おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

ラックの疑惑3

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ラックは再び貧困街へと来ていた。
数日前に訪れたばかりの建物へと迷うことなく足を向ける。
ノックの一つもなく開け放たれたドアに、中で待機していた若者はビクリと体を震わし音の鳴った方へと顔を向ける。

「あんたは、確か兄貴の・・・」
「ジョイフルは上か?」

男の質問など受けぬとばかりにラックは自らの質問を被せる。
有無を言わせない雰囲気にすっかり飲まれた男は正直に首を縦に振った。
ラックはカツカツと二階へ続く階段を登る。
小さな建物である、二階へ登ると扉は一つしかない。

建物に入ったときと同様に、ラックは乱暴に扉を開け放つ。

僅か10m四方の小さな部屋の中には、机と椅子が窓際にあり、壁側には酒瓶が所狭しと並んだ棚がひとつあるのみだった。
窓から差し込む光だけが光源である部屋の中は薄暗くはあったが、椅子に座る人物をくっきりと浮かび上がらせていた。

「よぉ、お早い帰りだなラック」

まるで焦る様子のないジョイフルは、あたかもラックが再び返ってくるのが分かっていたかのような態度だ。
その様子を気にした素振りも見せずにラックは、ジョイフルへと詰め寄る。

「どういうことだジョイフル。
 お前の目的は何なんだ!?」

胸ぐらをグイッと掴むと、ラックは真意を確かめるべくジョイフルの目を見つめた。
明らかな敵意を向けられてもジョイフルは決して焦ることなく、掴みかかったラックの手を静かにどけた。
乱れた襟を直すとジョイフルは立ち上がり、その椅子へ座るようラックを誘った。

「・・・」

ラックは少し訝しんだが、おとなしくその椅子へ座った。
それを見届けるとジョイフルは後ろからラックの肩へ手を置き囁いた。

「さて、お前の話を聞こうじゃないか。
 お前がここに来る事になった理由についてな」

裏はありますと言わんばかりの挑発的な発言。
いや、ジョイフルにしてみればただの余興、答え合わせだろう。
ラックはその挑発に乗ってやる事にした。

「この仕事をやる上で最も必要なもの。
 それはどこの組織に属していたって変わらない。
 依頼された事を熟す確からしさと、それを実現できる力。
 それが合わさっての、信用だ。」
「そうだな、いつ裏切られるか分からない商売だ。
 余計な情などなく、金だけで確実に仕事を熟す。
 それがプロってもんだな」
「だとしたら、今回の仕事はあまりにもお粗末すぎる。
 まず、この時期の密航手順として関所を通るのはおかしい。
 そもそも、通行許可証なんて手に入る訳がない。
 関所を通れるのは「国王に許された軍に所属する者のみ。例外はない」。
 ちょっと調べれば分かることだ。
 しかし、それをお前は手に入れることができた。
 偽物か本物か分からないがな。
 仮に偽物だとしたら、素人同然のお粗末な仕事。
 本物だとしたら、お前が国王、またはそれに準ずる者と通じているってことだ。
 たかだか幼馴染相手に用意するには奮発しすぎだ。」

ジョイフルは「ふむ」と頷く。

「それにだ。
 何よりちーちゃんが魔物に襲われたこと。
 近々魔物が大量発生する森であることを、ここら一帯を縄張りにしているお前が気づかない訳がない。
 そんな濃密な魔素が滞留していれば、気づくはずだろう。
 俺と同じ半魔であるお前ならな」



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