おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

魔王のチカラ4

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体に力が漲っている。
かつて一度魔王城にて使用したことがあるが、その時でもこの十分の一の力も出なかっただろう。

「くはははは」

ローミンは顔に手を当てて笑いをこらえる。
あまりの力に愉快で仕方がないのだ。
抑えようのない自信が腹の底から湧き上がってくる。

「くははは、すまない、いやこれは痛快だな。
 お前らはこんな力を奮っていたのか。
 確かにこれでは変な支配欲もでないかもな、それほどまでに圧倒的だ」
「??」
「だが俺はお前らとは違うんだ、悪いがこの力を使って支配させてもらう。
 それにはお前が邪魔だ」

カツカツと胸を張りながらちーちゃんに近づく。

「さあ、ちーちゃんよ、遊びの続きだ。」

目の前で胸を差し出されるのを見て、ちーちゃんは察する。

「それじゃ、いくよ!」

ぐっと握りしめる拳は、空気を引き裂き音よりも早いスピードでローミンの胸へと突き刺さる。
城内を震わせるほどの鈍い衝撃音が響くが、ローミンの体は一歩たりともずれていなかった。

ニット笑うローミンに、ちーちゃんは二度目の拳を繰り出す。
それを事も無げに受け止めるローミン。

「多少ダメージはあるが耐えられる程度だな。
 ではこちらの番だな」

拳を握り込んだまま、もう一方の手でそれを包み込む。
両手でちーちゃんの手を掴むと、遠心力を使いぐるぐると回す。

「わははははーーー♪」

楽しそうに振り回されるちーちゃん。
ローミンはそんなちーちゃんを空高く放り投げた。

城の天井を突き破り、空高く、雲を突き抜け、雲を突き抜け、雲を突き抜け。
ハッカータは遥か遠く豆粒のように見える。

「すっごーーーーーーい、なにこれーーー!!」

目線を少し上げれば地平線の丸みもくっきりと見える。
東を見ればそこはまだ夜の世界。

はるか上空で風景を楽しんでいるちーちゃんを余所に、ローミンはいまだ地上で空を見上げていた。
その目は数キロ先ではしゃぐちーちゃんを確かに捉えていた。

「いくか」

床を盛大に破壊しながら、ローミンは弾丸のように空高く飛びたつ。
一瞬にして風景を楽しんでいたちーちゃんの目の前に現れたローミン。

「あっ、おにいちゃん!」
「ふんっ!!」

ローミンは体を反転させ、ちーちゃんを地上へ向けて蹴り飛ばした。
それはまるで隕石のように城へと墜落した。
その勢いは、城の外からでも分かるほどの砂埃を撒き散らした。

ローミンは優雅に城へと降り立つ。
砂埃が収まると、ちーちゃんが服に付いたホコリを払いながら、わくわくした顔でローミンを見ていた。

「ねぇ、次はどんなのがあるの!?」


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