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クラマ式 洗濯機
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「クラマ。今日は町でオリボレンを買ってきたよ。一緒に食べよう」
と、穴の無いドーナツのようなものが入った袋を手にしたユーリス様がおっしゃった。
ユーリス様はこの一月というもの、まるで弟のように私を構ってくるようになった。
いや実際弟だと思っているに違いない。この間食堂で、ユーリス様が話しているのを盗み聞いた。
「私は兄ばかりの5人兄弟の末っ子だったので、弟というものがずっと欲しかったんです。母上にずっとねだっていたんですが、結局願いは叶いませんでした」
ぐふっ。
男ばかり5人もいたら、もう十分だって思ったお母さんの気持ち分かる気がする・・・。
私は剣道部にいた時の男の子達を思い出して、ユーリス様のお母様の気持ちに思いを馳せる。
「ユーリス様。申し訳ありませんがこの後、洗濯の手伝いをする約束がありまして、折角のお申し出ですが時間がありません」
「剣の訓練が始まるまでには、まだ時間があると思うんだけど?」
「本来はそうですが、剣拾いだけだと結構時間が余ったりしますので、病気で休んでいる者の代わりに洗濯を手伝うと約束しました。それに今日はちょっと試したいこともありますので」
ふふふ。訓練場の洗濯って、普段は高価な魔石を使って洗っているんだけど、普通の市民は、価格高騰している魔石を使うのをケチって、洗濯板でごしごしやる原始的な方式が今や一般的になってきているので、発案してみました。
手動洗濯機!!!パパーン!
大きい樽と、その中に納まる少し小さめの穴の開いた樽をいれ、大きい歯車と小さい歯車を組み合わせて、上部には持ち手を作る。
持ち手を回せば中の小さめの樽が高速回転する仕組み。
まあ大型の野菜水きり気みたいなもので、底にプロペラみたいなのを入れて水をためて回せば洗い。水を抜いて回せば水切りができる。
こちとら生活魔法とかいうチートなものはできないので。全部、頭と体で再現しました。大変だったのよ。これ全部木で作ったからね。あっ。ちゃんと防水魔法かけてもらいました。騎士様におねだりしてね。
うふふ。上目使いに潤んだ眼で子猫のように見上げる技。免許皆伝しました。いつでも発動可能です。これでおじ様方はいちころです。
でもこれ、うまくいけば国中で重宝されるかも。クラマ洗濯機なんて自分の名前を入れてみたりして。うへへ。
「それ私も見てみたいなあ。一緒に行ってもいい?」
それはいいけどユーリス様。仮にも隊長職でお忙しいんではないのでしょうか?
その考えを見透かしたように、ユーリス様が言い足した。
「クラマといるのが、私の息抜きなんだよ。この時間があるからこの後の訓練がはかどるんだ」
きらきらした群青色の瞳で、至近距離でそのせりふを言われると、その気は無いと分かっていても、なんだかお尻がむずがゆくなる。
ユーリス様は騎士様の中でも若手で、現在21才。騎士様というだけあってその全身は十分な筋肉で覆われている。
整った顔立ちに精悍さがプラスされてて、そんな人に殺し文句呟かれて、動揺しない女がいるわけない。くー。
いやこれ弟、仕様ですから。
はいはい。分かりましたお兄様。一緒に異世界初、手動クラマ式洗濯機の初試運転。とくとご覧くださいませ。
私はユーリス様と一緒に、洗濯場へと向かった。
なぜだか通り過ぎるたびに、他の使用人の目が気になる。なんか皆一様に、びっくりした顔をしている。
まあいい。
洗濯機をみたユーリス様は、ものすごく感動したようだ。
この世界に歯車は存在しないらしい。小さな力で大きな力を生み出せる歯車を見て、しかも私が一から作り上げたことを知って、驚いた。
この世界は魔法があるのが前提だったせいで、いまいち魔法以外に頼った力の生み出し方には、とても遅れているようだ。
洗濯してみる。
やった。うまくいった。水切りも。自動洗濯機には負けるが、手で絞るよりはかなりの水分を飛ばせたようだ。
結局、本来一人だと半日かかる作業が、たった1時間で終わった。
「これは、すばらしい。生活魔法を使える人もだんだん減ってきているから、この道具でかなりの人が助かんじゃないかな」
ユーリス様が感心しきりに、洗濯機を褒めちぎる。
「魔力のある人って、減ってきているんですか?」
「そうなんだ。この150年の間に徐々に減ってきている。それなのに魔獣の出現は増えていって、今じゃ魔力のある者はすべて国の為に、その力を使ってもらっている。そうじゃないと、とてもじゃないが増加する魔獣に対応できない」
「そうですか・・・」
でも、はたと気づく。
「・・・でもそのために聖女様を召喚したのではないのですか?」
「ああ聖女様が現れたら、王国は繁栄するという伝説がある。実際、歴史上でも証明されている。だから私もあの聖女様に期待している。あの方が国を救ってくれると」
聖女と聞いてユイカに思いを寄せる。
今どうしているんだろうか。あのほんわりとした小動物的外見にそぐわず、中身はかなりの肉食獣だから、聖女としてきっとうまくやっているのだろう。
でも突然いなくなった桜のことを、心配していたりしていないだろうか?
「どうしたんだい?ああ不安なんだね。大丈夫、聖女様に任せていればこの国は大丈夫だ。それにいざとなればクラマには私がいるよ。だから心配しなくていい」
そう言って、にこっと笑う。つられて私も笑った。
うう。いい人だなあ。これで弟ポジじゃなければ、この瞬間がっつり恋に落ちちゃうね。絶対。
この人よっぽど弟欲しかったんだね。よし、じゃここは理想的な弟を演じてあげようではないか。
「はい。ユーリス様。頼りにしております!!」
私は極上の笑みで、ユーリス様の眼を見上げながら言った。
と、穴の無いドーナツのようなものが入った袋を手にしたユーリス様がおっしゃった。
ユーリス様はこの一月というもの、まるで弟のように私を構ってくるようになった。
いや実際弟だと思っているに違いない。この間食堂で、ユーリス様が話しているのを盗み聞いた。
「私は兄ばかりの5人兄弟の末っ子だったので、弟というものがずっと欲しかったんです。母上にずっとねだっていたんですが、結局願いは叶いませんでした」
ぐふっ。
男ばかり5人もいたら、もう十分だって思ったお母さんの気持ち分かる気がする・・・。
私は剣道部にいた時の男の子達を思い出して、ユーリス様のお母様の気持ちに思いを馳せる。
「ユーリス様。申し訳ありませんがこの後、洗濯の手伝いをする約束がありまして、折角のお申し出ですが時間がありません」
「剣の訓練が始まるまでには、まだ時間があると思うんだけど?」
「本来はそうですが、剣拾いだけだと結構時間が余ったりしますので、病気で休んでいる者の代わりに洗濯を手伝うと約束しました。それに今日はちょっと試したいこともありますので」
ふふふ。訓練場の洗濯って、普段は高価な魔石を使って洗っているんだけど、普通の市民は、価格高騰している魔石を使うのをケチって、洗濯板でごしごしやる原始的な方式が今や一般的になってきているので、発案してみました。
手動洗濯機!!!パパーン!
大きい樽と、その中に納まる少し小さめの穴の開いた樽をいれ、大きい歯車と小さい歯車を組み合わせて、上部には持ち手を作る。
持ち手を回せば中の小さめの樽が高速回転する仕組み。
まあ大型の野菜水きり気みたいなもので、底にプロペラみたいなのを入れて水をためて回せば洗い。水を抜いて回せば水切りができる。
こちとら生活魔法とかいうチートなものはできないので。全部、頭と体で再現しました。大変だったのよ。これ全部木で作ったからね。あっ。ちゃんと防水魔法かけてもらいました。騎士様におねだりしてね。
うふふ。上目使いに潤んだ眼で子猫のように見上げる技。免許皆伝しました。いつでも発動可能です。これでおじ様方はいちころです。
でもこれ、うまくいけば国中で重宝されるかも。クラマ洗濯機なんて自分の名前を入れてみたりして。うへへ。
「それ私も見てみたいなあ。一緒に行ってもいい?」
それはいいけどユーリス様。仮にも隊長職でお忙しいんではないのでしょうか?
その考えを見透かしたように、ユーリス様が言い足した。
「クラマといるのが、私の息抜きなんだよ。この時間があるからこの後の訓練がはかどるんだ」
きらきらした群青色の瞳で、至近距離でそのせりふを言われると、その気は無いと分かっていても、なんだかお尻がむずがゆくなる。
ユーリス様は騎士様の中でも若手で、現在21才。騎士様というだけあってその全身は十分な筋肉で覆われている。
整った顔立ちに精悍さがプラスされてて、そんな人に殺し文句呟かれて、動揺しない女がいるわけない。くー。
いやこれ弟、仕様ですから。
はいはい。分かりましたお兄様。一緒に異世界初、手動クラマ式洗濯機の初試運転。とくとご覧くださいませ。
私はユーリス様と一緒に、洗濯場へと向かった。
なぜだか通り過ぎるたびに、他の使用人の目が気になる。なんか皆一様に、びっくりした顔をしている。
まあいい。
洗濯機をみたユーリス様は、ものすごく感動したようだ。
この世界に歯車は存在しないらしい。小さな力で大きな力を生み出せる歯車を見て、しかも私が一から作り上げたことを知って、驚いた。
この世界は魔法があるのが前提だったせいで、いまいち魔法以外に頼った力の生み出し方には、とても遅れているようだ。
洗濯してみる。
やった。うまくいった。水切りも。自動洗濯機には負けるが、手で絞るよりはかなりの水分を飛ばせたようだ。
結局、本来一人だと半日かかる作業が、たった1時間で終わった。
「これは、すばらしい。生活魔法を使える人もだんだん減ってきているから、この道具でかなりの人が助かんじゃないかな」
ユーリス様が感心しきりに、洗濯機を褒めちぎる。
「魔力のある人って、減ってきているんですか?」
「そうなんだ。この150年の間に徐々に減ってきている。それなのに魔獣の出現は増えていって、今じゃ魔力のある者はすべて国の為に、その力を使ってもらっている。そうじゃないと、とてもじゃないが増加する魔獣に対応できない」
「そうですか・・・」
でも、はたと気づく。
「・・・でもそのために聖女様を召喚したのではないのですか?」
「ああ聖女様が現れたら、王国は繁栄するという伝説がある。実際、歴史上でも証明されている。だから私もあの聖女様に期待している。あの方が国を救ってくれると」
聖女と聞いてユイカに思いを寄せる。
今どうしているんだろうか。あのほんわりとした小動物的外見にそぐわず、中身はかなりの肉食獣だから、聖女としてきっとうまくやっているのだろう。
でも突然いなくなった桜のことを、心配していたりしていないだろうか?
「どうしたんだい?ああ不安なんだね。大丈夫、聖女様に任せていればこの国は大丈夫だ。それにいざとなればクラマには私がいるよ。だから心配しなくていい」
そう言って、にこっと笑う。つられて私も笑った。
うう。いい人だなあ。これで弟ポジじゃなければ、この瞬間がっつり恋に落ちちゃうね。絶対。
この人よっぽど弟欲しかったんだね。よし、じゃここは理想的な弟を演じてあげようではないか。
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