのフォロー役にセヴィルがいるじゃない?」
「その言動では、帰る事が決定してるように聞こえるが」
「お試しで連れて行きなよ?」
ね、と可愛らしく首を傾けるのに、セヴィルさんは大きくため息を吐いた。
「……せめて、次の休暇が決まりそうな時だぞ」
「い、いいんですか?」
「……実は、この前の収穫祭以降に母上から数え切れぬほどの識札が届いてな。すべて、父上と一緒になってカティアを連れて来いとあった」
「ほーら、ディア達の性格なら呼びたがるじゃない?」
どうやら、外堀は既に埋まってたようです。
それと、立ち止まってたらいけないとフィーさんに言われたので、ディックさんみたいに転けないよう黒絨毯の上をゆっくり歩くことに。
「あ、フィーさん」
「何ー?」
「ずっと気になってたんですけど、フィーさんの服やここの装飾に黒いのが多いのは『黑の世界』の管理者さんだから?」
セリカさんに教わった一般的なフィーさんの概要について、そこは知られていなかったからだ。
「いーとこ気づいたね? そう、僕が身につけるものに黒が多いのは『黑』が関係している。僕の身体の大部分の色もそうだから、神聖な色として扱われてるけど」
「特にフィルザス神くらいの漆黒は、人間にある場合異様に注目されるしな」
「セヴィル、学園にいた頃はそう言う意味でも大変だったしねー?」
「うるさい」
わかりやすく言えば、黒髪の集団の中に金髪がいれば自然と目が行くし話したがるってとこかな?
それと、セヴィルさんは超絶美形さんだから余計に大変だっただろう。特に女性とか。
(……お城では、女性に怖がられてたけど昔ってどうだったのかな)
そう言う日常的な事については、この間のデートの時特に話してもらっていない。
セヴィルさんにとって思い出したくない事だから、なかっただろうけど。
少し、胸がもやもやする。
「ふーゅぅ?」
「カティア、どうした?」
「え」
クラウが声を上げたので前を見れば、セヴィルさんのお顔がアップで目の前に。
当然、顔に熱が集まっていく!
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