Red Crow

紅姫

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忌み子と花売り②

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ー3日前

「そういえばさ」

と食堂で口を開いたのはリュウイだった。
視線の先には少し枯れかけたマリーゴールドの生けられた花瓶が置いてある。

「ゼード村って何処にあるんだ?聞いたことないよな?」 

「そうだね。聞かない名前だよね」

首を傾げ答えたのはルナ。

マリーゴールドを見ていて、私が以前話したことを思い出したらしい。

「まぁ有名な村ではないからな」

と私が言うと

「知ってるの?」

とルナが言い、視線がこちらに集中する。

「僕も知ってますよ。ここから行こうとすると…1時間位かかりますかね」

キースが私の代わりに答えてくれる。

「1時間もかかるのか…。その女の子歩いて帰ったのか?」

「そうだろうな」

「そんな!何時間かかるってんだよ、車で1時間の道を歩くなんて!」

「あ、言い方が悪かったな…」

慌てるリュウイを見て私は言った。

「徒歩で1時間位だ。車ならもっと早い。道も平坦だし、子供でも十分帰れる道だよ。それに、少女の靴は汚れてなかったから、多分この国に向かう車にでも乗っけてもらったんじゃないかな」

「そうか…」

とホッとするリュウイ。それとは対象にルナの顔は険しくなる。

「待ってよ、徒歩1時間圏内の村を僕らが認知してなかったなんてありえなくない?」

「あ~」

私はどう説明したものかと頬をかく。

「ユウが、困るなんて珍しい…」

ノアが私を見上げた。

「なら、僕が説明しましょう」

「頼むわ」

キースの提案にのり、私は説明を譲った。


「ゼード村は確かにこの国の近くにありますが、知らないのも無理はありません。ゼード村は世界から隔絶された村ですから」

「世界から?」

「隔絶…?」

ゾムとノアが首を傾げる。それに苦笑しながらキースは続けた。

「はい、その昔ゼード村はある国の中の1つの村でした。しかし、国が滅び、他の村の人たちが他の国へ移民する中、彼らは定住を選んだんです」

「ヘー」

「なるほど、それで僕らが知らないってわけね」

「ん?どういう事?」

キースの少ない情報でルナは理解したようだ。
頭に?マークを浮かべるリュウイにキースは説明する。

「リュウさん、この世界の地図の規定はわかってますよね?」

「え?あぁ…」

この世界では国ができれば地図が上書きされていく。
しかし、もしも国が滅べばそこは白紙ではなく、『旧~国』と記される。
その地に新しい国ができれば、それは上書きされていく
また、国の中にある村は地図上には描かれない。

「滅んだ国の中にあった村だけが残った場合、地図上に村の名が記されることはありません」

「つまり、ゼード村は地図上に無い…そこにあるのに無いものとされている、まさに隔絶された村ってわけさ」

キースの説明を引き継ぎ、ルナは言った。


「はー、なるほどなぁ」

リュウイはウンウンと頷いてみせる。
が、ん?と声を漏らし私とキースに聞く。

「お前たち、その村のことよく知ってたな」

「私は小さい頃に連れてってもらったことがあるんだ」

「僕もありますよ、と言ってもかなり前ですが」

同じ師匠のもとにいただけあってキースも行ったことがあったらしい。

「ヘー、どんな所だった?」

興味しんしんにリュウイが聞く。

「小さな村だが、なかなか感じがいいところだったよ」

私は昔を思い出しながら言う。

「客人にも優しくてまるで家族のように迎え入れてくれる…そんな村でしたね」

「そうだな。村長がいい人だしな」

「あ!そうです!僕もあの村長さん大好きでした」

キースは懐かしむように笑う。

「柔和で子供好きで、とっても優しい人でした」

私とキースが昔話に花を咲かせていると

パンッ

とリュウイが手を叩く。


「よし、決めた!」

「?何を?」

「その村と交渉をしよう!」

「は?」

ルナが声をあげる。

「だっていい所何だろ?だったらいいじゃんか」

「いや…そうだけど…」

とルナが説得しろという目で私を見る。

「はっきり言って利益は期待できませんよ?あの村は自給自足の生活してるような所でしたし」

キースもどうにか止めようとしている。

「別に利益を求めるつもりはないよ」

リュウイは事も無げに言う。

「へ?」

「じゃあ、なんの目的で?」

キースの質問に

「ミール国の保護下に入ってほしいんだろ」

私が答えた。

「さすが、ユウ。よく分かったね」

「昔、お前言ってたろ?『小さな村は大きな国の保護下に入って守られてる方が安全だ』って」

「そういや、そんな話したね。で?どうよ」

「…許可できない」

「なんで!!」

私の答えにリュウイは子供のように声をあげる。

「良い村だったのはあくまでも私が小さい頃…昔の話なんだ」

「それが?」

「私が行ったときで村長はかなりの高齢だった。もう亡くなってる可能性が高い。今の村長がどんな人なのか分からない状態での決定は危険だ」

「…」

「それに…」

私はリュウイの目を見て言う。

「前話した少女の件といい、今のあの村が良いところだと断言する根拠が少ないんだ」

「…なるほどなぁ」


リュウイは少し考える素振りを見せる。


「じゃあ、こういうのは?誰かが村に行って見てくる」


リュウイが提案した。
どうやら、諦める気はないらしい。

私達(リュウイ以外)は顔を見合わせる。
こうなったら、付き合うしかないのだ。

「じゃあユウ、行ってきなよ。昔行ったんでしょ?」

「なぁにコッチに丸投げする気なんですかねぇ」

ルナを睨む。が、効果はあまり無い。

「だって僕ら、場所わからないし」

「う…」

そこを突かれると…

「僕も同行しますよ」

とキース。

「…キース、お前は駄目だよ」

しかし、即座にリュウイが却下した。

「え?なんでですか、リュウさん?」

「なんでって…俺ら明日出かけるだろ?」

「あ…」

そういえば、明日からリュウイ達は貿易国に行くんだったな…

「やっぱり、ユウが一人で行くのが一番平和だよ。行ってきな。ノアの側には僕がいてあげるから」

「お前なぁ…」

と言いつつも確かにそれが1番良い気がする。

「俺が付きそう!」

手をピシッと挙げて言ったのはゾムだった。

「ゾムが?」

「だって、リュウ達は明日行って、2日後には帰ってくるだろ?なら、キースが居るし、俺が居なくても大丈夫じゃん」

「まぁ確かに…」

「それに、ユウ一人で行かせるのは危険だしね」

「それもそうだな…」

リュウイは頷き、

「よし、ユウとゾムに任せるよ」

と言った。


こうなればもう決定事項だ。
私は頭の中で計画を立てる。残っている書類を片付けなくては…それに、一応、ゼード村に行くと連絡を…





そんなこんなで私とゾムはゼード村に行くことになった。
次の日にはゼード村に連絡し、いつでも来ていいとの許可を得た。
私とゾムがミール国を出たのは、私の書類整理が終わった後


私とゾムと名も知らぬ少年が檻に閉じ込められる前日のことである。

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