おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

魔王のチカラ5

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(これでも大したダメージを与えられないか・・・)

若干ローミンは焦っていた。
確かに強大な力を得ることが出来たが、あくまでもこれは仮の力。
あと五分も持たないだろう。

(であれば、全力で畳かける!!)

「肉体強化!! 肉体強化!! 肉体強化!!」

本来厳禁とされている強化魔法の重ねがけ。
効果は倍増するが、体が持たないため、過度なる重ねがけは身体の崩壊を招く。
それを承知でローミンは、ちーちゃんを倒すべく賭けに出た。

「ぐぅっ!!」

早速、副作用により内蔵の一部がやられ、口の中に血の味が広がった。
時間は長くない。

「ちーちゃん、これが最後の遊びだ。
 耐えれるものなら、耐えてみろっ!!!」
「うんっ!!!」




城下町では、倒れていた人々が徐々に起き上がり始めていた。
しかし城で起きている事象に、人々は不安を隠しきれない。

ドォオオン!!

ドォオオン!!
ドォオオン!!

ドォオオン!!

ドォオオン!!

ドォオオン!!

そしてまた、再び城から聞こえる轟音。
一体、城で何が起きているというのか。






「はっぁ、はぁはぁはぁはぁ」

城の中では荒い息を吐くローミンがいた。
魔法の酷使による体の異変により顔は苦痛に歪んでいる。

しかし口の端はわずかに上がっていた。
彼の目線の先にいる、床に倒れ伏した少女を見ながら。

ぴくりともしないその少女をみながら、徐々にこみ上げてくる笑いをローミンは抑えきれなくなった。

「はははははははっ!!
 勝った、勝ったぞ俺は勝ったぞーーーーっ!!!!
 あの村人に、どうしても手が届かなかった、こいつらに!!

 俺はようやく、ようやく至ることができるんだ、遥か高みに!!
 もう怯えることは何もない、ようやく俺は、くくくく。
 はーーーーはっはっはっははは!!!」

笑いすぎたローミンは内臓を痛めたことを忘れ、ごほごほと血を吐く。
それで少し冷静になったのか、口元を拭い気を取り直す。

「さてと、この身体もそろそろ限界だ。
 さっさとこいつの力をいただくとしよう」

一歩、二歩とちーちゃんへ向け足を早めるローミン。

そして、その手がゆっくりと伸びる。


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