33 / 168
第1章 最果ての少女
ラックの予感
しおりを挟む
「ちっ、やっぱりいやがったか!」
トトリの街南門には、普段常駐しているはずの警邏の姿がなかった。
今回の襲撃、あまりに単純すぎるとラックは考えていた。
いくら相手が何か焦っていたとはいえ、ただ馬鹿みたいに攻める事があるだろうか。
あれは陽動ではないのか。
そうした場合、本隊はどこから来るのか。
単純に考えれば、もう一方の門がある南側からだ。
この街の防壁はあくまで野生の魔物たちを寄せ付けないためのものであり、それなりの技能を持ったものならば簡単に乗り越えることができる。
警邏隊は廻っているが、街全周を常時確認するなど不可能。
つまり、魔族が街の中に忍び込んでいたとしてもおかしくはない。
やつらは真っ先に南門を制圧しにかかるだろう。
だが、疑問に残る事もあった。
話に聞く限り北門に集まっている敵勢力はかなり多い。
南門から残り勢力がくるとしても大した数ではない。
意表を突くには心もとない数。
「いた、あそこだな」
だが、実際にやつらはいた。
門を開ける為の滑車を動かしていた。
「3人か、ひとりで相手するにはちょっと骨が折れるな。
ここは街の税金で暮らしている方々に働いてもらうか」
ラックは一般人を装い、近くの警邏事務所に駆け込んだ。
「み、み、南門に魔族が忍び込んでいたぞ!
はやく追い払ってくれ!」
「なに、その話本当か!?
お前ら準備でき次第南門に向かうぞ!
新人は本部へ連絡を入れろ」
一報を聞くなり、素早く動き出す警邏隊。
通常であれば、こんなに機敏ではないのだが、いまは非常事態発令がだされている。
例え普段怠慢なものたちでも、いまばかりはまじめに働くはずだ。
彼らを見送るとラックは再び南門へ赴き、壁を素早く登った。
「奴らはなにをしようってんだ?」
懐から単眼鏡を取り出すと、砂漠の先へと視線を向けた。
「…なんだありゃあ、どうなってやがる」
ラックは自分でみたものが信じられなかった。
「魔物の大群が…押し寄せてくる」
あんなものが街を襲ったら一溜まりもない。
街を見下ろすと、北門での戦闘に不安がっている住民たちが右往左往している。
ラックは近くにいた警邏隊員を捕まえると、魔物の大群が接近していることを伝えた。
隊員は信じていないようだったが単眼鏡を渡し覗かせてやると、顔を見る見る蒼くさせた。
「ひ、非常事態発生!!
魔物の大群が南方より接近中!!
繰り返す!
魔物の大群が南方より接近中!
住民は高い建物に避難してください!」
警邏隊員は、街中を走りながらその事を伝え回った。
住民たちは当たり前だがパニックとなった。
中にはその場に跪き神に祈るものも現れ出す。
逃げたところで無事に助かる見込みは薄い。
「俺もどうにかしないと、踏み潰されちまう」
多勢に無勢、あれだけの大群に個の力は及ばない。
ラックといえども、逃げる以外に選択肢はない。
「あのガキはおしいが、命あっての物種だ。」
ラックは街を数秒見つめた後、姿を消した。
トトリの街南門には、普段常駐しているはずの警邏の姿がなかった。
今回の襲撃、あまりに単純すぎるとラックは考えていた。
いくら相手が何か焦っていたとはいえ、ただ馬鹿みたいに攻める事があるだろうか。
あれは陽動ではないのか。
そうした場合、本隊はどこから来るのか。
単純に考えれば、もう一方の門がある南側からだ。
この街の防壁はあくまで野生の魔物たちを寄せ付けないためのものであり、それなりの技能を持ったものならば簡単に乗り越えることができる。
警邏隊は廻っているが、街全周を常時確認するなど不可能。
つまり、魔族が街の中に忍び込んでいたとしてもおかしくはない。
やつらは真っ先に南門を制圧しにかかるだろう。
だが、疑問に残る事もあった。
話に聞く限り北門に集まっている敵勢力はかなり多い。
南門から残り勢力がくるとしても大した数ではない。
意表を突くには心もとない数。
「いた、あそこだな」
だが、実際にやつらはいた。
門を開ける為の滑車を動かしていた。
「3人か、ひとりで相手するにはちょっと骨が折れるな。
ここは街の税金で暮らしている方々に働いてもらうか」
ラックは一般人を装い、近くの警邏事務所に駆け込んだ。
「み、み、南門に魔族が忍び込んでいたぞ!
はやく追い払ってくれ!」
「なに、その話本当か!?
お前ら準備でき次第南門に向かうぞ!
新人は本部へ連絡を入れろ」
一報を聞くなり、素早く動き出す警邏隊。
通常であれば、こんなに機敏ではないのだが、いまは非常事態発令がだされている。
例え普段怠慢なものたちでも、いまばかりはまじめに働くはずだ。
彼らを見送るとラックは再び南門へ赴き、壁を素早く登った。
「奴らはなにをしようってんだ?」
懐から単眼鏡を取り出すと、砂漠の先へと視線を向けた。
「…なんだありゃあ、どうなってやがる」
ラックは自分でみたものが信じられなかった。
「魔物の大群が…押し寄せてくる」
あんなものが街を襲ったら一溜まりもない。
街を見下ろすと、北門での戦闘に不安がっている住民たちが右往左往している。
ラックは近くにいた警邏隊員を捕まえると、魔物の大群が接近していることを伝えた。
隊員は信じていないようだったが単眼鏡を渡し覗かせてやると、顔を見る見る蒼くさせた。
「ひ、非常事態発生!!
魔物の大群が南方より接近中!!
繰り返す!
魔物の大群が南方より接近中!
住民は高い建物に避難してください!」
警邏隊員は、街中を走りながらその事を伝え回った。
住民たちは当たり前だがパニックとなった。
中にはその場に跪き神に祈るものも現れ出す。
逃げたところで無事に助かる見込みは薄い。
「俺もどうにかしないと、踏み潰されちまう」
多勢に無勢、あれだけの大群に個の力は及ばない。
ラックといえども、逃げる以外に選択肢はない。
「あのガキはおしいが、命あっての物種だ。」
ラックは街を数秒見つめた後、姿を消した。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる