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第3章 偽りの王
首都ハッカータ
しおりを挟むちーちゃん一行が村を出発して2週間。
ようやく当面の目的地であるフコカ国首都ハッカータの姿が見えてきた。
「よもやナイン大陸に連れてこられていたとはな。
渡航制限が厳しいから、簡単に来ることは出来ないと思っていたが、これは少しばかり喜ばしい」
アリスは知恵の実、生命の実を探すため旅している。
いづれは中央大陸だけではなく、ナイン大陸、漆黒大陸へと足を運ぶ予定ではあった。
だがナイン大陸はここ数百年戦乱が続き、中央大陸からの渡航許可が簡単にはおりない。
さまよう森による、大陸間の移動は運悪くもあるが、アリスにとっては良い面もあった。
「相変わらずだな、あの街は」
遠くに見える街の影を見ながら、ラックはぽつりとつぶやいた。
その目はどこか故郷を懐かしむように思えた。
「ラックは来たことがあるのか」
「ん、まあ、子供の頃住んでいたことがあってな」
「ラックお兄ちゃんの故郷ってこと?」
「そんな良いもんじゃねーよ」
「なんだラックはナイン大陸出身だったのか。
ふふ、では案内でもしてもらうかな。
いかんせん、こちらの風習は全く分からんのでな」
「美味しい所、あんないしてー」
「うぉんっ!」
ラックは二人の話を耳にしながらも、反応は薄い。
目の前に近づく故郷。
あまり良い思い出はないが、それでもどこか懐かしむ自分のもやもやとした心に整理がつけられずにいた。
ナイン大陸最大の首都ということもあり、その壁は高く広かった。
街へ通じる門は厳重に警備され、入場を待つ列が長く続いている。
「こりゃ2,3時間かかりそうだな」
「えー、早く街にはいりたーい」
「凄い列だな。
いつもこんな感じなのか、この街は?」
「いや、昔はそんなことなかったが・・・」
列を為す多くは行商人のようであった。
ラックは行商人の顔も持つ。
同業者として一つ思うことがあった。
商人が街へ押しかけるという事は、何かしら儲け話があるということ。
並んでいる荷物を見ると、食料、武器、防具、馬に羊、様々なものがあった。
「・・・嫌な予感がするな」
「どうしたラック?」
列をなぞるようにして弁当売りが前方から近づいてきた。
ラックはそいつを呼び留めると、村で報酬としてもらったコインを数枚取り出し弁当を購入した。
「まいどありー!
嬢ちゃんには飴玉おまけしてあげよう」
「わー、ありがとう!」
「にしても、お客さんたち見ない服装だね、どっから来たんだい?」
「うむ、我々はちゅ・・・」
「ベアフォンの田舎から出てきたばかりでな、やっと着いたと思ったこの行列だ。
なんかあったんですかい?」
「ほー、こりゃえらい遠くから、お疲れ様です。
この行列はですね、遠征の準備ですよ」
「遠征?」
疑問を浮かべるラックやアリスの表情を見て、弁当屋は驚きの顔を浮かべる。
「旦那ら、知らないんですか?
いくら田舎から出てきたからって、ちょっと時勢に疎すぎるんと違いますか?
遠征と言ったら、ナイン大陸7カ国を挙げての中央大陸侵攻ですよ!」
戦争。
ラックは「やはりな」と心の中で思った。
祭りや何かにしては武防具が多すぎる。
何千の人間が武器を必要としない限り、この数は過多である。
弁当屋の言葉に驚いたのはアリスである。
「戦争だと!?
いや、7カ国挙げてとは、どういうことだ?」
「どういことだ、っていのは、どういうことです?
去年ローミン王によってこの大陸は統治されたばかりではありませんか。
そんなこと、今時貧困街の子どもでも知ってますよ」
アリスたちの元を去っていく弁当屋を見送りながら、ラックは舌打ちをした。
「ちっ、嫌なタイミングできちまったぜ」
「ああ、これは簡単に中央大陸へ戻れなさそうだな。
折角の観光気分もすっかり冷めてしまったよ」
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