おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2.5章 草原の詩

洞窟の中で1

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村から歩いて1時間程のところにある洞窟。
草原にぽっかりと現れた洞窟の入り口は、地下へと獲物を導くように、深く深く闇を潜めていた。

村長の言う通り、道中に魔物が多く出現した。
アリスもラックも旅慣れたものだが、ここまで魔物が出現するのも確かに珍しい。

しかしアリスは上機嫌であった。

「ふふふ、やはりこうでなくてはな。
 ケルベロスや聖獣など、規格外ばかりのものと出会ってばかりで、ちょっと自分に自信を無くしていたところだ。
 こう、ズバッと一刀両断するのは、やはり冒険者冥利につきるな!」

アリスは血濡れた魔剣を眺め、ニヤニヤとしている。
それをみてラックは若干引き気味である。

「おいおい、やめてくれよ。
 そんなんだからお前は行き遅れるんだよ」
「なななな、なんてことをお前は!!
 わたしは、ただ、自分の意思で、冒険者をやっているのだ!!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を心配げに見つめるガイリ。
道中、さんざん二人の実力は見てきたのだが、このやり取りを見て不安になってきたのである。

「あ、あのおふたりとも。
 洞窟につきましたので、そろそろ準備の方を…」
「う、うむ、すまない。」

顔を赤くしてアリスはラックに向けて振りかぶっていた剣を鞘に納めた。





洞窟の中は闇につつまれている。
空気も淀み、ひんやりとした苔むした匂いがする。
村長によれば儀式以外では使うことのない洞窟なのだから、手入れされていなくて当然であろう。
等間隔で申し訳程度の燭台が設置されている。

「…ふぅ、ここが儀式の洞窟。
 危険はないと言われてますが、やはり緊張しますね」
「安心しな。
 そんなに魔物も強くなかったし、大丈夫だろう」
「ああ、魔物が増えたといっても想定内だったしな。
 ガイリ殿は儀式に集中してくれて構わないさ」

儀式用の服装に短剣、供物の穀物と肉、蝋燭に木札。
ガイリはそれらに身を包んでいるため、戦闘に参加するのは難しい。

「ありがとうございます。
 俺は普段、村を警護する立場だから、こう守られるのは新鮮でいて、ちょっともどかしいですね。」
「村の警護をしているのですか?」
「まあ、男衆が少ないですからね。
 基本はまだ職につく前の若者たちが、警邏隊の役割を担っています。
 といっても、たまに村へ近づく動物や魔物を大人数で駆除するだけですがね」

謙虚にそう答えるガイリだが、アリスは彼がそれなりに使えることが分かった。
筋肉の質や、身のこなし、魔物を追う目線。
とても仕方なく警邏をやっている人間のそれではなかった。

(と言っても、素人は素人。
 村では剣術、武術をならうのにも限界があるからな…)

アリスは改めて気を引き締め、洞窟へ一歩踏み出した。


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