おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

謁見2

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ローミン王は目の前で膝まづく二人の姿を見つめていた。

「ご苦労、顔を上げてくれて構わないよ」
「はっ、本日はお招き頂き感謝致します。
 私は冒険者をしておりますアリスと申します」
「同じく俺はラック。
 礼儀とかは勘弁してくれ、なんせ冒険者あがりなんで」

居並ぶ衛兵たちに囲まれながらも、決して怯む様子を見せない客人たち。
確かに並々ならぬ実力者だろう。
女の方は魔剣を持っている。
男の方は、ふむ、これは半魔か。
ローミン王は一瞥しただけで、ある程度の実力は見抜けることが出来た。
なるほどと思った。
しかし、だからこそ、いくつかの疑問があった。

「冒険者…貴殿らに少し聞きたい事があってな。
 門兵からも知らされているだろう、あの村での出来事だ」
「村での出来事ですか」
「ああ、あの村に封印されていた魔物に関してだ」

アリスは眉をピクリと動かす。
ここに召喚された理由。
なぜ、王があの村に封印されていた魔物の事を知っているのか、アリスは疑問に思っていた。
村長ですら知らなかった、長い歴史に埋もれた魔物。
相対した自分たちですら、結局何だったのか分からない、アレ。

アリスの疑問を、動揺をローミン王は見透かしたように笑みを浮かべる。

「ふっ、不思議そうな顔をしておるな。
 くっくっくっく、ああ、いや笑ってすまぬ」
「陛下、お戯れはその程度に。
 お客人が困っておられるではありませんか」
「うん、そうだな、すまぬ。
 あの魔物に関しては、まあ王家の秘密だ。
 恥部と言ってもいい、公にはできぬ故、説明はできぬ。
 何か期待していたのであるなら、申し訳ないな」

実際には国の恥部ではなく、ローミン自身の恥部であるのだが、それは言えぬ。
彼が人間でないことを知っているのは僅かだ。

「しかし、よくアレを倒すことが出来たな。
 長年の封印で弱体化していたとはいえ、並の魔物ではないぞ」
「それは…」

アリスはあそこで起こった出来事を素直に話した。
それを聞いたローミン王は数秒の間、考えに耽った。

「………ふむ。
 確かにそれは倒されたのであろうな。
 よくやってくれた、本来ならば我々が討伐しなければならない。
 多くはないが褒美を用意した。
 そちらの衛兵に付いていってくれ。
 本日は急な要件にも関わらず、感謝する。
 また機会があれば、あおうぞ」



二人の退出を見届けると、居並んだ衛兵も追い出し、広間にはローミン王と側近のマッキーの二人きりとなった。

「マッキーよ、どう思う」
「はっ、あの二人、それなりの実力は備えているようです。
 しかし、ローミン様の分体を倒せるかと聞かれれば、答えはノーです。
 あの場では言わなかった何かがあるのかもしれませんね」
「ふむ。
 俺の残滓である分体が倒されたのは確かだ。
 だが、あいつらの話を聞く限り、どうも倒したのは別の者のようだ」
「と、申されますと?」
「俺の分体は、あいつらが語ったような愉快な性格はしておらん。
 きっと封じられている間に住み着いた、別個の存在であろう」

だが、奴らから監視の目を外すわけにはいかないだろう。

「いずれにせよ、奴らが村にきたタイミングで分体が倒されたのだ。
 奴らの関係者と見て間違いなかろう。
 監視は引き続き行うよう命じておけ。」
「はっ、承知いたしました!」
「しかし、このタイミングでそんな実力者がここを訪れるとは。
 勇者か何かかと疑いたくもなるな」

半ば冗談気味に笑うが、その目はじっと虚空を見つめていた。

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