2 / 7
1章 成瀬柊について
告白ごっこの真実
しおりを挟む中性的な顔立ちをした男は窓枠に手をかけ、ひょいと身を乗り出すと、軽やかに教室の中へ降り立った。
「いやあ、相変わらず飽きないね。毎回、違う相手で“告白ごっこ”?」
その言葉に、後輩の表情が強張る。
教室の外に隠れていた連中も、気まずそうにざわつき始めた。
「な、何言ってんだよ……!? 俺は本気で――」
「へぇ、本気なんだ?」
男はポケットからスマホを取り出すと、指をスワイプする。
「じゃあ、これをみんなに晒しても平気だよね?」
画面には動画が映し出される。
『好きです。付き合ってください。』
『……うん、いいよ。』
一年のイケメンが、照れたように微笑んでいる。
だが――
『マジで!? やっば、最高のリアクションじゃん!』
『え、マジで付き合う気だったんだ!?』
『ノリだって気づかなかったの?』
動画の外から、隠れていた男たちが飛び出してくる。
告白を受け入れた一年生の表情が、驚きから困惑へと変わっていく。
『ちょっと待って……どういうこと?』
『あーごめんごめん、これさ、ドッキリ企画なの! いやー、リアルにOK出すとは思わなくて、こっちがびっくりだわ!』
『…………』
『でもまあ、せっかくだし、付き合ってあげよっか? それとも、やっぱナシにする? あ、でも動画は残るけどね~。』
『…………』
『どうするどうする?』
一年生は呆然と立ち尽くし、動画はぷつりと切れた。
後輩は顔面蒼白になりながら、男のスマホを睨みつける。
「な、何だよ……それ……」
「え? 何って、君がやったことだけど?
…あ、君達か。」
男は肩をすくめながら、画面をもう一度スワイプした。
「ま、他にもあるけどね。」
別の動画が再生される。
『好きです。付き合ってください。』
『ごめん、俺そういう風に見えない。』
『……そっか。それは残念だな。』
そして――
『おい、断ってんじゃねぇよ!』
複数の影が飛び出し、告白を断った生徒に殴りかかる映像。
『は? マジで断るとか、ありえなくね?』
『こいつ、調子乗ってんな。』
『“大事な友達”の気持ち踏みにじるとか、ひどくない?』
殴られた生徒が、床に崩れ落ちる。
『……や、やめ……っ!』
バキッ――ッ!
鈍い音が響き、土下座を強要される姿。
「これ、さっきのとはまた別パターンか。うん、バリエーション豊富でいいね。」
男が気楽そうに言う。
「や、やめろ……それ、早く消せよ……!」
後輩は唇を震わせながら、スマホに目を釘付けにしている。
しかし男は、わざとらしく指を滑らせた。
「――あ、ごめん。また間違えて送っちゃった☆」
「なっ……!!?」
後輩はパニックになり、男のスマホを奪い取るように掴む。
画面を必死に確認し、何が起こったのかを確かめようとする。
そして――次の瞬間。
バンッ!
後輩は、怒りと恐怖の入り混じった表情のまま、
勢いよくスマホを床に投げつけた。
硬い床にぶつかり、教室中に乾いた音が響く。
そして、後輩は唇を噛み締め、顔を真っ赤にしながら怒鳴る。
「ふざけんなよ、てめぇ! 調子に乗るな! お前なんか、すぐに痛い目見せてやるからな!」
「へぇ、それは楽しみだね。」
男は飄々とした態度を崩さず、軽く肩をすくめる。
その様子に彼らは殴りかかろうとした。
「でもさ、今ここで暴力でも振るったら? “暴力の追加シーン”ってことで、さらに送信するだけだよ。」
後輩は拳を握りしめたまま、言葉を失った。
「……どうする? 本当に有名人になりたいなら、続けてもいいけど?」
その言葉に、後輩は歯を食いしばり、悔しさを滲ませながら男を睨みつける。
しかし、何も言えないまま――
「……っ、覚えてろよ!」
足音を鳴らし、教室を飛び出していった。
隠れていた仲間たちも、気まずそうにその後を追う。
教室に静寂が戻った。
0
あなたにおすすめの小説
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた
谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。
就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。
お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中!
液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。
完結しました *・゚
2025.5.10 少し修正しました。
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる