自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

文字の大きさ
65 / 167
第六章~選択~

三人の秘密

しおりを挟む
 右側に楓、左側にミナミという両手に花状態で学校に向かう。
 駅での牽制のし合いが嘘の様に仲良く喋っている。
 そんな二人に向けて質問する。

「楓とミナミが勝負してる事は中居達には言うのか?」
「ん~、言わない方がいいかも」

 と、答えたのは楓だ。

「理由はどうであれ、私達が別れた原因は南だから中居は納得しないと思う」

 確かに第三者から見れば、別れた原因の女子が猛アピールしてるのを快く思わないかもしれない。
 中居は正義感が強いから尚更だろう。

「それじゃあ学校では今まで通りに過ごした方が良さそうだな」
「そうだね~」

 と楓と結論づけるとミナミが

「気を使わせちゃってごめん」

 と謝って来た。
 それに対して楓が

「気にしなくたっていいよ。でもこれじゃ公平な勝負にならないね」
「どうしてだ?」
「私は学校でアピール出来るけど、南は学校じゃアピール出来ないでしょ?」
「ああ、確かに」

 普段通り過ごすとなるとミナミは何も出来ない。
 どうするか悩んでいるとミナミが

「提案があるんだけどいいかな?」

 と言ってきたので

「何かいいアイディアでも思いついたのか?」

 と聞くと

「夏休みまであと少しでしょ? だからその間は私は我慢するよ。その代わり夏休みに入ったら最初の3日間は私に頂戴。キャンプまでの残りの日は一日おきに順番でアピールする日にするの。どうかな?」

 ミナミの提案を聞いて楓が考える。
 今の提案なら中居に気づかれる事もないと思う。

「俺はミナミの提案でいいと思うけど楓はどうだ?」
「最初の3日間だけでいいの? 夏休みまで2週間はあるよ?」

 楓だけ独り占めできる時間が多いけどいいのか? という事だろう。
 楓の質問に対してミナミは

「私の自業自得だし仕方ないかなって。それに学校でアピールできなくてもLINEでやり取りできるしね」

 とスマホを見せながら言う。

「南がそれでいいなら私は何も言わないよ」
「ありがと楓」

 といった感じで今後の方針が決まる。
 夏休みの順番等はまだキャンプの日取りが決まっていないので後日決める事になった。

 ミナミの提案を受けてから三日が経った。
 その間も学校では楓が付き合ってる時と変わらず手作り弁当を作ってきたり、スキンシップが多くなった事から水樹から

「お前達ホントに別れたのか?」

 と言われる程だった。
 ミナミはいつも通り俺達を及川と一緒になって揶揄っていた。

 そして期末試験も終わり、明日から部活が再開となるので全員でファミレスに集まっていた。

「試験も終わった事だし本格的にキャンプの計画進めるか」

 と水樹が切り出すと、田口が待ってました! と言わんばかりに

「よっしゃー! 遊ぶぞー!」

 と気合を入れていた。
 試験で鬱憤が溜まっていたのかいつもよりも声がデカイ。

「前少し話したけど新島の言ってた所で問題ないか?」

 と全員に確認を取る。
 反対意見など出る筈も無く、全員が頷く。

「そんで費用なんだが、向こうで機材や食料は準備されてるらしいから一人辺り一万と見といてくれ」

 水樹の仕切りでどんどん話が纏まっていく。
 俺もいつか水樹の様になれるのだろうか。

「日程についてだけど、部活組はいつまで部活ある?」

 と聞くと中居が

「7月一杯は無理だな。行くなら8月はいってからだ」

 とサッカー部のスケジュールを言う。

「私は部活の合宿もあるから行けるとしたら8月の頭らへんかな~」

 と楓が答えると、それに続いてミナミが

「私も合宿あるから楓と同じかなー」

 と答える。
 そして今度は俺に予定を聞いてくる。

「友也は何か予定とかあるか?」
「いや、特に予定は無い」
「そうっすっと、8月の頭で決まりだな。後は今から予約が取れるかどうかだな」

 と言って顎に手を当てて真剣に考える。今から予約となるとどこも一杯で難しいかもしれない。
 最悪計画自体が流れてしまう。
 そんな暗い雰囲気を吹き飛ばす様に楓が立ち上がり

「こんな事もあろうかと、キャンプの話題が出た時に予約はしておきました~!」

 と言って自分の胸を叩く。

「さすが新島、抜け目ないな」
「へっへ~ん! もっと褒めていいからね~」
「で、何日に予約入れたんだ?」
「8月3日に入れといたよ。事前に各部活の顧問にスケジュール聞いておいたからね!」
「新島には頭上がんねーわ」

 なるほど、これで納得がいった。
 ミナミと勝負する時にキャンプまで時間ないけどと言ったのは既にキャンプの日程が分かってたからか。
 ここまでいくと楓がどこまで計算してるのか分からないな。

 その後、持っていく物や集合時間等を話し合って解散となった。
 
 最寄り駅からの帰り道、ミナミと歩いていると

「今二人きりだけどいいのかな? 夏休みまで我慢するって言ったのに……」

 と、申し訳無さそうに言うので

「問題ないだろ。皆で集まったら最寄り駅が同じの俺達が一緒になるのは仕方ないって」
「そうかな?」
「それに楓も何も言って来ないだろ? だから大丈夫だよ」
「そっか、そうだよね!」

 と言って大きく伸びをした後にクルッと周ってこちらを向き、満面の笑みで

「トモ! だーい好き!」

 と言って抱き締められた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

処理中です...