5 / 168
プロローグ
魔王城の日常
しおりを挟む
「暇だ」
魔王城の最奥に位置する大広間。
そこには純金の燭台に、緻密に編まれた絨毯、そして贅の限りを尽くされた重厚な存在感を放つ大きな玉座が奥に鎮座してある。
そこに頬杖をつき足を大きく広げているのは、何を隠そう世界を恐怖に陥れている魔王その人であった。
存在感を消すようにして傍らに佇むのは執事であるヤギ系魔族のアルファイン3世。
「暇、おおいに結構ではありませんか、魔王様。それは我々の支配が順調であることの顕れです」
「だがなアルファインよ、にしてももうちょっと何かあっても良くないか?」
「と申しますと?」
「先代の魔王が崩御なされて120年。我は頑張った、うん、超頑張ったよ魔族のために。一度は人類に滅ぼされかけた、各地へ散り散りになった魔族を一生懸命に集めて、もう一度世界征服目指さないかと、ひとりひとりに声かけてさ、そりゃもう売れない吟遊詩人の地方営業ばりに頑張ったよ。途中でさ、あれ魔王ってこんなんだっけ?って疑問に思ったこともさ、いまでは良い思い出、下積み時代あってこそ、部下から慕われるいい上司になれるんだもんな。でもさ、ちょーーーっとばかりさ、やり過ぎた感が否めないよね、この現状を見ると。だってさ魔族を盛り立ててさ、この地に根を張り安住を始めて早90年、毎日、毎日、この玉座に座って勇者待ってるんだよ、我。それって、なんかおかしくないか。世界を恐怖のどん底に陥れている魔王がさ、勇者を毎日毎日、皆勤賞で待っているんだよ、なんかおかしくない。だというのにさ、部下が優秀すぎるせいでさ、90年だーれも来たことないんだ、なんだか矛盾してるよね。もうさ、我ここで待つ必要なくない?部屋で寝てても良くない?魔王城の入り口についたら、誰か教えてくれればいいじゃない。マジで、いやマジで暇なんですよこれ、仮に勇者の策略だとしたら見事なもんだよ、効果抜群だよ!!!!」
執事のアルファインはヤギ顔をピクリとも変えることなく、魔王の白熱した捲し立てを聞き終え、一言発した。
「申し訳ありませんが、それが魔王の職務ですので」
「おーーい、変わろうぜアルファイン、お前が魔王やれよ。我、飽きたよ魔王!」
「いえ、私、戦闘向きではございませんので」
「戦闘力なんて必要ないよ、だってこないんだもん勇者、前回から120年も来てないんだもん。今代の魔王に必要なのは戦闘力じゃなくて忍耐力だよ!執事には忍耐力必要だろ、お前にぴったりじゃん!」
「忍耐力のない魔王様には執事は無理でございます」
「もぉぉぉーーー、あーーいえば、こーーいってーー!!じゃあ、命令だ交代しろ!!」
「嫌です」
どこぞの武器屋みたいに駄々をこね始めた魔王にきっぱりと拒否を示す執事。
魔王は「俺って本当に魔王だよな?」と約1時間ほど自らを疑問視することになる。
魔王城の最奥に位置する大広間。
そこには純金の燭台に、緻密に編まれた絨毯、そして贅の限りを尽くされた重厚な存在感を放つ大きな玉座が奥に鎮座してある。
そこに頬杖をつき足を大きく広げているのは、何を隠そう世界を恐怖に陥れている魔王その人であった。
存在感を消すようにして傍らに佇むのは執事であるヤギ系魔族のアルファイン3世。
「暇、おおいに結構ではありませんか、魔王様。それは我々の支配が順調であることの顕れです」
「だがなアルファインよ、にしてももうちょっと何かあっても良くないか?」
「と申しますと?」
「先代の魔王が崩御なされて120年。我は頑張った、うん、超頑張ったよ魔族のために。一度は人類に滅ぼされかけた、各地へ散り散りになった魔族を一生懸命に集めて、もう一度世界征服目指さないかと、ひとりひとりに声かけてさ、そりゃもう売れない吟遊詩人の地方営業ばりに頑張ったよ。途中でさ、あれ魔王ってこんなんだっけ?って疑問に思ったこともさ、いまでは良い思い出、下積み時代あってこそ、部下から慕われるいい上司になれるんだもんな。でもさ、ちょーーーっとばかりさ、やり過ぎた感が否めないよね、この現状を見ると。だってさ魔族を盛り立ててさ、この地に根を張り安住を始めて早90年、毎日、毎日、この玉座に座って勇者待ってるんだよ、我。それって、なんかおかしくないか。世界を恐怖のどん底に陥れている魔王がさ、勇者を毎日毎日、皆勤賞で待っているんだよ、なんかおかしくない。だというのにさ、部下が優秀すぎるせいでさ、90年だーれも来たことないんだ、なんだか矛盾してるよね。もうさ、我ここで待つ必要なくない?部屋で寝てても良くない?魔王城の入り口についたら、誰か教えてくれればいいじゃない。マジで、いやマジで暇なんですよこれ、仮に勇者の策略だとしたら見事なもんだよ、効果抜群だよ!!!!」
執事のアルファインはヤギ顔をピクリとも変えることなく、魔王の白熱した捲し立てを聞き終え、一言発した。
「申し訳ありませんが、それが魔王の職務ですので」
「おーーい、変わろうぜアルファイン、お前が魔王やれよ。我、飽きたよ魔王!」
「いえ、私、戦闘向きではございませんので」
「戦闘力なんて必要ないよ、だってこないんだもん勇者、前回から120年も来てないんだもん。今代の魔王に必要なのは戦闘力じゃなくて忍耐力だよ!執事には忍耐力必要だろ、お前にぴったりじゃん!」
「忍耐力のない魔王様には執事は無理でございます」
「もぉぉぉーーー、あーーいえば、こーーいってーー!!じゃあ、命令だ交代しろ!!」
「嫌です」
どこぞの武器屋みたいに駄々をこね始めた魔王にきっぱりと拒否を示す執事。
魔王は「俺って本当に魔王だよな?」と約1時間ほど自らを疑問視することになる。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる