231 / 616
第六章 実り多き秋の騒動
231.諦めてた想い(途中別視点有り)
しおりを挟む◆◇◆
バチっ‼︎
「へ?」
「ふゅぅ⁉︎」
お話が終わってアナさんに声をかけようと思ったら、先にセリカさんがアナさんの頬を引っ叩いた⁉︎
「せせせ、セリカさん⁉︎」
「それで想いを封じるのなら、私はどうなるの⁉︎」
「ふゅ?」
セリカさんが叫んだ言葉に、僕は息を詰めた。
「セリカ……?」
「私は……もう二度と叶わないと思ってた。けど、皆さんのお陰で、エディお兄様の近くに……いてもいいって……」
アナさんは叩かれてた頬を押さえてたけど、セリカさんはボロボロと大粒の涙をこぼした。
(僕も贅沢だけど、セリカさんはもっと辛かったよね……)
僕とエディオスさんが見つけなきゃ、ミービスさん達のところから離れるきっかけも出来なかった。
それがなかったら、記憶を抱え込んだままあの街で過ごしてたはずだ。
比べちゃいけないだろうけど、話を聞いた限りアナさんは自主的にサイノスさんを避けている。
「傷については、無理なかったと思うけど……サイノスお兄様、気にしてた?」
「……全然、だわ」
僕も思い出してみるが、他の傷痕と同じく体の一部でしかない感じ。
「……全然だったから、余計に悩んでしまったのよ」
「と言いますと?」
「あれ以降傷は増えられる一方ですが、基本向こう傷なせいか誇らしげでしたわ。だからか」
「「だからか??」」
「ふゅ?」
「全く気にされぬところをお見かけしますと、余計にもやもやしますのよ‼︎ あの傷も淑女には始め驚かれていても男らしいとか!」
アナさん、キレちゃいました。
「輿入れのお話はお父様達がすべて蹴ってくださった代わりに、統括補佐として就けるように頑張りましたけれど……あの方、わたくしが一人前になりましても一向に態度を変えませんのよ⁉︎」
赤い頬はそのままに、アナさん拳を強く握り締めるほど怒っちゃいました。
これには、怒ってたセリカさんも涙を引っ込めて僕の隣にやってきた。
「……どーすればいいでしょう?」
「戻って来てからまだ数度だけど、たしかにサイノスお兄様はいつも通りね」
「ヘタレ、では?」
「ないと思いたいけど」
こればっかりは、僕達で考えてもわかりません。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セヴィル視点)
「そのあごの傷が出来た以降に、アナから誘われなくなったぁ?」
「……ああ」
いつだったか、かと思い返すも向こう傷を作るのが常だったこいつなので、俺やエディオスも思い出しにくい。
風呂も上がってからフィルザス神の部屋に招かれた俺達男は、エディオスよりまずサイノスがいいだろうとフィルザス神が言ったので語り出した。
「今も変わんねぇが、茶とか遠出とかそれ以降一切誘われんくなったんだよ……」
「期間は?」
「……約200年」
「……マジで災難だったな、その傷」
経緯は聞けたが、女子の目の前で血を見せては不用意に近づかなくなるだろう。
それと、年の差はあれど自分がきっかけで想う相手がそうなれば……アナとて同じなはずだ。
こう考えられるようになったのも、俺の近くにカティアが来てくれたお陰だが。
「サイノスに傷なんて今更なのにねぇ?」
言いにくいことを、相変わらずさらっと言い放つなこの創世神。
「……その今更だから、避けられる理由がわかんねぇんだよ」
「お前に言われるまでアナが避けてるとか気づかなかったな?」
「まあ、二人とか俺が声かける以外は普通だ。今は王女より統括補佐だから会話は多少するようになったが」
「ほとーんど、仕事でしょ?」
「お前、サイノスに協力すんのかどっちだ?」
「協力するするー」
それどころか、アナとサイノスが御名手だと知ってて煽っている始末だ。
俺もカティアから聞かされるまで知らなかったが、エディオスの方もどうなるか。
フィルザス神は今更にしても、カティアもよくこの事実を抱えたまま過ごせてたものだ。
「ってかさ? 君はいつからアナを意識するようになったのサイノス?」
「……知らんかったのか?」
「僕もだけど、セヴィルは最近まで気づいてなかったし?」
たしかに、エディオスにあの時告げられるまでは俺も知らないでいた。
元々、そう言う事には興味がないように振舞ってたせいもあるだろうが。
「……きっかけ、っつってもあいつが俺を誘わなくなった時か?」
「「ほう」」
「なんでそんな寄るんだよ」
「気にしないで?」
「俺だって正確には聞いてねぇしな?」
俺はしてないが、エディオス達は興味津々になってサイノスに近づいていた。
奴は気にするなと言われても照れ臭いようで、湯上りとは別に頬が赤くなってた。
「エディ達も誘わなくなってすぐに幼等部行っちまっただろ? 離れて気づいたんだが、その……いわゆる」
「距離を置いてから自覚しちゃったんだ、かーわいー!」
「可愛くはねぇだろ」
サイノス程の巨体を可愛いとは思えない。
カティアだったら、ひょっとすると言い出すかもしれないが彼女はもう女性用の部屋のはずだ。
(……湯上り、のカティア?)
今まで上層だと部屋が反対方向なために遭遇する機会はなかったが、あの幼児の姿はともかくセリカほどの女性になった時はどうなるか。
妄想がおかしな方向へと行きそうになったので、すぐに追い払った。
「けど、そっから200年くらい? お前六大侯爵家の一員だからゼルより少なくても女に群がれただろ? 全部蹴ってたのか?」
「お前さんも人の事言えないだろーが」
「俺は自覚する前きょーみなかっただけだしよ」
たしかに、俺もだが見目が悪くない輩どもは婚礼に関する事案をすべて蹴っていた。
俺はカティアともう二度と会えないと諦めていたから、縁戚から養子は取ること以外独り身でいると決め込んでいた。
その決意も、彼女が来てくれたお陰で全部白紙に出来たが。
「考えたらー? 君達、ほとんどロリコンだよねぇ?」
「「なんだそりゃ?」」
「蒼の世界の言葉なんだけどー、所謂幼女趣味?」
「「アホか⁉︎」」
「…………」
現状、俺だけはそう言われてておかしくない。
別に彼女は仮の姿をしているだけで、本来は成人した女性だ。
その事実を知ってるから気にはしてなかったが、彼女はどう思ってるのだろう。
「あいつらは、立派に成人してんだろーが⁉︎」
「エディは自覚したの最近でもぉ、サイノスやセヴィルはねぇ?」
「……頼むからこれ以上凹ませんでくれ。見込みないように聞こえてたまらん」
それはないと言いにくいと、この時思わずにはいられなかった。
「あ、セヴィル。あとで話したいことがあるんだー」
「俺に?」
エディオスでなく、俺を指名するのは珍しい。
だが、別に拒む必要もないので頷くことにした。
21
あなたにおすすめの小説
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる