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第3章 偽りの王
ラックとジョイフル3
しおりを挟む大量の血を滴らせながらも、ジョイフルはその笑みを絶やさなかった。
「くくく、やっぱりすげえよな、魔法って。
俺達の世界は力こそ全て。
魔族の血が混じっていると分かった時、俺は狂喜したさ。
これで虐げられないってさ。
お前を追い出した奴らの恐怖の顔ったらないぜ。
だから確信したよ、この力があれば、俺は這い上がれるってな。」
「・・・」
「お前には感謝してるぜ、ラック。
俺だって何も知らずにこの力のことを知っていれば、
無邪気に大人たちへ自慢しただろうな。
だが、お前がいた。
お前がこの街を去っていくのを見た。
俺は狡猾に時期を窺い、そしてあいつらに復讐してやった。
わずか数年だ。
この通り俺は街を仕切るまでになったのさ。」
「良かったな。
それで、お前は満足したのか。」
「・・・満足出来るわけがねえ、この力は更に上を目指せる。
だから俺は王様の下に付いた」
会話しながらもラックは構えを解かずに、隙を窺う。
「ふん、誰かの下につくのは相変わらずだな。」
「笑うがいいさラック。
俺だって自分が世界一だとは思っちゃいない。
あの人は別格だ、歯向かおうなんて馬鹿のすることだ。
俺は俺の力を過信しない。」
ジョイフルは脇腹を抑えていた、血まみれの手を掲げる。
「だけどな、俺は俺の力を信頼しているのさ」
何かするのを感じ取ったラックは、先手を打たれる前に行動をとった。
魔法を発動し、自分の分身を相手に見せる。
時間差で動き出そうとした、その時。
ラックは自らの足を掴む存在に気づいた。
「!?」
驚くラックの姿を見たジョイフルは可笑しそうに肩を震わせる。
「くくくくく、お前も魔法を見せてくれたんだ。
俺の魔法もみせなきゃ、不公平ってもんだろ?」
血まみれだったジョイフルの手には、いつのまにか真っ赤な鉤爪が現れていた。
いや、鉤爪のような血の塊だ。
ラックは足元を見る。
そこには人の手のように伸びて掴む、血の腕。
「それが俺の魔法『血液操作』だ。
自分の血しか操作できないのが難点だが、俺は気に入ってるぜこの力」
先程まで脇腹を濡らしていた血液はピタリと止まっている。
傷口の血液を凝固させたのだ。
「俺が流した血の分、お前にも流してもらわないとな」
鋭く尖った鉤爪をぺろりと舐めながら、ジョイフルはラックへと近づく。
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