【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第六章 実り多き秋の騒動

231.諦めてた想い(途中別視点有り)

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 ◆◇◆









 バチっ‼︎






「へ?」
「ふゅぅ⁉︎」

 お話が終わってアナさんに声をかけようと思ったら、先にセリカさんがアナさんの頬を引っ叩いた⁉︎

「せせせ、セリカさん⁉︎」
「それで想いを封じるのなら、私はどうなるの⁉︎」
「ふゅ?」

 セリカさんが叫んだ言葉に、僕は息を詰めた。

「セリカ……?」
「私は……もう二度と叶わないと思ってた。けど、皆さんのお陰で、エディお兄様の近くに……いてもいいって……」

 アナさんは叩かれてた頬を押さえてたけど、セリカさんはボロボロと大粒の涙をこぼした。

(僕も贅沢だけど、セリカさんはもっと辛かったよね……)

 僕とエディオスさんが見つけなきゃ、ミービスさん達のところから離れるきっかけも出来なかった。
 それがなかったら、記憶を抱え込んだままあの街で過ごしてたはずだ。
 比べちゃいけないだろうけど、話を聞いた限りアナさんは自主的にサイノスさんを避けている。

「傷については、無理なかったと思うけど……サイノスお兄様、気にしてた?」
「……全然、だわ」

 僕も思い出してみるが、他の傷痕と同じく体の一部でしかない感じ。

「……全然だったから、余計に悩んでしまったのよ」
「と言いますと?」
「あれ以降傷は増えられる一方ですが、基本向こう傷なせいか誇らしげでしたわ。だからか」
「「だからか??」」
「ふゅ?」
「全く気にされぬところをお見かけしますと、余計にもやもやしますのよ‼︎    あの傷も淑女には始め驚かれていても男らしいとか!」

 アナさん、キレちゃいました。

「輿入れのお話はお父様達がすべて蹴ってくださった代わりに、統括補佐として就けるように頑張りましたけれど……あの方、わたくしが一人前になりましても一向に態度を変えませんのよ⁉︎」

 赤い頬はそのままに、アナさん拳を強く握り締めるほど怒っちゃいました。
 これには、怒ってたセリカさんも涙を引っ込めて僕の隣にやってきた。

「……どーすればいいでしょう?」
「戻って来てからまだ数度だけど、たしかにサイノスお兄様はいつも通りね」
「ヘタレ、では?」
「ないと思いたいけど」

 こればっかりは、僕達で考えてもわかりません。










 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(セヴィル視点)







「そのあごの傷が出来た以降に、アナから誘われなくなったぁ?」
「……ああ」

 いつだったか、かと思い返すも向こう傷を作るのが常だったこいつなので、俺やエディオスも思い出しにくい。
 風呂も上がってからフィルザス神の部屋に招かれた俺達男は、エディオスよりまずサイノスがいいだろうとフィルザス神が言ったので語り出した。

「今も変わんねぇが、茶とか遠出とかそれ以降一切誘われんくなったんだよ……」
「期間は?」
「……約200年」
「……マジで災難だったな、その傷」

 経緯は聞けたが、女子の目の前で血を見せては不用意に近づかなくなるだろう。
 それと、年の差はあれど自分がきっかけで想う相手がそうなれば……アナとて同じなはずだ。
 こう考えられるようになったのも、俺の近くにカティアが来てくれたお陰だが。

「サイノスに傷なんて今更なのにねぇ?」

 言いにくいことを、相変わらずさらっと言い放つなこの創世神。

「……その今更だから、避けられる理由がわかんねぇんだよ」
「お前に言われるまでアナが避けてるとか気づかなかったな?」
「まあ、二人とか俺が声かける以外は普通だ。今は王女より統括補佐だから会話は多少するようになったが」
「ほとーんど、仕事でしょ?」
「お前、サイノスに協力すんのかどっちだ?」
「協力するするー」

 それどころか、アナとサイノスが御名手だと知ってて煽っている始末だ。
 俺もカティアから聞かされるまで知らなかったが、エディオスの方もどうなるか。
 フィルザス神は今更にしても、カティアもよくこの事実を抱えたまま過ごせてたものだ。

「ってかさ?   君はいつからアナを意識するようになったのサイノス?」
「……知らんかったのか?」
「僕もだけど、セヴィルは最近まで気づいてなかったし?」

 たしかに、エディオスにあの時告げられるまでは俺も知らないでいた。
 元々、そう言う事には興味がないように振舞ってたせいもあるだろうが。

「……きっかけ、っつってもあいつが俺を誘わなくなった時か?」
「「ほう」」
「なんでそんな寄るんだよ」
「気にしないで?」
「俺だって正確には聞いてねぇしな?」

 俺はしてないが、エディオス達は興味津々になってサイノスに近づいていた。
 奴は気にするなと言われても照れ臭いようで、湯上りとは別に頬が赤くなってた。

「エディ達も誘わなくなってすぐに幼等部行っちまっただろ?    離れて気づいたんだが、その……いわゆる」
「距離を置いてから自覚しちゃったんだ、かーわいー!」
「可愛くはねぇだろ」

 サイノス程の巨体を可愛いとは思えない。
 カティアだったら、ひょっとすると言い出すかもしれないが彼女はもう女性用の部屋のはずだ。

(……湯上り、のカティア?)

 今まで上層だと部屋が反対方向なために遭遇する機会はなかったが、あの幼児の姿はともかくセリカほどの女性になった時はどうなるか。
 妄想がおかしな方向へと行きそうになったので、すぐに追い払った。

「けど、そっから200年くらい?   お前六大侯爵家の一員だからゼルより少なくても女に群がれただろ?   全部蹴ってたのか?」
「お前さんも人の事言えないだろーが」
「俺は自覚する前きょーみなかっただけだしよ」

 たしかに、俺もだが見目が悪くない輩どもは婚礼に関する事案をすべて蹴っていた。
 俺はカティアともう二度と会えないと諦めていたから、縁戚から養子は取ること以外独り身でいると決め込んでいた。
 その決意も、彼女が来てくれたお陰で全部白紙に出来たが。

「考えたらー?   君達、ほとんどロリコンだよねぇ?」
「「なんだそりゃ?」」
「蒼の世界の言葉なんだけどー、所謂幼女趣味?」
「「アホか⁉︎」」
「…………」

 現状、俺だけはそう言われてておかしくない。
 別に彼女は仮の姿をしているだけで、本来は成人した女性だ。
 その事実を知ってるから気にはしてなかったが、彼女はどう思ってるのだろう。

「あいつらは、立派に成人してんだろーが⁉︎」
「エディは自覚したの最近でもぉ、サイノスやセヴィルはねぇ?」
「……頼むからこれ以上凹ませんでくれ。見込みないように聞こえてたまらん」

 それはないと言いにくいと、この時思わずにはいられなかった。

「あ、セヴィル。あとで話したいことがあるんだー」
「俺に?」

 エディオスでなく、俺を指名するのは珍しい。
 だが、別に拒む必要もないので頷くことにした。
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