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第1章 最果ての少女
閑話 その頃、最果ての村では
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ちちちと、鳥の小気味よい囀りが今日も朝を告げる。
「うーん、今日も仕事がんばるかー!」
まだ日が昇る前の薄暗い室内。
客のこない仕事であるのに、無駄に早起きなブンタであった。
すっきりとした朝なのだが、ブンタは違和感を感じた。
「あれ、ちーちゃん?」
隣に敷いてあるちーちゃんの布団が空になっていた。
「もう、起きてるのかな、ずいぶんと早く起きてなにを…」
ブンタは起き上がり居間の扉をあける。
だがそこにちーちゃんの姿はない。
「……。」
嫌な予感がはしった。
ブンタは寝間着のまま家を飛び出す。
村の外にはまだ誰もいなく、しっとりとした青い空気が澄んでいる。
ダダダダッと、ブンタの駆け回る音がその静寂をこわす。
「ち、ちーちゃーーーん!」
狭い村の中、探し回るのに半刻とかからない。
村の中にもいないと分かるとそのまま森へと飛び出す。
眠りの中にいた魔物たちも、あまりの騒がしさに何だ何だと起き出す。
だが、ブンタの姿を見るやいなや、関わるまいと再び眠りにつくのであった。
太陽が真上に昇る頃。
ブンタは汗だくになりながら家へと戻ってきた。
「はぁ、はぁ、か、かあさん、大変だ、ち、ちーちゃんが、はぁ、家出してしまった!!」
バンっと扉を開けるとそこにはシーレのほかにもう一人、魔王の執事アルファインの姿があった。
アルファインは右手を胸の前に置き、ゆっくりとお辞儀をした。
「ブンタ様、お久しぶりでございます。
実はちー様がいなくなったことで、本日伺わさせて頂いた次第でございます」
「あんたは確か、魔王さんとこの執事。
って、ちーちゃんがどこにいったのかしってるのか!?」
「あらあら、お父さん。
少し落ち着いた方がいいわ」
娘がいなくなったというのに、シーレは相変わらずマイペースである。
「はい。
実は昨夜何者かが魔王城の転移装置を起動させたことがわかりまして。
転送情報を解析した結果、子供ほどの大きさのものを転送したようでした。
城の中を捜索するうちに、村人の方がた用の入口が開いてることがわかり、もしやとおもい村へ来た次第でございます。
その様子をご覧になる限り、転移装置を使用したのはちー様で間違いないようですね」
「転移装置?
何だってそんなもの…まあいい、それでちーちゃんはどこに転移したんだ!?」
「それが、転移石を持たないまま起動させると、魔族のいる土地へランダムで飛ばされる仕様なのでございます。
情報を解析していますが、それによる場所の特定は難しいでしょう。
平行して各支部長へこの事を通達し、ちー様を見つけ次第こちらへ連れ帰るよう手筈を整えています」
アルファインはできる執事。
報告を聞いておろおろとしていた魔王とひと味違うのだ。
そしてここにも、おろおろとしている男が一人。
「どどどどどうしよう、ちーちゃんが、たった7歳の娘が知らない土地にほおりだされてしまった」
「あらあら、何も言わずにおでかけなんて、ちーちゃんたらおてんばねー」
「かーさんは何でそんなに落ち着いてられるんだ!?
ちーちゃんが、俺たちのかわいい愛娘が行方不明なんだぞ!」
狼狽えるブンタにシーレはにこりと微笑みかけた。
「大丈夫よ、だってわたしの娘だもの。
もう7歳なんだしこの機に世界を見て回るのもいいんじゃないかしら?
好奇心旺盛な年頃だもの、きっと大冒険になるに違いないわ、うふふ」
「なにを言っているんだ、まだ7歳だぞ!
それに人の多い街なんて行って見ろ、きっと悪い奴に唆されて不良になってしまうに違いない。ああ、恐ろしい、恐ろしいぞ都会!
何にしてもまだ早すぎる!」
シーレはあらあらと可笑しそうに言う。
「早いって、おかしなこというのねお父さんたら」
「おかしいってなにが…」
「あらあら。だってお父さん、村からでたことないじゃない」
「……」
「じゃあ何歳になったらいいのかしら?
お父さんと同じ年になったら?
あらあら困ったわね、それじゃあちーちゃんは人生の半分以上をこの何にもない村で過ごさないといけないのね」
「しかしだな…」
「あの子は都会コンプレックスをこじらせているこの村の男たちとは違うのよ。
どこにだしても恥ずかしくない、かわいい女の子。
少し背伸びしてみたい年頃なのよ。
それともなにかしら、お父さんが都会にでてちーちゃんを探してきてくれるのかしら?
無理よね、街って聞いただけで緊張しちゃうもんね。
あらあら困ったわね、自分じゃなにもできないのに、ちーちゃんには駄目っていうなんて、本当に大人のすることかしら。
心配? 大丈夫よ、私の娘なんだから。
きっとそのうちひょっこりと帰ってくるわよ。
もしかしたらお友達も出来ているかもね、あらあら、ケーキでも用意しておこうかしら」
ブンタはシーレの口撃に為すすべなく、撃沈された。
こうしてちーちゃんの知らぬところで、おでかけは容認されたのであった。
「うーん、今日も仕事がんばるかー!」
まだ日が昇る前の薄暗い室内。
客のこない仕事であるのに、無駄に早起きなブンタであった。
すっきりとした朝なのだが、ブンタは違和感を感じた。
「あれ、ちーちゃん?」
隣に敷いてあるちーちゃんの布団が空になっていた。
「もう、起きてるのかな、ずいぶんと早く起きてなにを…」
ブンタは起き上がり居間の扉をあける。
だがそこにちーちゃんの姿はない。
「……。」
嫌な予感がはしった。
ブンタは寝間着のまま家を飛び出す。
村の外にはまだ誰もいなく、しっとりとした青い空気が澄んでいる。
ダダダダッと、ブンタの駆け回る音がその静寂をこわす。
「ち、ちーちゃーーーん!」
狭い村の中、探し回るのに半刻とかからない。
村の中にもいないと分かるとそのまま森へと飛び出す。
眠りの中にいた魔物たちも、あまりの騒がしさに何だ何だと起き出す。
だが、ブンタの姿を見るやいなや、関わるまいと再び眠りにつくのであった。
太陽が真上に昇る頃。
ブンタは汗だくになりながら家へと戻ってきた。
「はぁ、はぁ、か、かあさん、大変だ、ち、ちーちゃんが、はぁ、家出してしまった!!」
バンっと扉を開けるとそこにはシーレのほかにもう一人、魔王の執事アルファインの姿があった。
アルファインは右手を胸の前に置き、ゆっくりとお辞儀をした。
「ブンタ様、お久しぶりでございます。
実はちー様がいなくなったことで、本日伺わさせて頂いた次第でございます」
「あんたは確か、魔王さんとこの執事。
って、ちーちゃんがどこにいったのかしってるのか!?」
「あらあら、お父さん。
少し落ち着いた方がいいわ」
娘がいなくなったというのに、シーレは相変わらずマイペースである。
「はい。
実は昨夜何者かが魔王城の転移装置を起動させたことがわかりまして。
転送情報を解析した結果、子供ほどの大きさのものを転送したようでした。
城の中を捜索するうちに、村人の方がた用の入口が開いてることがわかり、もしやとおもい村へ来た次第でございます。
その様子をご覧になる限り、転移装置を使用したのはちー様で間違いないようですね」
「転移装置?
何だってそんなもの…まあいい、それでちーちゃんはどこに転移したんだ!?」
「それが、転移石を持たないまま起動させると、魔族のいる土地へランダムで飛ばされる仕様なのでございます。
情報を解析していますが、それによる場所の特定は難しいでしょう。
平行して各支部長へこの事を通達し、ちー様を見つけ次第こちらへ連れ帰るよう手筈を整えています」
アルファインはできる執事。
報告を聞いておろおろとしていた魔王とひと味違うのだ。
そしてここにも、おろおろとしている男が一人。
「どどどどどうしよう、ちーちゃんが、たった7歳の娘が知らない土地にほおりだされてしまった」
「あらあら、何も言わずにおでかけなんて、ちーちゃんたらおてんばねー」
「かーさんは何でそんなに落ち着いてられるんだ!?
ちーちゃんが、俺たちのかわいい愛娘が行方不明なんだぞ!」
狼狽えるブンタにシーレはにこりと微笑みかけた。
「大丈夫よ、だってわたしの娘だもの。
もう7歳なんだしこの機に世界を見て回るのもいいんじゃないかしら?
好奇心旺盛な年頃だもの、きっと大冒険になるに違いないわ、うふふ」
「なにを言っているんだ、まだ7歳だぞ!
それに人の多い街なんて行って見ろ、きっと悪い奴に唆されて不良になってしまうに違いない。ああ、恐ろしい、恐ろしいぞ都会!
何にしてもまだ早すぎる!」
シーレはあらあらと可笑しそうに言う。
「早いって、おかしなこというのねお父さんたら」
「おかしいってなにが…」
「あらあら。だってお父さん、村からでたことないじゃない」
「……」
「じゃあ何歳になったらいいのかしら?
お父さんと同じ年になったら?
あらあら困ったわね、それじゃあちーちゃんは人生の半分以上をこの何にもない村で過ごさないといけないのね」
「しかしだな…」
「あの子は都会コンプレックスをこじらせているこの村の男たちとは違うのよ。
どこにだしても恥ずかしくない、かわいい女の子。
少し背伸びしてみたい年頃なのよ。
それともなにかしら、お父さんが都会にでてちーちゃんを探してきてくれるのかしら?
無理よね、街って聞いただけで緊張しちゃうもんね。
あらあら困ったわね、自分じゃなにもできないのに、ちーちゃんには駄目っていうなんて、本当に大人のすることかしら。
心配? 大丈夫よ、私の娘なんだから。
きっとそのうちひょっこりと帰ってくるわよ。
もしかしたらお友達も出来ているかもね、あらあら、ケーキでも用意しておこうかしら」
ブンタはシーレの口撃に為すすべなく、撃沈された。
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