おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2章 彷徨う森

森を出て

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「おい、森が途切れてるぞ!」

延々と続くはずだった森はもうない。
前方に広がる明かりめがけて、みんな足早になるのも無理はない。

森の最後の木を通り過ぎると、目の前に広がる草原。
そこには森どころか木一つない。

「やっとじゃ、ここまでくるのに300 年かかった。」

ガイランドはあふれる涙を抑えきれなかった。

アリスとラック、それにちーちゃんは微笑ましくそれを見ている。
茶化すことなどできようものか。
途方もない時間を一人きりで過ごした彼を。

「良かったなガイランド殿」
「くーーーーっ、風が気持ちいいぜーー!」
「遮るもののない光がこんなにも眩しいなんて、すっかり忘れておった。
 三人とも本当にありがとう」

ガイランドは右手をさしだす。

「いいや、こちらこそ。
 あなたがいなければ私達はきっとあの場で朽ち果てていただろう。
 それに目的の物も手に入れることができた」

腰袋に下げた知恵の実をポンポンと叩き、アリスは差し出された手をぎゅっと握り返す。

ラックはガイランドの横につき、ばんばんと背中を叩く。

「それで、じいさんはこれからどうするんだ?
 良かったら近くの街まで一緒に行くか?」
「お誘いは嬉しいがやめておこう。
 儂は魔族じゃ、人の街にいけば騒動を巻き起こしてしまうだろう。
 なあに、世界を股にかけた大参謀。
 ひとりで魔王さまのもとへ戻ってみせるわ」
「そうか…じゃあ、ここでお別れだな」

少し寂しそうに離れるラック。
半魔の者として、こうまで距離を詰めれた魔族との別れは名残惜しいのだろう。

「なあに、縁があればまたあえるじゃろう。
 いや、きっともう一度出会う。
 予感というか、これは確信じゃな。
 そんな気がするわい」
「ふっ、確かにな。
 こんな奇縁、そう簡単に切れる気はしないな」
「まあ、ガイランド殿と次会うときは敵同士やもしないな」

アリスは空気をぶち壊すようなことを言う。

「…アリス、お前もてないだろう」
「なっ、なぜそれを!?」
「はーはっはっはっ、アリス殿はブラックユーモアが得意と見える」



ひとしきり笑った後、ガイランドはいよいよ旅立つ。

「ではまた会おう若者たちよ!」
「ばいばーい、またねー♪」

ぶんぶんと大きく手を振るちーちゃん。

こうして彷徨う森の物語は幕を閉じた。




「…さーーーて、うん。
 ここはどこだろうな、ラック」
「ああ、そうだな、俺にもわからん!」
「わたしもー♪」

こうして新たな災難を目の前にする三人と一匹であった。


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