心の空が晴れる時

斎木涼

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1章 成瀬柊について

告白ごっこの真実

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中性的な顔立ちをした男は窓枠に手をかけ、ひょいと身を乗り出すと、軽やかに教室の中へ降り立った。

「いやあ、相変わらず飽きないね。毎回、違う相手で“告白ごっこ”?」

その言葉に、後輩の表情が強張る。
教室の外に隠れていた連中も、気まずそうにざわつき始めた。

「な、何言ってんだよ……!? 俺は本気で――」
「へぇ、本気なんだ?」

男はポケットからスマホを取り出すと、指をスワイプする。

「じゃあ、これをみんなに晒しても平気だよね?」

画面には動画が映し出される。

『好きです。付き合ってください。』
『……うん、いいよ。』

一年のイケメンが、照れたように微笑んでいる。
だが――

『マジで!? やっば、最高のリアクションじゃん!』
『え、マジで付き合う気だったんだ!?』
『ノリだって気づかなかったの?』

動画の外から、隠れていた男たちが飛び出してくる。
告白を受け入れた一年生の表情が、驚きから困惑へと変わっていく。

『ちょっと待って……どういうこと?』
『あーごめんごめん、これさ、ドッキリ企画なの! いやー、リアルにOK出すとは思わなくて、こっちがびっくりだわ!』
『…………』
『でもまあ、せっかくだし、付き合ってあげよっか? それとも、やっぱナシにする? あ、でも動画は残るけどね~。』
『…………』
『どうするどうする?』

一年生は呆然と立ち尽くし、動画はぷつりと切れた。

後輩は顔面蒼白になりながら、男のスマホを睨みつける。

「な、何だよ……それ……」
「え? 何って、君がやったことだけど?
…あ、か。」

男は肩をすくめながら、画面をもう一度スワイプした。

「ま、他にもあるけどね。」

別の動画が再生される。

『好きです。付き合ってください。』
『ごめん、俺そういう風に見えない。』
『……そっか。それは残念だな。』

そして――

『おい、断ってんじゃねぇよ!』

複数の影が飛び出し、告白を断った生徒に殴りかかる映像。

『は? マジで断るとか、ありえなくね?』
『こいつ、調子乗ってんな。』
『“大事な友達”の気持ち踏みにじるとか、ひどくない?』

殴られた生徒が、床に崩れ落ちる。

『……や、やめ……っ!』

バキッ――ッ!

鈍い音が響き、土下座を強要される姿。

「これ、さっきのとはまた別パターンか。うん、バリエーション豊富でいいね。」
男が気楽そうに言う。
「や、やめろ……それ、早く消せよ……!」

後輩は唇を震わせながら、スマホに目を釘付けにしている。
しかし男は、わざとらしく指を滑らせた。

「――あ、ごめん。また間違えて送っちゃった☆」
「なっ……!!?」

後輩はパニックになり、男のスマホを奪い取るように掴む。
画面を必死に確認し、何が起こったのかを確かめようとする。

そして――次の瞬間。

バンッ!

後輩は、怒りと恐怖の入り混じった表情のまま、
勢いよくスマホを床に投げつけた。
硬い床にぶつかり、教室中に乾いた音が響く。
そして、後輩は唇を噛み締め、顔を真っ赤にしながら怒鳴る。

「ふざけんなよ、てめぇ! 調子に乗るな! お前なんか、すぐに痛い目見せてやるからな!」
「へぇ、それは楽しみだね。」

男は飄々とした態度を崩さず、軽く肩をすくめる。
その様子に彼らは殴りかかろうとした。

「でもさ、今ここで暴力でも振るったら? “暴力の追加シーン”ってことで、さらに送信するだけだよ。」

後輩は拳を握りしめたまま、言葉を失った。

「……どうする? 本当に有名人になりたいなら、続けてもいいけど?」

その言葉に、後輩は歯を食いしばり、悔しさを滲ませながら男を睨みつける。
しかし、何も言えないまま――

「……っ、覚えてろよ!」

足音を鳴らし、教室を飛び出していった。

隠れていた仲間たちも、気まずそうにその後を追う。

教室に静寂が戻った。
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