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第2章 彷徨う森
作戦
しおりを挟む「この練り練り玉を、300年もの間、儂は溜めに溜めに溜め続けた。」
ガイランドが腰にぶら下げた袋から、ガラス玉をひとつかみ取り出す。
その大きさは先ほどよりも大きく、ひとつひとつがビー玉サイズはある。
爪の先ほどでもあれだけの威力なのだがら、このサイズの威力は推して知るべきであろう。
「これのメリットは魔力を貯蓄できることは勿論だが、他人にも使用することができるのが最大のメリットだ。
儂の手から放れた後は、大きな衝撃で爆発するから取り扱いには気をつけるのじゃぞ。
まず、貴公等にも手伝ってもらい、これを四方から、聖獣の守る樹に向かって投げていただきたい。」
「そんなことをしては知恵の実が!」
「落ち着きたまえ、アリス殿。
そう簡単に折れる樹ではない。
それに、聖獣がそう簡単に傷つけさせはしないだろう。
あの伝承の通りであれば、やつの最優先事項は神葉樹の保護。
その身を張って守るはずだ。
避ければ樹が傷つき、守れば自分が傷付く。」
「やつは守らざるを得ない。
こちらの攻撃を受け続けるしかないってことだな、じいさん」
「そういうことじゃ。
といっても、奴も何かしら反撃はするじゃろう。
仮にも神の御使い。」
「もしブレスでも吐かれたらどうするんだよ」
「ふふふ、儂も何度かちょっかいを出しておるが、いままでブレスを吐かれたことはない。
あの体躯じゃ、はけないことはないのだろう。
しかしながら、この森を傷つけるわけにはいかないとみた。
やつの力は強大が故に、ここでは十全に発揮できんのじゃ」
「なるほど」
「貴公等がうまくやつを怒らせ、立ち上がらせくれれば儂の出番。
特大の練り練り玉をおみまいしてくれよう。」
どこから取り出したのか、直径1メートルはありそうな玉を取りだすガイランド。
「これひとつ練るのに100年はかかった、正真正銘の秘策!
もし失敗すれば、この作戦は終わりじゃ。
今度ばかりは、さすがに奴も見逃してくれんじゃろ」
ガイランドはアリストラックの目を見る。
ゴクリとつばを飲み込むふたり。
「ねーねー、ちーちゃんは何をすればいいの??」
割って入ってきたちーちゃん。
除け者にされて寂しかったようだ。
「ふむ、もしや嬢ちゃんがケルベロスの主人か?
いやいやその年にしてケルベロスを懐かせるとは、テイマーとしての才能は恐ろしいな」
技術で従属させたわけではない。
ちーちやんは自然の掟である拳によって従属させた。
そんなこと想像着くはずもなく、ケルベロスが生まれたばかりの頃から懐かせたのだろうと、ガイランドは勝手に解釈した。
「であれば、嬢ちゃんとケルベロスには陽動してもらおう。
要は聖獣の周りを逃げ回るのじゃ」
「うん、わかった!
鬼ごっこすればいいんだね!」
「…うむ、少し違うが、まあよかろう」
こうして、聖獣討伐の作戦は立てられ、実行に移されることとなった。
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