14 / 68
ドルミグ副隊長との戦い
しおりを挟む
それは突然起こった。
訓練が終わり夕食後、私は騎士見習いのギースさんに呼び出された。
なんでも、騎士様が特別に練習を彼につけてくれるというので、私にも剣拾いとしてきて欲しいとの事だった。
自由時間での訓練は稀にあって、その度に私も呼び出されるが事前に届出が必要だ。
今回はその届出がされてないようで、突然の呼び出しにびっくりしたが、キースさんに頼み込まれていくことにした。
なんでも伝説になるくらいの、キースさん憧れのお強い騎士様らしい。
私はその判断を訓練が始まって2秒で後悔した。
ドルミグ副隊長は、この場でキースさんと私を、心身ともに痛めつけるのが目的だと知るのにそう時間はかからなかった。
彼は冷酷なまでに、明らかに力の差があるキースさんに、躊躇もせず力のままに剣を振り下ろす。
しかも相手をなぶりながら、なんどもキースさんの剣を打ち落とし、その正確な剣筋でその振り落とされた剣が私にうまく刺さるようにコントロールしている。
私といえば、キースさんのことも心配ながら、そんな余裕も無く。とにかく強大な風とともに向かってくる剣を避けるので精一杯だった。
今までの剣拾いの仕事では、飛んでくる剣を避けていたが、今回は勝手が違う。私を殺すつもりでやっているんだから、逃げるだろう方向を計算して飛ばしてくる。
一瞬でも気を抜くと、死ぬ。
「オレはお前らみたいな平民が大嫌いだ。下賎な血が流れているお前らはここにいる資格が無い。さっさとここから出て行け!そうしたら命は助けてやる」
キースさんもなぶられながら、なんとか剣を受けているが圧倒的な力の差に、最終的には剣を取り落としてしまう。その剣が私を襲う。
なんとか寸前で剣を回避し、剣を取りまたキースさんのもとに届ける。
剣を渡すときに傷だらけで息も絶え絶えのキースさんが、あがった息で私に言った。
「すまない。クラマを巻き込んでしまったようだ。俺はここで死んでも騎士になることはあきらめるつもりは無い。だがお前は俺に付き合う必要は無い。さっさと逃げろ。今ならなんとか俺が手伝ってあげられる」
体中から血を流し、疲労してろくに動けないだろう体を無理やり起こし、立ち上がる。
「しぶといな。お前。お前みたいな虫けらが、あの崇高で高貴な血を持つユーリス殿の傍にいるというだけで、虫唾が走るわ、死を持って償え」
ドルミグ副隊長が嘲るように笑う。
このとき分かった。彼は私たちを生かして逃がそうとは露ほども思ってはいない。
ここで私たちを訓練中の事故として葬るのが目的なのだ。
「でも、もうそろそろ飽きてきたな。ここで死んでおけ!」
ドルミグ副隊長はそう言い放つと、まだ剣を手にとっていないキースさんに斬りかかった。
危ない!!
そう思うと勝手に体が動いた。あの強大な力のこもった剣をまともに受けるわけにいかない、だけどその力を利用してうけ流すことができれば、何とかなるに違いない。
本当に危なくなったら、そのときは時を止めればすむ。誰も死なない。
クラマは剣を持ち直し、ドルミグ副隊長の振りかぶる剣の道筋に己の剣をあわせ、その力をキースさんのいない方向に導いた。
一瞬閃光が走る。気がついたら私はちょうどドルミグ副隊長とキースさんの間に立っていた。
作戦は成功したらしい。
キースさんは私の背後で仰向けに倒れていた。次に私の目に映ったのは、私と剣を合わせたまま。飢えた肉食獣のような目でにらみつけるドルミグ副隊長だった。
ひょえーーー!!!
思わず時間を止めた。
時間が止まったので、考える時間は十分にあった。なので考えうる中で最良の解決法を実行することにした。
ユーリス様をここに呼ぼう。まず紙を用意する。
クラマへ
6刻から訓練場でドルミグ副隊長が俺に練習をつけてくれるらしいので、一緒に来て欲しい。
その後に、お昼に町で買いすぎて余ったオリボレンを一緒に食べよう。新作らしいので楽しみにしてくれ。
キース
この手紙をユーリス様がすぐ気がつくところに置いて、またここに帰ってきて時を動かす。後はユーリス様がやってくれば、助かる。
新作オリボレンのくだりは、多少迷ったが、結局書くことにした。こうしないと、わざわざ訓練場までユーリス様が来ようだろうと思わないだろうからだ。
手紙が不自然な場所にあるとか、新作オリボレンの嘘とかをつつかれると困るけど、今はキースさんと私の命がかかってるからね。
最終手段は時を止めて、とんずらする。
ここの人たちと別れるのはつらいけど、背に腹は替えられない。ちょっと涙が出そうになる。
私は早速手紙を書き、ユーリス様を探した。
広大な訓練施設で難航するかと思ったが、けっこうあっさり見つかった。彼は自分の部屋で椅子に座って読書をしている最中だったらしい。
目の前の机にそっと手紙を置く。
おお、固まったユーリス様もりりしくて素敵だな。普段はその身長差ゆえににじっくり見られないお顔を、じっくり舐めまわすように見る。
あれ?もしかしてこのチート能力を使えば、動かないユーリス様にあんなことやこんなことをしたりすることもできるんだよね。
うわ、この能力最高かも。
生活になんの役にも立たないって馬鹿にしてごめんよう。
いやでもこれは犯罪だよな、乙女の夢だけど。
反省して部屋を出る。これからが正念場だ。
時を動かして、ユーリス様が手紙に気がついて訓練場まで来る間、普通に歩いて15分ほど。
その間、あのドルミグ副隊長の猛攻撃をかわし続けなければいけない。私にできるだろうか。
だめだと思えばそのつど時を止めればいい。そうして剣に当たらないぎりぎりの場所まで移動してから、時間を戻す。
ドルミグ副隊長には、突然私が瞬間移動したように見えるだろうから、あんまりこの手は使いたくない。できるだけ自力でかわそう。
訓練が終わり夕食後、私は騎士見習いのギースさんに呼び出された。
なんでも、騎士様が特別に練習を彼につけてくれるというので、私にも剣拾いとしてきて欲しいとの事だった。
自由時間での訓練は稀にあって、その度に私も呼び出されるが事前に届出が必要だ。
今回はその届出がされてないようで、突然の呼び出しにびっくりしたが、キースさんに頼み込まれていくことにした。
なんでも伝説になるくらいの、キースさん憧れのお強い騎士様らしい。
私はその判断を訓練が始まって2秒で後悔した。
ドルミグ副隊長は、この場でキースさんと私を、心身ともに痛めつけるのが目的だと知るのにそう時間はかからなかった。
彼は冷酷なまでに、明らかに力の差があるキースさんに、躊躇もせず力のままに剣を振り下ろす。
しかも相手をなぶりながら、なんどもキースさんの剣を打ち落とし、その正確な剣筋でその振り落とされた剣が私にうまく刺さるようにコントロールしている。
私といえば、キースさんのことも心配ながら、そんな余裕も無く。とにかく強大な風とともに向かってくる剣を避けるので精一杯だった。
今までの剣拾いの仕事では、飛んでくる剣を避けていたが、今回は勝手が違う。私を殺すつもりでやっているんだから、逃げるだろう方向を計算して飛ばしてくる。
一瞬でも気を抜くと、死ぬ。
「オレはお前らみたいな平民が大嫌いだ。下賎な血が流れているお前らはここにいる資格が無い。さっさとここから出て行け!そうしたら命は助けてやる」
キースさんもなぶられながら、なんとか剣を受けているが圧倒的な力の差に、最終的には剣を取り落としてしまう。その剣が私を襲う。
なんとか寸前で剣を回避し、剣を取りまたキースさんのもとに届ける。
剣を渡すときに傷だらけで息も絶え絶えのキースさんが、あがった息で私に言った。
「すまない。クラマを巻き込んでしまったようだ。俺はここで死んでも騎士になることはあきらめるつもりは無い。だがお前は俺に付き合う必要は無い。さっさと逃げろ。今ならなんとか俺が手伝ってあげられる」
体中から血を流し、疲労してろくに動けないだろう体を無理やり起こし、立ち上がる。
「しぶといな。お前。お前みたいな虫けらが、あの崇高で高貴な血を持つユーリス殿の傍にいるというだけで、虫唾が走るわ、死を持って償え」
ドルミグ副隊長が嘲るように笑う。
このとき分かった。彼は私たちを生かして逃がそうとは露ほども思ってはいない。
ここで私たちを訓練中の事故として葬るのが目的なのだ。
「でも、もうそろそろ飽きてきたな。ここで死んでおけ!」
ドルミグ副隊長はそう言い放つと、まだ剣を手にとっていないキースさんに斬りかかった。
危ない!!
そう思うと勝手に体が動いた。あの強大な力のこもった剣をまともに受けるわけにいかない、だけどその力を利用してうけ流すことができれば、何とかなるに違いない。
本当に危なくなったら、そのときは時を止めればすむ。誰も死なない。
クラマは剣を持ち直し、ドルミグ副隊長の振りかぶる剣の道筋に己の剣をあわせ、その力をキースさんのいない方向に導いた。
一瞬閃光が走る。気がついたら私はちょうどドルミグ副隊長とキースさんの間に立っていた。
作戦は成功したらしい。
キースさんは私の背後で仰向けに倒れていた。次に私の目に映ったのは、私と剣を合わせたまま。飢えた肉食獣のような目でにらみつけるドルミグ副隊長だった。
ひょえーーー!!!
思わず時間を止めた。
時間が止まったので、考える時間は十分にあった。なので考えうる中で最良の解決法を実行することにした。
ユーリス様をここに呼ぼう。まず紙を用意する。
クラマへ
6刻から訓練場でドルミグ副隊長が俺に練習をつけてくれるらしいので、一緒に来て欲しい。
その後に、お昼に町で買いすぎて余ったオリボレンを一緒に食べよう。新作らしいので楽しみにしてくれ。
キース
この手紙をユーリス様がすぐ気がつくところに置いて、またここに帰ってきて時を動かす。後はユーリス様がやってくれば、助かる。
新作オリボレンのくだりは、多少迷ったが、結局書くことにした。こうしないと、わざわざ訓練場までユーリス様が来ようだろうと思わないだろうからだ。
手紙が不自然な場所にあるとか、新作オリボレンの嘘とかをつつかれると困るけど、今はキースさんと私の命がかかってるからね。
最終手段は時を止めて、とんずらする。
ここの人たちと別れるのはつらいけど、背に腹は替えられない。ちょっと涙が出そうになる。
私は早速手紙を書き、ユーリス様を探した。
広大な訓練施設で難航するかと思ったが、けっこうあっさり見つかった。彼は自分の部屋で椅子に座って読書をしている最中だったらしい。
目の前の机にそっと手紙を置く。
おお、固まったユーリス様もりりしくて素敵だな。普段はその身長差ゆえににじっくり見られないお顔を、じっくり舐めまわすように見る。
あれ?もしかしてこのチート能力を使えば、動かないユーリス様にあんなことやこんなことをしたりすることもできるんだよね。
うわ、この能力最高かも。
生活になんの役にも立たないって馬鹿にしてごめんよう。
いやでもこれは犯罪だよな、乙女の夢だけど。
反省して部屋を出る。これからが正念場だ。
時を動かして、ユーリス様が手紙に気がついて訓練場まで来る間、普通に歩いて15分ほど。
その間、あのドルミグ副隊長の猛攻撃をかわし続けなければいけない。私にできるだろうか。
だめだと思えばそのつど時を止めればいい。そうして剣に当たらないぎりぎりの場所まで移動してから、時間を戻す。
ドルミグ副隊長には、突然私が瞬間移動したように見えるだろうから、あんまりこの手は使いたくない。できるだけ自力でかわそう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,747
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる