おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2.5章 草原の詩

贈り物をさがす

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「お願いっていうのは、探し物を手伝ってほしいんだ」
「さがしもの?」
「うん、ガイリお兄ちゃんは儀式を終えれば成人になるから、そのお祝いにねプレゼントをしたいんだ。
 そ、それでね、実は前からここらへんの土壁を掘って、あるものをさがしているんだ」

ちーちゃんは、いま自分が入っている小さな洞をぐるりと見る。

「もしかして、これってレイリが掘ったの?」
「う、うん、えへへ、そうなんだ」
「わぁーー、すごいねっ!!」

子どもの手でこの大きさの穴を掘るのは一日二日ではとてもすまない。
ずっと前からひとりで掘ってきたのだろう。

ちーちゃんはこの素敵な場所に感心していた。

「レイリは偉いね、すごいね!」
「ありがとう、ちーちゃん!」

引っ込み思案な性格故に、素直に人から褒められることのないレイリは、手放しで賞賛するちーちゃんの言葉が嬉しかった。
満面の笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。
数時間前までちーちゃんに人見知りしていたレイリはもういない。




「それで探し物ってなんなの?」
「うん、ここを見て」

レイリは洞の中の足元すれすれにある突起物を指さす。
それは土壁の中に体の多くを埋もれさせている鉱石であった。
碧くうっすらと透き通る石は、わずかな光を貪欲に取りこみ体内の中で不可思議なきらめきを起こす。
それはまるで鉱石が命を、心臓を鼓動させているかのような、人を虜にする輝き。

「うわぁ、とても素敵だね!!
 なになに、これってなんなの!?」
「これは、魔石っていうんだ」
「マセキ?」
「うん、僕も詳しくは知らないんだけどね、へへっ。
 ただお兄ちゃんが言うには、これがあると強くなれんだって。
 だから、これを掘り出してお兄ちゃんにプレゼントするんだ!」

頬を掻き照れくさそうにするレイリ。
腰にぶらさげた布袋から、掘削用のスコップを取り出す。

「お兄ちゃんが帰ってくる前に、これを掘り出したいんだ。
 でもひとりだと、とても間に合いそうになくって。
 だから、ちーちゃんにも手伝ってほしくて……お願いします!!」

頭を大きく下げるレイリ。
それをみてちーちゃんは、とても晴れやかな笑顔で応えた。

「もちろんだよ、レイリ!
 お姉ちゃんにまかせなさいっ!!」

頼られることが嬉しい年頃。
ちーちゃんは意気揚々とスコップを受け取り、掘る構えを取る。

「この石を掘り出せばいいんだね!」
「うん、でもどれだけ深くまで埋まってるか分からないから、周囲の土からどけていこうと思うだ。
 僕は右側から掘っていくから、ちーちゃんは…」
「よいしょーーー!」

ちーちゃんは握ったスコップを土壁に一突きする。
その突きは壁を大きく抉り、小さな洞の中いっぱいに土煙を巻き起こす。

「ごほっ、ごほっ、ななな何が起きたの!?」

突然の出来事にパニックになるレイリ。
土煙が晴れたそこには、大きく抉れた土壁と、すっかり露わになった50センチ程度の魔石。

「えへへへー、力加減間違えちゃった」

服に付いた土ぼこりを払いながら、照れ笑いするちーちゃん。

「………すごいっ!!!」

一瞬呆けたレイリだが、すぐさま我に返り、ちーちゃんを褒めたたえた。

「ちーちゃんすごいよっ!!
 僕が時間をかけてあれだけしか掘り出せなかったのに、こんな一瞬で!!
 わあーー、さすがお姉さんなんだね!!」
「えへん、さすがお姉さんなのです!!」

上機嫌のちーちゃんに、何の疑問も持たず褒めるレイリ。
彼はまだ知らなかった、この世の常識を。

大きくなれば、これだけのことを出来るものだと、そう思ってしまったのだ。

これが彼の将来を行末を決める、ひとつの出来事になるとも知らずに。




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