Red Crow

紅姫

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赤烏の正体

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ーとある国の国王室

「国王様。先ほどミール国より、国を出たと連絡がありました」

大臣と思われる白髪の初老男性が片膝をつきながら、薄暗い部屋の中でも金色に輝く王冠を頭に載せた国王と思わしき男にそう言った。

「そうか、下がってよいぞ」

「はっ」

短く返事をし、大臣が去ると国王は戸棚からワイングラスを取り出し、なみなみと赤ワインを注ぐ。

一口、ワインに口をつけ味わうと国王はワイングラスをゆるく回し、ワインを波立たせながら窓の外に目線を向けた。

「もうすぐ」

「もうすぐ手に入る、あの国が…」

そうつぶやくと、国王は大きな声で笑いだした。

「あの国が手に入れば、我が国の軍事力は世界トップクラスになれる。そうなれば…」




「そうなれば、なんだって言うんだ?」





後ろから聞こえたその声に国王は振り向いた。
しかし、そこには誰もいない。


「誰だ…?」
キョロキョロと周りを見渡し、国王は声を荒らげる。
「どこにいる?」
どこか弱々しいその声は部屋の中に小さく響いた。



「国王とあろうお人が、そんな声を出すもんじゃないぜ?」



ヒタリと国王の首筋に何か冷たいものがあたった。



「っ!?」



即座に振り向き、国王は懐に入れてあった拳銃を撃ちまくる。

ガシャンッと窓ガラスが割れ、冷たい風が部屋に入ってくる。




その風に乗り、ヒラリとそれは舞った。
真っ赤なマフラー

「まさか……!?」

「…さようなら」


その言葉とともに、国王の首から血が吹き出した。

ナイフから滴る血を払い、その人物は感情のこもらない赤い瞳で物言わぬ国王を見つめ、何かを国王の死体にむけて放おった。

そして壊れた窓から、その人物は部屋を後にした。




コンコンッとノックの音がした。
「国王様、先程銃声が聞こえましたが何かありましたか?」

返答はない

「国王様?何かありましたか?」

返答はない

「失礼します」

大臣が扉を開けると、目に入ったのは事切れた国王。

「こ、国王様!」

慌てて近寄り、大臣は国王の死体に触れた。
まだ血の生暖かな温度が残っている。

そして、あるものが指に触れた。

「これは…!」

それは、作り物の赤い羽根。
それは、ある人物がこの場を訪れたことを示す合図。


「れ、RedCrow…!」


大臣の呟きは、主を失った部屋に虚しく響いた。











ーとある国のとある部屋にて


その人物は目を閉じていた。
鼻から下を隠していても分かるほどに端整な顔立ちをしている。
歳もまだ若い。


開け放った窓からはワイワイと騒ぐ城下の冬の祭りの声が聞こえてくる。

しばらくその声に耳を傾ける。

誰もが笑い、誰もが楽しんでいるのが声を聞くだけでよくわかる。



それもそのはず、この国の総統閣下の方針は『平和』である。
戦争をせず、皆が平和に過ごすことを望みこの国をお創りになった。
この平和の国の評判は世界中に広まっており、移民は絶えない。
そのため、この国の人口は世界トップである。

また、この国の立地も素晴らしい。
見晴らしが良い高台に広がる国は、周りを360度見渡すことができる。大地もいきいきとしており、毎年食べきれないほどの豊作をもたらす。そして何より、清く澄んだ水が城下中の水路を満たしている。

誰もが羨む地である。
それゆえ、“この地がほしい”“この地に軍を置きたい”と言ってくる戦争馬鹿な国は多い。
無論、平和主義なこの国がそれを受け入れることなどない。


そうなると、戦争馬鹿な国はこの国にむけて戦争を起こそうとする。もしくは総統閣下を殺そうとしてくる。


だが、この国には今までBB弾1つ撃ち込まれたことはない。


なぜなら……







「もうすぐか」

耳を傾けていた人物はそう呟いた。


そして、首に巻かれた長い赤いマフラーを丁寧にはずしていく。すべてはずすと、それを丁寧にたたみ戸棚へしまう。
次に、着ていた黒い服を脱いでいく。所々に赤みのあるシミが着いているのを確認すると、暖炉の中にその服を投げ入れ、マッチで火をつけた。

パチパチと暖炉が音をたてる中、クローゼットの扉をあけて同じ服が並ぶ列の中から一着を取り出し身につける。赤よりの茶色の軍服である。
シワがないかを確認するように姿見に自分を映す。
最期に靴を茶色の革靴に履き替える。

「さて…」

その人物は、ゆったり歩きだし、扉近くの洋服掛けから暗めの赤色のマントを身体に纏う。

そして、扉を開け部屋を出た。


カーペットの敷かれた廊下をゆったりと歩き、階段を降り、大きな扉の前にその人物は立った。
そして、鍵を外しキィと音を立てて扉を開けた。

そこには、今まさに扉をノックしようとしていた従者と黒い軍服に同じく黒いマントを羽織る若い男。


「おかえりなさいませ、リュウイ=レラ=ウェンチェッター総統閣下」
「ただいま、相変わらず察しがいいね」
「総統閣下がお帰りになるのですから、当たり前のことです」
その人物はうやうやしく頭をさげる。
その横をリュウイ総統閣下は通り過ぎる。

「あとは私が側につく。君はもういいよ」

と従者に声をかけその後に続いた。


総統室と書かれた扉の前で、その人物は総統の前に立ち、扉を開け招き入れる。


リュウイ総統の席に着いた瞬間に

「ハァ…」

と総統は息を吐いた。

「気を抜き過ぎです、総統閣下」
「堅苦しいのは苦手だよ、知ってるだろ?だからその話し方やめてくれ、ユウ」

呆れたようにユウと呼ばれたその人物はため息を吐く。

「それで話し合いはどうなったんだ?」
「それが、聞いてくれよ!せっかく行ったってのにさ、あの国の国王が赤烏に殺されてたんだ」

城中パニックでとても話はできなかった、行き損だ!と話す総統。

「いいじゃないか、どうせ断る予定だったんだし」

「そうだけどさ…片道3時間だぜ?」

疲れるわ…。と嘆く総統に

「よくそんなんで、総統できてるよ…お前」

とユウは呆れた声を出す。


「そりゃあ…ねぇ」

ジッとユウを総統は見つめる。

「俺には優秀な右腕がいるからね、そうだろう?ユウィリエ=ウィンベリー書記長殿?」

ユウはニィと笑って

「もちろん。全ては君の望みのためさ、その為にはどんな事でも私はするよ、リュウ」

そう答えた。








周りを見渡せ、穀物も豊富に育ち、人もたくさんいる、完璧な国、ミール国を狙う戦争好きな国は多い。
だが、ミール国の指針は平和主義のためそれを受け入れることはない。
それ故に、他国から狙われることは多い。
しかし、今までミール国にはBB弾1つ撃ち込まれたことはない。

なぜなら

ミール国に手を出そうとしていたり、企んだりしている国のトップは殺されてしまうからだ。
アサシン、赤烏ーRedCrowーに


そのRedCrowの正体
それは…


ミール国のリュウイ=レラ=ウェンチェッター総統閣下の優秀な右腕であり、総統閣下に忠誠を誓っている書記長



ユウィリエ=ウィンベリー



その人である。
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