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第3章 偽りの王
魔王のチカラ3
しおりを挟むローミンは溜息を吐くと、ちーちゃんに背を向け玉座へとあるき出した。
そのままドサッと座ると、再びちーちゃんに目を向ける。
「ったく、どうなってやがるんだお前らは。」
「??」
ちーちゃんは遊びの続きをしないのかと、首を傾げながらも、ローミンのアクションを待っている。
「村人とはいえ子供だからなんとかなるかと思っていたが、遊びと勘違いされるとはな。
いやはや、流石は村人だ。
俺も出し惜しみしてちゃ、永遠にお前に届きそうにない。」
ローミンは玉座で足を組み、くつろぐ態勢を取った。
「少しばかりズルをするが、まあ、悪く思わないでくれ。
これは戦争に備えて、対国家用に準備していたものだが、使わざるを得ないようだ。
正真正銘これ以上の奥の手はない。
これで駄目なら、俺の負けだ。」
ぱちんと指を鳴らすと、玉座周辺に魔法陣が浮かび上がり、四方へどこまでも伸びていく。
いや伸びているわけではない、元から描かれていた魔法陣に魔力が注ぎ込まれ浮かび上がっているだけ。
「さあ国民よ、我に力を捧げよ」
起動した魔法陣は街全体を飲み込むように設置されていた。
「なんだ、何が起こっている」
「怖いよお母さん」
「衛兵を呼べ、みんな迂闊に動くんじゃない」
「これは魔法陣、しかしなんて複雑な・・・」
「に、逃げるんだ!!」
突然の出来事に住民は混乱していた。
城へ向かって町中を走っていたアリスもまた、その混乱に巻き込まれている。
「こ、これは」
走りながらも魔法陣が城を中心に光り始めるのをアリスは見ていた。
つまりあそこで何かが起こっているということだ。
「急がなければ!」
アリスは足を更に早めようと力を込めるが、自分の意思に反して膝がガクリと崩れ落ちた。
地面へ転げてしまった体を立て直そうとするが、うまく力が入らない。
「くっ、どうなってるんだ」
悪態を吐きながら周囲を見渡すと、他の住人も同じように地に伏していた。
あちらこちらからうめき声が聞こえる。
まるで体の芯が抜かれたかのように、力が入らない。
フコカ国首都ハッカータは数分前までは活気溢れる街であったが、今聞こえるのは呻き声のみである。
そして。
ローミンの元へ集まる住民の力。
これは魔王のみ使える魔法。
本来であれば魔王城で使用するものだが、ローミンはそれを首都全体を覆うほど強大な魔法陣を作り上げていた。
(超時間がかかったがな)
何万人もの人間の精神力を自分の力へと変換する魔法は、ローミンにかつてない力を感じさせた。
「塵も積もればなんとやら、個々では弱い人間の力もこれだけ集まれば実に脅威である。
何せこうやって、先程までは歯が立たなかったお前と、同等の力を得ることができるのだから」
やがて全ての力を集め終えたのか、魔法陣は光を失い、
力を増幅させ自信に満ち溢れたローミンが、玉座から立ち上がった。
「さあ、第二ラウンドだ」
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