自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

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第8章~宵越しの祭り~

文化祭2日目①

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 文化祭2日目の朝、俺が教室に入るや否や

「友也ー、ちょっとこっち来なー」

 と早川から呼び出しを食らう。
 朝っぱらから元気だなーと思いながら早川も元へ行くと

「勝負の事は忘れてないよね~?」

 と言いながらニヤニヤしている。
 もう既に嫌な予感しかしない。

 早川は一枚の紙を突き出して

「じゃ~ん! 昨日は私達の勝ちみたいだね~」

 言われ紙をみると、昨日の総合売上金額が書かれてあった。
 なるほど、機嫌が良かったのはその為か。

「どうよ、私達の力は」
「まだ初日の結果だけじゃんか」
「どうだろうね~、世の中は男の方が人口多いからね~」

 と勝ち誇った顔をしている。
 悔しいので嫌味で返してやろう。

「そうだな。でも、メイド喫茶だけにしとけばもっと儲かったんじゃないか?」
「は? 意味わかんないし」
「いや、だから、最初からメイド喫茶にしとけばよかったんだよ」
「それじゃ執事服来たイケメン見れないっしょ」
「なんだ早川、執事好きだったのか」
「別にそういう訳じゃないし。あんたらにサボられるのが嫌だっただけだから」
「はいはい、んじゃ今日は頑張ってくださいね」
「結果見てビビるんじゃねーぞ!」

 というやり取りを経て執事グループに行く。
 昨日は死んだ魚の様な目だった木村が復活していた。

「ふふふ、昨日はたまたま佐藤君の知り合いが超絶美少女だっただけさ。今日は逃がさない」

 と一人でブツブツ言っているので放っておく。
 中居と水樹の元へ行き

「昨日はお疲れ」
「おっす友也」
「おう」

 と軽く挨拶を済ませた後

「今日は二人はどうするんだ?」

 と聞くと水樹は

「取りあえず今日は年上を狙って行こうかな」
「いや、ナンパの話じゃなくて」
「はは、冗談だって。流石に自分の学校でナンパなんかしないって」
「その割には昨日連絡先交換してたみたいだけどな」
「あれは向こうから聞いてきたんだよ。ホントだぜ?」
「はいはい、程々にしとけよ」

 今度は中居に聞いてると

「及川が一緒に周りてぇっつーから及川次第だな」
「食い物屋ばかり周りそうだな」
「あいつメチャクチャ食うからな。何処に入っていくんだか不思議だわ」

 やれやれと肩を竦める。

 今日は交代で休憩があるので俺も色々見て周るつもりだ。
 しかし午後にはステージがあるのである程度行く所を絞った方がいいな。

 そうこうしている内に校内アナウンスが流れ、二日目が始まった。

 午前中は中居と水樹が自由時間なので厳しい戦いになりそうだ。
 それに木村が昨日の様に暴走しない様に見張っておかないとな。

 昨日の評判が良かったのか、客足は順調で途切れる事は無かった。
 途中途中で木村が暴走しかけたが、何とか未然に防ぎ事なきを得た。

 しかしいつの間にか店のシステムが指名制に変わっていたのには驚いた。
 どうやら昨日の沙月達が俺を指名するのを見たお客さんが、ここは指名制と勘違いしたらしい。

 だが、これ幸いにとシステムを変えて殆どのお客さんの相手を俺がする事になった。
 木村、松本はそんな俺の手助けに回る。

 そして気が付いた。
 これじゃただのホストクラブじゃないか!

 
 昼休憩が終わり、中居と水樹が戻って来た。
 しかし中居の顔色が優れない。

「どうした中居! 気分でも悪いのか?」
「及川の奴、食い物屋ばかり周りやがった」
「はは、それは災難だったな」
「それより友也、店の方はどうだった?」
「それが……」

 俺が事情を説明すると

「よっ! ナンバーワンホスト!」
「だからホストじゃないっての」
「はは、でも考えようによっちゃ楽かもな」
「そうか? 俺は大変だったぞ」
「それは友也のやり方が悪いんだよ。基本的に相手の話に相槌打っておけばいいんだよ」
「それで接客になるのか?」
「なるんだよ。客はイケメンと一緒に居たい、話を聞いて貰いたいって感じだからな」
「随分詳しいな。ひょっとして……」
「いやいや、働いてないからな」
「なら安心したよ。でもこれで午後は任せられるな」
「ああ、任せとけ。友也はバンド頑張れよ」
「やれるだけやってみるよ」


 水樹達と入れ替わりで自由時間になったが、一緒に周る相手がいない。
 楓と南を誘ったが店が忙しく無理だと断られてしまった。

 さて、何処から周ろうかと考えていると

「あれれ~? 友也さんがいる~」

 と正面から沙月がやってきた。
 昨日来たのに今日も来たのか。

「お前今日も来たのか」
「昨日は友達の付き合いで、今日はプライベートで来ました」
「そっか、暇人だな」
「ひどくないですか~?」

 と言いながら俺の後をついてくる。

「なんで付いてくるんだ?」
「なんで付いてこないと思ったんですか?」
「沙月も見たい所あるだろ?」
「なら問題ないですね。私が見たいのは友也さんですから」
「はいはい、そうですね」
「も~、もっと優しくしてくださいよ~」

 と言いながらその場で立ち止まってしまった。
 まぁ、一人で周らなくて済みそうなので

「ほら、行くぞ」

 と言って沙月の手を取る。
 すると沙月は

「ヤバイです! 今のはキュンとキました!」
「そうか、それはよかったな」
「はい!」

 と満面の笑みで答える。
 くそ! その笑顔は卑怯だろ。


 こうして俺の文化祭2日目の本番が幕を開けた。
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