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第10章~彼氏彼女の事情~
不機嫌
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昇降口を出て校門まで走る。
校門に着くとさっきまで居た沙月の姿が見えない。
何処に行ったんだ? 校門近くを探していると塀の後ろに居た。
やっと見つけた近づいて行くと男の姿もあった。
どうやら沙月と何か話してる様だ。
ウチの制服を着ているが見た事がないので1年か3年だろう。
俺はワザとらしく声を張って
「沙月、待たせて悪いな」
俺に気づいた沙月は小走りでこちらにやって来る。
男はというと、その場で固まっていた。
「なにしてたんだ?」
「ナンパされちゃいました。彼氏を待ってるっていってもしつこいんですよ~」
「ふ~ん」
それを聞いて未だに固まってる男の元へ行きネクタイを見るとどうやら3年生のようだ。
「なんだ、佐藤の彼女だったのか。悪いな、知らなかったんだ」
「彼氏を待ってるって言ってもしつこかったみたいですけど?」
「佐藤の彼女だって知ってたら直ぐに諦めてたよ。悪いな」
「今回は沙月にも落ち度があるので、諦めてくれるならそれでいいですよ」
「おう、悪ぃな。こんどから気を付けるわ」
そう言って先輩は校舎の方へ戻っていった。
それを見送ってから沙月に向き直り
「沙月、しっかりしないと駄目だろ」
ただでさえ可愛いのにお嬢様学校だから目立つんだよな。
「ごめんなさい」
「それより今日はどうして来たんだ? また柚希に呼び出されたのか?」
「いえ、今日は私が友也さんと一緒に帰りたいなーって思って来ちゃいました」
「それだったら連絡してくれればよかったのに。わざわざこっちまで来なくても俺が迎えに行ったよ」
「サプライズってやつですよ!」
「はは、わざわざそこまでしてくれなくても。でもありがとな」
そう言いながら頭を軽く撫でるが、沙月は「む~~」と頬を膨らませていた。
凄い嬉しいが少々強がってしまった。
だが頬を膨らませる沙月も可愛い!
てっきり柚希が呼び出したと思ってたけど違うんだな。
さっきの先輩も柚希の差し金かと思ったけど、沙月が来る事をしらないなら先輩は関係ないか。
それにしても俺と帰りたいからウチの学校まで来るとか可愛すぎる!
それに自然と腕を組まれると焦る。柔らかい! 何処がとは言わないけど。
「そういえば沙月に話があったんだ」
「まさか、別れ話ですか?」
「そんな訳ないだろ。取りあえず歩きながら話すよ」
駅までの道中、今日話し合ったクリスマスパーティーの事を話すと
「私も参加していいんですか?」
「嫌か?」
「いえ、是非参加させてください!」
「はは、沙月ならそう言うと思ったよ」
俺の予想通り沙月はクリスマスパーティーに食いついた。
後の細かい準備とかはグループで話せばいいだろう。
そう考えていると、急に沙月が立ち止まった。
「どうした?」
「友也さん、これから買い物に付き合って貰えますか?」
「ああ、いいけど何買うんだ?」
「それは後のおたのしみです」
こうして沙月に連れられて買い物に行く事になった。
俺の最寄り駅付近のデパートの近くにある古い洋服店に着いた。
個人で経営している店の軒先には派手なドレスなどが陳列されていた。
「ささ、友也さん、この奥です」
「お、おう」
店内に入ると外に飾られているドレスが可愛く見える程キワドイ物まで飾られてある。
なんだありゃ? 只のヒモにしかみえないぞ!
まさか沙月の奴クリスマスが近いからリミッターはずれてるんじゃないか?
などと心配していると
「あった! 友也さんありましたよ!」
と店の奥から呼ばれ、そちらに向かうと、沙月が手に持っているモノをみて納得した。
「サンタの衣裳探してたのか」
「はい! クリスマスと言えばサンタさんですから!」
「結構な種類があるな」
「どれにするか悩みますね。取りあえずコレを試着してみます」
そう言ってさっきまで手に持っていた衣裳を持って更衣室に入っていった。
暫く待つとカーテンが開けられ、オーソドックスなサンタの恰好をした沙月が現れた。
「どうですか?」
「いいんじゃないか?」
「う~ん、じゃあ次はコレ着てみます」
そう言って再び更衣室のカーテンが閉められる。
そして着替え終わった沙月がカーテンを開けると、そこには超絶ミニスカサンタが居た。
ヤバイ! その恰好は反則だ! スカート短すぎてしゃがんだら見えちゃうんじゃないか?
「ちょっと恥ずかしいですけど、似合いますか?」
「いいんじゃないか?」
「む~」
またカーテンが閉められ、着替えを始めた。
あれ? 今回は何も持っていかなかったな? と考えているとカーテンが開き、制服姿に戻った沙月が出て来た。
「友也さん! どっちが良かったですか?」
「ん~、どっちも良かったよ」
「あっそ、そうですか」
そう言って何も買わずに店内から出て行く。
慌てて後を追いかける。
「何も買わないのか?」
「なんで何も買わないかわかります?」
「気に入ったのが無かったんだろ?」
「……もういいです!」
そう言ってスタスタと速足で歩いて行ってしまう。
何かマズイ事言ったかな? と思いながら沙月に並ぶ
「何か怒ってるのか?」
「……」
「何でそんな不機嫌なんだ?」
「ふーんだ」
「謝るから機嫌直してくれって」
「じゃあ聞きますけど、何に対して謝るんですか?」
「それは……不機嫌にさせちゃったから?」
「もう知りません!」
さっきよりも更にスピードを上げて俺が追いつく前に改札を潜って行ってしまった。
何で怒ってるのか分からないが、このままじゃマズイと思い後を追いかける。
おかしい。ついさっき改札を潜った筈の沙月の姿が見当たらない。
電車はまだ来ていなかったのでホームの何処かに居る筈なんだけどなぁ。
とりあえず沙月のウチの最寄り駅で待ってればその内現れるだろうと思い電車に乗る。
最寄り駅に着いた俺は改札の近くにあるベンチに腰を降ろし、沙月が出て来るのを待つ。
あれから1時間経ったが一向に沙月が現れる様子が無い。
メッセージを送っても既読スルーされるし、これは本気でヤバイんじゃ……。
最悪のシナリオを描いていると、俺の隣に男がドカッと乱暴に座った後、盛大な溜息を吐いた。
荒れてるなぁ、巻き込まれても嫌だし場所を移動しようとすると
「は? なんで佐藤が此処に居んだよ?」
急に名前を呼ばれたので隣の男を見ると
「中居!? どうして此処に」
「そりゃコッチのセリフだ」
あの盛大に溜息を吐いていた男が中居だったなんて。
普段からは想像出来ないな。
まさか中居と会うとは思わなかったけど、及川と半年以上付き合ってるんだよな。
よし、沙月がどうして怒ったか相談してみよう。
及川と半年以上付き合ってる中居なら、どうして沙月が不機嫌になったか分かるかもしれない。
「なぁ中居、相談があるんだけどいいか?」
「相談?」
「実は……」
今日沙月に会ってから別れるまでの経緯を全て話す。
俺にはどうして沙月が不機嫌になったか分からないけど、中居なら何か分かるかもしれない。
俺の話を聞き終えた中居は額に手を当てながら「はぁ~」とため息と吐く。
「俺がどうして此処に居るか分かるか?」
「この辺に住んでるとか?」
「まぁ住んでるな、及川が」
「じゃあ及川とさっきまで一緒だったのか」
「あぁ、だけど急に不機嫌になって帰りやがった」
「えっ!」
「俺も佐藤と同じだ。どうして不機嫌になったか分からねぇ」
「そうだったのか」
中居も急に及川が不機嫌になって及川に帰られたらしい。
だからさっき大きなため息を吐いていたのか。
「中居達は何をしてたんだ?」
「お前達と余り変わらねぇよ、服を買いに行って、途中から不機嫌になって帰りやがった」
なるほど、シチュエーションは俺と余り変わらないな。
だとしたら、沙月が不機嫌になった理由も及川と同じ理由かもしれない。
「及川と沙月が怒った理由が似てるかもしれないから二人で考えてみないか?」
「あぁ、俺も同じ事考えてたわ」
こうして互いの喧嘩した理由を考えてみる。
服屋に行くまでは普段と変わらなかったみたいだから、やっぱり原因は服関連だろう。
服関連で怒る要因としては、選んだ服を似合ってないとか言ってしまってないかだろう。
いや、俺は沙月にそんな事言ってないけど不機嫌になった。
もしかして怒ってる理由は服関連じゃないのか?
でも服選びから不機嫌になったし……。くそ! 俺じゃどうして不機嫌になったか解らない。
「何か分かったか?」
「全っ然分かんねぇ!」
「「はぁ~」」
同時に溜息を吐く。俺達じゃどうすればいいか分からない。
柚希に相談しようか? でも、多分冷やかされるから止めとこう。
でもこのまま二人で考えてても解決しなそうだしなぁ。
他に誰か相談出来そうなのは……そうだ!?
「中居、水樹なら何か分かるんじゃないか?」
「なるほどな。確かにアイツなら何か分かるかも知れねぇな」
「ちょっと電話してみるわ」
そう言ってポケットからスマホを取り出し通話タップする。
プルルルッ プルルルッ
いつもなら数コールで出るのだが中々出ない。
それから十数コールして留守番電話に切り替わったので通話を切った。
「ダメだ、出ない」
「チッ、こんな時に」
水樹に連絡が取れなかった事で、中居の機嫌が更に悪くなっていく。
しかし、及川と喧嘩しただけでここまで凹むなんてな。
まぁ、人の事は言えないけど。
なんて事を考えていると、水樹から着信が来た。
俺は慌てて通話をタップする。
「もしもし!」
「友也か? さっきは出れなくて済まなかったな。バイクの運転中だったんだ」
「そうだったのか」
通話してる俺を見た中居が「水樹か?」と聞いてきたので頷く。
「んで、何か用だったか?」
「ああ、その事なんだけど……」
水樹にも中居に話した内容を話す。
それと同時に中居も同じ状況で一緒に居る事を伝える。
「なるほどな」
「俺達はどうすればいい?」
「中居の意見も聞きたいから変わってくれないか?」
「わかった」
水樹が話したがっている事を伝え、スマホを中居に渡す。
通話を始めた中居だが、何やらバツが悪そうにしている。
水樹に何か言われたのか、中居は「分かってるって」「そりゃそうだけどよ」と言っている。
それからしばらくして中居がスマホを手渡してベンチにうな垂れてしまった。
マジで何を言われたんだろう?
「もしもし、中居がうな垂れてるけど何を言ったんだ」
「色々とな。それよりも、友也だって他人事じゃないだろ」
「ああ」
「まぁ、中居の場合は今回が初めてじゃないからな」
「どういう事だ?」
「誕プレ作戦の時チラッと話したけど、中居は一年の時に彼女が居たんだよ」
「そう言えばそんな事いってたな」
「んで、別れた原因が今回と同じなんだよ」
「あぁ、なるほど」
元カノと別れた原因だから中居にいつもの余裕が無かったのか。
でも、裏を返せばそれだけ及川の事を大切に思ってるって事だよな。
問題はそれだけ大切に思っていても不機嫌にさせてしまう何かがあるって事なんだよな。
そしてそれは今現在俺にも降りかかってるんだよなぁ。
「仲直りするにはどうしたらいい?」
「そうだなぁ、質問なんだけど友也は沙月の事は好きか?」
「当たり前だろ」
「ん? 何が当たり前なんだ?」
「俺が沙月を好きだって事だよ」
「そう、それだよ」
「え?」
「ちゃんと沙月に好きだって言ってるか?」
そう言われハッとする。
付き合いたての頃は言ってたけど、最近は言ってないかも。
照れくさいっていうのもあって余り言わなくなってた。
それに今日だって沙月がナンパされてるのを見て、沙月にも落ち度があるとか言って沙月を怒ってしまった。
ナンパしてきた男が俺の先輩だから無理に断ったり出来なかったんじゃないだろうか。
それにサンタの衣装選びの時も褒めるのを照れてどっちも良いと曖昧な答えをしてしまった。
本当はミニスカサンタが滅茶苦茶カワイイって思ってたのに。
「水樹、やっとわかったよ」
「そりゃよかった」
「俺、これから沙月に謝りに行くよ」
「いや、ちょっと待て」
「なんでだよ」
「さっき喧嘩したばかりなんだろ? こういう時は少し時間を置いた方がいいんだよ」
「でも」
「それよりも明後日空いてるか?」
「特に用事は無いけど」
「なら中居と三人で動物公園行こうぜ。丁度叔父さんからチケット貰ったからさ」
「別にいいけど」
「おっけ。じゃあ十一時に入り口集合な」
「ちょっと待ってくれ。沙月の件はどうするんだ?」
「大丈夫だって、俺に任せとけ」
そう言って通話が切れた。
正直、今すぐにでも沙月に会いたいけど水樹の言う事も一理あるしな。
っていうか動物公園か。
もうすぐクリスマスなのに男だけで行くっていうのは虚しい。
というか、よく中居が了承したな。
それだけ必死ってことなんだろうな。
「とりあえず俺はもう帰るわ。なんだかすっげー疲れた」
「おう。俺も今日は帰る事にする」
「んじゃ、俺はあっちだからよ。じゃあな」
「ああ、またな」
気づけばすっかり暗くなっていて寒さも増していた。
次に沙月と会ったら心から謝って俺の気持ちをぶつけよう!
俺は密かにそう決意し、冬空の下ひとり帰路に着いた。
校門に着くとさっきまで居た沙月の姿が見えない。
何処に行ったんだ? 校門近くを探していると塀の後ろに居た。
やっと見つけた近づいて行くと男の姿もあった。
どうやら沙月と何か話してる様だ。
ウチの制服を着ているが見た事がないので1年か3年だろう。
俺はワザとらしく声を張って
「沙月、待たせて悪いな」
俺に気づいた沙月は小走りでこちらにやって来る。
男はというと、その場で固まっていた。
「なにしてたんだ?」
「ナンパされちゃいました。彼氏を待ってるっていってもしつこいんですよ~」
「ふ~ん」
それを聞いて未だに固まってる男の元へ行きネクタイを見るとどうやら3年生のようだ。
「なんだ、佐藤の彼女だったのか。悪いな、知らなかったんだ」
「彼氏を待ってるって言ってもしつこかったみたいですけど?」
「佐藤の彼女だって知ってたら直ぐに諦めてたよ。悪いな」
「今回は沙月にも落ち度があるので、諦めてくれるならそれでいいですよ」
「おう、悪ぃな。こんどから気を付けるわ」
そう言って先輩は校舎の方へ戻っていった。
それを見送ってから沙月に向き直り
「沙月、しっかりしないと駄目だろ」
ただでさえ可愛いのにお嬢様学校だから目立つんだよな。
「ごめんなさい」
「それより今日はどうして来たんだ? また柚希に呼び出されたのか?」
「いえ、今日は私が友也さんと一緒に帰りたいなーって思って来ちゃいました」
「それだったら連絡してくれればよかったのに。わざわざこっちまで来なくても俺が迎えに行ったよ」
「サプライズってやつですよ!」
「はは、わざわざそこまでしてくれなくても。でもありがとな」
そう言いながら頭を軽く撫でるが、沙月は「む~~」と頬を膨らませていた。
凄い嬉しいが少々強がってしまった。
だが頬を膨らませる沙月も可愛い!
てっきり柚希が呼び出したと思ってたけど違うんだな。
さっきの先輩も柚希の差し金かと思ったけど、沙月が来る事をしらないなら先輩は関係ないか。
それにしても俺と帰りたいからウチの学校まで来るとか可愛すぎる!
それに自然と腕を組まれると焦る。柔らかい! 何処がとは言わないけど。
「そういえば沙月に話があったんだ」
「まさか、別れ話ですか?」
「そんな訳ないだろ。取りあえず歩きながら話すよ」
駅までの道中、今日話し合ったクリスマスパーティーの事を話すと
「私も参加していいんですか?」
「嫌か?」
「いえ、是非参加させてください!」
「はは、沙月ならそう言うと思ったよ」
俺の予想通り沙月はクリスマスパーティーに食いついた。
後の細かい準備とかはグループで話せばいいだろう。
そう考えていると、急に沙月が立ち止まった。
「どうした?」
「友也さん、これから買い物に付き合って貰えますか?」
「ああ、いいけど何買うんだ?」
「それは後のおたのしみです」
こうして沙月に連れられて買い物に行く事になった。
俺の最寄り駅付近のデパートの近くにある古い洋服店に着いた。
個人で経営している店の軒先には派手なドレスなどが陳列されていた。
「ささ、友也さん、この奥です」
「お、おう」
店内に入ると外に飾られているドレスが可愛く見える程キワドイ物まで飾られてある。
なんだありゃ? 只のヒモにしかみえないぞ!
まさか沙月の奴クリスマスが近いからリミッターはずれてるんじゃないか?
などと心配していると
「あった! 友也さんありましたよ!」
と店の奥から呼ばれ、そちらに向かうと、沙月が手に持っているモノをみて納得した。
「サンタの衣裳探してたのか」
「はい! クリスマスと言えばサンタさんですから!」
「結構な種類があるな」
「どれにするか悩みますね。取りあえずコレを試着してみます」
そう言ってさっきまで手に持っていた衣裳を持って更衣室に入っていった。
暫く待つとカーテンが開けられ、オーソドックスなサンタの恰好をした沙月が現れた。
「どうですか?」
「いいんじゃないか?」
「う~ん、じゃあ次はコレ着てみます」
そう言って再び更衣室のカーテンが閉められる。
そして着替え終わった沙月がカーテンを開けると、そこには超絶ミニスカサンタが居た。
ヤバイ! その恰好は反則だ! スカート短すぎてしゃがんだら見えちゃうんじゃないか?
「ちょっと恥ずかしいですけど、似合いますか?」
「いいんじゃないか?」
「む~」
またカーテンが閉められ、着替えを始めた。
あれ? 今回は何も持っていかなかったな? と考えているとカーテンが開き、制服姿に戻った沙月が出て来た。
「友也さん! どっちが良かったですか?」
「ん~、どっちも良かったよ」
「あっそ、そうですか」
そう言って何も買わずに店内から出て行く。
慌てて後を追いかける。
「何も買わないのか?」
「なんで何も買わないかわかります?」
「気に入ったのが無かったんだろ?」
「……もういいです!」
そう言ってスタスタと速足で歩いて行ってしまう。
何かマズイ事言ったかな? と思いながら沙月に並ぶ
「何か怒ってるのか?」
「……」
「何でそんな不機嫌なんだ?」
「ふーんだ」
「謝るから機嫌直してくれって」
「じゃあ聞きますけど、何に対して謝るんですか?」
「それは……不機嫌にさせちゃったから?」
「もう知りません!」
さっきよりも更にスピードを上げて俺が追いつく前に改札を潜って行ってしまった。
何で怒ってるのか分からないが、このままじゃマズイと思い後を追いかける。
おかしい。ついさっき改札を潜った筈の沙月の姿が見当たらない。
電車はまだ来ていなかったのでホームの何処かに居る筈なんだけどなぁ。
とりあえず沙月のウチの最寄り駅で待ってればその内現れるだろうと思い電車に乗る。
最寄り駅に着いた俺は改札の近くにあるベンチに腰を降ろし、沙月が出て来るのを待つ。
あれから1時間経ったが一向に沙月が現れる様子が無い。
メッセージを送っても既読スルーされるし、これは本気でヤバイんじゃ……。
最悪のシナリオを描いていると、俺の隣に男がドカッと乱暴に座った後、盛大な溜息を吐いた。
荒れてるなぁ、巻き込まれても嫌だし場所を移動しようとすると
「は? なんで佐藤が此処に居んだよ?」
急に名前を呼ばれたので隣の男を見ると
「中居!? どうして此処に」
「そりゃコッチのセリフだ」
あの盛大に溜息を吐いていた男が中居だったなんて。
普段からは想像出来ないな。
まさか中居と会うとは思わなかったけど、及川と半年以上付き合ってるんだよな。
よし、沙月がどうして怒ったか相談してみよう。
及川と半年以上付き合ってる中居なら、どうして沙月が不機嫌になったか分かるかもしれない。
「なぁ中居、相談があるんだけどいいか?」
「相談?」
「実は……」
今日沙月に会ってから別れるまでの経緯を全て話す。
俺にはどうして沙月が不機嫌になったか分からないけど、中居なら何か分かるかもしれない。
俺の話を聞き終えた中居は額に手を当てながら「はぁ~」とため息と吐く。
「俺がどうして此処に居るか分かるか?」
「この辺に住んでるとか?」
「まぁ住んでるな、及川が」
「じゃあ及川とさっきまで一緒だったのか」
「あぁ、だけど急に不機嫌になって帰りやがった」
「えっ!」
「俺も佐藤と同じだ。どうして不機嫌になったか分からねぇ」
「そうだったのか」
中居も急に及川が不機嫌になって及川に帰られたらしい。
だからさっき大きなため息を吐いていたのか。
「中居達は何をしてたんだ?」
「お前達と余り変わらねぇよ、服を買いに行って、途中から不機嫌になって帰りやがった」
なるほど、シチュエーションは俺と余り変わらないな。
だとしたら、沙月が不機嫌になった理由も及川と同じ理由かもしれない。
「及川と沙月が怒った理由が似てるかもしれないから二人で考えてみないか?」
「あぁ、俺も同じ事考えてたわ」
こうして互いの喧嘩した理由を考えてみる。
服屋に行くまでは普段と変わらなかったみたいだから、やっぱり原因は服関連だろう。
服関連で怒る要因としては、選んだ服を似合ってないとか言ってしまってないかだろう。
いや、俺は沙月にそんな事言ってないけど不機嫌になった。
もしかして怒ってる理由は服関連じゃないのか?
でも服選びから不機嫌になったし……。くそ! 俺じゃどうして不機嫌になったか解らない。
「何か分かったか?」
「全っ然分かんねぇ!」
「「はぁ~」」
同時に溜息を吐く。俺達じゃどうすればいいか分からない。
柚希に相談しようか? でも、多分冷やかされるから止めとこう。
でもこのまま二人で考えてても解決しなそうだしなぁ。
他に誰か相談出来そうなのは……そうだ!?
「中居、水樹なら何か分かるんじゃないか?」
「なるほどな。確かにアイツなら何か分かるかも知れねぇな」
「ちょっと電話してみるわ」
そう言ってポケットからスマホを取り出し通話タップする。
プルルルッ プルルルッ
いつもなら数コールで出るのだが中々出ない。
それから十数コールして留守番電話に切り替わったので通話を切った。
「ダメだ、出ない」
「チッ、こんな時に」
水樹に連絡が取れなかった事で、中居の機嫌が更に悪くなっていく。
しかし、及川と喧嘩しただけでここまで凹むなんてな。
まぁ、人の事は言えないけど。
なんて事を考えていると、水樹から着信が来た。
俺は慌てて通話をタップする。
「もしもし!」
「友也か? さっきは出れなくて済まなかったな。バイクの運転中だったんだ」
「そうだったのか」
通話してる俺を見た中居が「水樹か?」と聞いてきたので頷く。
「んで、何か用だったか?」
「ああ、その事なんだけど……」
水樹にも中居に話した内容を話す。
それと同時に中居も同じ状況で一緒に居る事を伝える。
「なるほどな」
「俺達はどうすればいい?」
「中居の意見も聞きたいから変わってくれないか?」
「わかった」
水樹が話したがっている事を伝え、スマホを中居に渡す。
通話を始めた中居だが、何やらバツが悪そうにしている。
水樹に何か言われたのか、中居は「分かってるって」「そりゃそうだけどよ」と言っている。
それからしばらくして中居がスマホを手渡してベンチにうな垂れてしまった。
マジで何を言われたんだろう?
「もしもし、中居がうな垂れてるけど何を言ったんだ」
「色々とな。それよりも、友也だって他人事じゃないだろ」
「ああ」
「まぁ、中居の場合は今回が初めてじゃないからな」
「どういう事だ?」
「誕プレ作戦の時チラッと話したけど、中居は一年の時に彼女が居たんだよ」
「そう言えばそんな事いってたな」
「んで、別れた原因が今回と同じなんだよ」
「あぁ、なるほど」
元カノと別れた原因だから中居にいつもの余裕が無かったのか。
でも、裏を返せばそれだけ及川の事を大切に思ってるって事だよな。
問題はそれだけ大切に思っていても不機嫌にさせてしまう何かがあるって事なんだよな。
そしてそれは今現在俺にも降りかかってるんだよなぁ。
「仲直りするにはどうしたらいい?」
「そうだなぁ、質問なんだけど友也は沙月の事は好きか?」
「当たり前だろ」
「ん? 何が当たり前なんだ?」
「俺が沙月を好きだって事だよ」
「そう、それだよ」
「え?」
「ちゃんと沙月に好きだって言ってるか?」
そう言われハッとする。
付き合いたての頃は言ってたけど、最近は言ってないかも。
照れくさいっていうのもあって余り言わなくなってた。
それに今日だって沙月がナンパされてるのを見て、沙月にも落ち度があるとか言って沙月を怒ってしまった。
ナンパしてきた男が俺の先輩だから無理に断ったり出来なかったんじゃないだろうか。
それにサンタの衣装選びの時も褒めるのを照れてどっちも良いと曖昧な答えをしてしまった。
本当はミニスカサンタが滅茶苦茶カワイイって思ってたのに。
「水樹、やっとわかったよ」
「そりゃよかった」
「俺、これから沙月に謝りに行くよ」
「いや、ちょっと待て」
「なんでだよ」
「さっき喧嘩したばかりなんだろ? こういう時は少し時間を置いた方がいいんだよ」
「でも」
「それよりも明後日空いてるか?」
「特に用事は無いけど」
「なら中居と三人で動物公園行こうぜ。丁度叔父さんからチケット貰ったからさ」
「別にいいけど」
「おっけ。じゃあ十一時に入り口集合な」
「ちょっと待ってくれ。沙月の件はどうするんだ?」
「大丈夫だって、俺に任せとけ」
そう言って通話が切れた。
正直、今すぐにでも沙月に会いたいけど水樹の言う事も一理あるしな。
っていうか動物公園か。
もうすぐクリスマスなのに男だけで行くっていうのは虚しい。
というか、よく中居が了承したな。
それだけ必死ってことなんだろうな。
「とりあえず俺はもう帰るわ。なんだかすっげー疲れた」
「おう。俺も今日は帰る事にする」
「んじゃ、俺はあっちだからよ。じゃあな」
「ああ、またな」
気づけばすっかり暗くなっていて寒さも増していた。
次に沙月と会ったら心から謝って俺の気持ちをぶつけよう!
俺は密かにそう決意し、冬空の下ひとり帰路に着いた。
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だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
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NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
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