おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

ちーちゃんの実力1

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馬車が森の中程までやってくると、ローミンは魔法を行使した。
複合魔法「魔物の産声」。

その土地の魔素を人為的に活性化させることで、将来生まれるはずであった魔物たちを強制的に発生させる魔法。
いくつかの魔法を同時に行使する必要があり、魔族といえど使えるものはローミンを除いて皆無。

生み出される魔物の数や強さは、その土地の潜在的な魔素に比例する。
だからこそローミンはこの森へと誘うように仕組んだ。
今でこそ平和な森ではあるが、ここは将来魔物蠢く森になるであろうと踏んでいた。
魔素を感じ取れる魔族でこそ分かることである。

そんな森で、この魔法を使えばどのようなことになるのか。





「嬢ちゃんも大変だね、中央大陸へ渡航だなんて。
 いやまあ、このご時世だ、戦から逃れたいのは誰だって同じだ。
 しかしねぇ、密航は危険だ。
 正直、嬢ちゃんみてえな小さい子供を運ぶのは偲びねえ。
 俺も長いこと、この仕事をしている。
 何度だって見てきたさ、悲しい結末をよ。
 そのたびに思うのよ、あの時止めてやればなって。」

よく喋る御者の声を子守唄にしながら、ちーちゃんはうとうとと夢と現の境を彷徨っていた。
ケロちゃんはつまらなさそうに大きなあくびをしていた。
ちなみにベロちゃん、スーちゃんは、アリスたちに着いていった。
一人一肩というわけだ。

「だが、仕事は仕事。
 俺は俺ができることだけをきっちりとこなす。
 いつだって100%のチカラでな。
 ほらみてみろ、この・・・」

マシンガントークが一瞬止まる。
御者の耳に僅かながら地を震わす音が聞こえた。
ずん、ずんと。
馬もその音を察したのか、大きく暴れだす。

「GYAOOOOOOOOO!!!」

森の奥から魔物と思わしき雄叫びが聞こえた。
普段、魔物と接することのない御者でも、その声の主の恐ろしさは感じ取れた。

「ひ、ひいいいい!!」

御者は馬を荷台から離すと、それに跨り颯爽と森の入り口へと踵を返した。
荷台は森のなかにぽつんと残された。

どしん、どしん。

大きな地響きを立てて、魔物が姿を表す。

身の丈4mはありそうな、大型肉食獣。
そいつは荷台の中でじっとしている、ちーちゃんに狙いをすませた。



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すみません、ちーちゃんは次回暴れます。

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