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第3章 偽りの王
謁見1
しおりを挟むアリスとラックは王城の前まで来ていた。
ちーちゃんはお留守番である。
昨日、街へ入るなり早速迷子となったちーちゃんは、こってりと怒られた。
心配して街中をさんざん探し回ったアリスは、見つけるなり激怒した。
周囲の通行人が引かんばかりに激怒した。
自由奔放なちーちゃんといえど、やはり子供。
怒られるのは怖い。
ケルベロスを一撃で屠る力を持ってようと、怒られるのは怖いのだ。
ちーちゃんは泣いた。
盛大に泣いた。
アリスは怒った。
盛大に怒った。
ラックは二人を放置しひとり宿屋へと向かった。
ラックは怒られた。
盛大に怒られた。
すったもんだあり、ちーちゃんはお留守番となった。
「しかし、ちーちゃんを連れてこなくて正解だったな」
門兵に連れられ、城内へ案内された二人が最初に見たのは、煌びやかな通路。
豪華絢爛、贅の限りを尽くした装飾にすっかり目を奪われた。
兵隊が列を組んで行進しても有り余る広さの通路には、これもまた高そうな赤絨毯が引かれている。
飾られている壺ひとつ取ってみても、一般家庭が一年暮らせそうなものだ。
ラックは思わず「一個くらい」と手を伸ばしかけた。
すぐさまアリスに手を叩かれたが。
「子供が入っていい場所じゃないな。
はしゃいで物を壊そうものなら打ち首もありうるな」
「はは」
アリスは苦笑した。
一蹴できない現実が目の間に広がっているのだから。
鑑識眼はさしてないが、そんな自分でも物ひとつ壊そうものなら弁償できないであろうことは分かった。
そんな所に、目を離したすきに迷子になるような子供を連れて来れるわけもない。
改めて自分の判断が正しかったと、胸をなでおろすアリス。
そうしている内に、二人は大きな扉の前に立っていた。
他と比べて圧倒的に厳格な扉。
この先に王がいるのだろう。
「おいアリス。
来たはいいが、こういった場での所作とか俺は知らないんだが」
「あまり気にしなくていいだろう。
こちらは冒険者として呼ばれているのだ、向こうも期待はしていないさ。
余程無礼なことをしない限りな」
ここまで案内を買って出てくれた兵士に、それとなく目配せで確認してみるが、彼もコクリと頷く。
「大丈夫です、お二方。
ローミン王はおおらかな方です。
普通に話しかけていただいて結構ですよ」
(王とは唯我独尊な者が多いのだが、一般兵士にまでこう言わせる王とはどんな人物なのだ)
アリスは感心しつつも、疑念を持った。
街に入ってからも王の評判は上々。
悪い噂をひとつも聞かない。
アリスの心の準備も整わぬまま、扉はゆっくりと開いていく。
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