自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

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第七章~ヒメゴト~

自分を重ねて

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 楓の発言により、沙月は楓の存在を思いだしたのか俺から距離を取る。

「ご、ごめんなさい! デート中でしたよね」

 と言って俺と楓に向かって頭を下げる。
 
 よかった。これで何とかこの場は納まる。
 と考えていたら楓が

「どうして友也君を頼ったの? 貴女のお姉さんなんでしょ?」

 と、沙月に質問する。
 それに対して沙月は

「姉とは相性が悪いと言いますか、苦手なので友也さんに頼ってました」

 と、少し俯きがちになりながら言う。
 それを聞いた楓は

「友也君、その人に会ってみたいから助けに入ってあげて。私はそれとなく観察してるから」

 と言い、沙月に「構わないでしょ?」と言って俺を制服に着替えさせる様に促す。
 
 仕方がないので制服に着替え、ホールに出る。
 すると

「ホントにありがとうございます。いい彼女さんですね」

 と言ってきたので

「今回だけだからな。それに楓は彼女じゃない」
「え? そうなんですか!」

 とビックリしているが、俺達の関係を説明するのも面倒だったのでそのまま無視した。
 そんな話をしていると

ピンポーン

 と呼び出し音が鳴る。
 テーブルを確認すると、沙月のお姉さんの居る席だった。

「んじゃ行ってくる」

 と沙月に言い、呼び出されたテーブルに向かう。
 そして、いつの間にか席を移動していた楓が沙月のお姉さんの真向かいの席に居た。

「お待たせしました、ご注文はお決まりでしょうか?」

 と声を掛けると、ゆっくりとこちらを見上げ

「あ! えっと、今日もあなたなんですね」
「ええ、桐谷は今他のお客様の接客中でして」
「は、はい。いつもこの時間に働いてるんですか?」
「今日はたまたまです。人手が足りないらしく急遽入りました」
「そ、そうなんですね」

 今日はよく喋るな。
 まぁこの間ずっと俺が担当してたから慣れたのかな?
 それよりも

「えっと、ご注文はお決まりですか?」
「あ! す、すみません! アイスココア一つお願いします」
「かしこまりました、少々お待ちください」

 カウンターに戻ると沙月が

「何か話してませんでしたか! 何をはなしたんですか?」

 と、食い気味に聞いてくる。

「ああ、いつもこの時間に働いてるのか聞かれたかな」
「え! あのお姉ちゃんが……」
「前回ずっと俺が担当してたから俺に慣れたんじゃないか?」
「そうですか……」

 何やら考え込む沙月を余所に、出来上がったアイスココアを持って行く。

「お待たせしました、アイスココアになります」
「あ、ありがとうございます」
「では、ごゆっくりどうぞ」

 と立ち去ろうとした時

「あ、あの!」

 と声を掛けられた。

「はい、いかがなさいましたか?」
「えっと、その……」

 顔を赤くして言おうか言わまいか悩んでいるようだ。

「ご気分でも優れませんか?」

 と聞くと

「い、いえ! そうではなくてですね……」
「?」
「つ、次は、い、いい、いつ出勤ですか?」

 言うと同時に耳どころか首まで真っ赤に染まった。

「次は明後日の出勤になりますが」
「そ、そうですか。ありがとうございます」

 と言って深々とお辞儀をする。
 そして今度こそ席を離れる。

 カウンターに戻り沙月を呼ぶ。

「沙月は次のシフトはいつ入ってる?」
「次ですか? はっ!? もしかして姉に聞かれましたか?」
「いいから! 次はいつ出勤だ?」
「もうなんなんですか~。今週は明日で終わりです」
「そっか」

 と言う事は明後日に確定するのか?

 俺の自惚れでなければ、お姉さんは俺に好意を持っている。
 昔の俺がそうだった様に、優しくされただけで好きになっているのだろう。

 
 その後お姉さんが帰った事で俺も休日出勤から解放された。
 楓の所に戻り謝る。

「ごめん、折角のデートなのに」
「ううん。私が助けてあげてって頼んだんだし気にしないで」

 ずっとお姉さんを観察していたみたいだけど何か分かったのだろうか。

「観察して何か分かったか?」

 と聞くと

「昔の友也君みたいって感じた」

 やっぱり楓もそう感じたのか。

「それと、あの人は友也君の事好きかもね。好意を抱いてるのは確実だと思う」
「それは俺も思った」
「昔の自分と重ねちゃった?」
「まぁな……」

 俺に抱いてる感情は本物なのだろうか。
 優しく話しかけてくるから好意を抱いてるだけなのだろうか。
 今の段階では分からないけど、もし本物だったら俺は……。

 しばらくして店を後にする。
 駅に向かいながらずっと気になっていた事を聞いてみる。

「どうして助けてあげてなんて言ったんだ?」

 そう質問すると、意外な答えが返ってきた。

「最初は友也君にちょっかい出す敵だと思ったんだけど、見てて気づいたの。この子は友也君を見てないって。だからこの子は放っておいても大丈夫かなって」

 楓の言葉を聞いて、バイトの先輩から聞いた噂を思い出す。

『面食いで男をとっかえひっかえしているらしい』

 噂を信じるつもりはないけど楓は何かを感じたらしい。
 俺には普通の女の子に感じるけどな。
 でも楓が何かを感じてるのなら何かあるのかもしれない。

 だとしたらやっぱりあの姉妹は放っておけない。
 やれる事はやろう!

「楓」
「ん? どうしたの?」
「俺はあの二人を放っておけない」
「うん」
「俺は楓が好きだ! だから……」
「大丈夫、分かってるから。でもミイラ取りがミイラにならないでね?」
「ありがとう」

 自己満足かもしれないけど、俺に出来る事は何でもしたいと思った。
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