時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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チート能力がバレル

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静かな図書館で、突然本棚の隙間をぬって走り抜けていく少年を、人々が驚きと批難の目で見ている。
図書館司書のおばさんの注意する声が、後ろから聞こえる。

それらを無視したまま、開かれたままの大きな扉をくぐって図書館をでると、大きな広場があり、そこから放射状に商店街が広がっている。
その中の一つの通りに吸い込まれるように、走りこんだ。いつも通っている道筋だ。どんなに動揺していても、間違うことはない。

「まてっ。クラマ!」

ふと気がつくと、アルが後ろを追いかけてきていた。

「なんで!なんで!とにかく用事があるんだってば!!、なんで追いかけてくるのさーーー!!!」

絶叫しながら、全速力で走る。
なのにアルは拒否する私をものともせずに、そのまま追いかけてくる。
遊んでいる子供たちの脇をすり抜け、はたまた女同士の雑談に花を咲かせている集団の隙間を飛ぶように走る。

そろそろ息があがって死にそうになってきた。このままじゃもたない。直ぐ追いつかれる。
そう悟った私は角を曲がって、そこに人気が無いことを確認した後、時を止めた。
その場に崩れ落ちるようにしゃがみこむ。


「も・・・だめ・・はぁ・・。はぁっ・・・」


何分経過したのか分からないが、感覚的に数分ほどだろう。やっと息が整ってきたので、顔を上げる。
通りには誰もいない。このまましばらく歩いてまた人気の無い場所を見つけてから、時を動かそう。
そう考えていたら、突然背後に動くものの気配を感じた。

まさか・・・・・。と思う暇もなく振り返ると、そこに同じように驚愕した顔で見つめる彼と目があった。

「アル・・・・?」

「クラマ・・。これは一体どういうことだ?」

背後にはアルが呆然と立ち尽くしていて、普段の無表情からは考えられないくらいの、驚きの感情が見てとれた。
この場にはアルと私しかいないが、時間が止まったままでいることは本能でわかる。なのに、アルは動いている。

えーーー!!どうして!!なんでアルが動いてるの?

私が動くように念じて触れたものは、時間を止めた中でも動くことができるようになる事は、立証済みだ。
だけど私はアルに触れてさえいないのに、何故!!!?
とにかくこの場を離れないと、マズイという気持ちに揺り動かされ、時間を止めたまま私は再び走り出そうとした。

「っ・・・!待て!!」

アルの指から白い光が突然伸びて、私の腰の辺りにそれを巻きつける。

「きゃ!!なにこれっ!!」

あまりの動揺につい女言葉が口にでるが、アルも同様に焦っていたため気がつかなかったようだ。
緊張が二人の間に走る。
「アル、動かないで」

私は、静かな声で言った。

「どうしてアルが動けるのか分からないけど、この拘束を解いて欲しい。じゃないとこのまま時を止めたままにするよ。どうする?」
アルがこちらに歩み寄ろうとしていた足を止めた。

「お前が時を止めていたのか。クラマ」

「拘束を解いて欲しい。このまま見逃してくれたら、僕はこの町から姿を消す。この力は絶対に悪いことには使わない。約束するから。見逃して欲しい」

異世界に来て、やっとのことで手に入れた充実した生活を、手放さなければいけないことを思うと、涙がでてきた。

「お願いだ。僕のことをほんの少しでも友達だと思ってくれていたなら、逃がして欲しい。それができないなら、ここで殺せ。もともと、この能力を他人に知られたら、死ぬつもりだった。まさか時間を止めた中でも動ける人がいるなんて・・・思ってもみなかった」

魔力があるらしいアルと私では、どう考えても勝ち目は無い。
アルは悪い人ではないけれど、唯一時間を止められない存在がいるということは、この能力の主導権はアルにあるということだ。
もし彼が私の能力を悪用しようとすれば、私はアルの言いなりになる以外の選択肢はない。ここは彼の良心にかけようと思った。

アルは、意外な行動に出た。
彼の指から出ていた私を拘束していた白い光が、消える。
それと同時に、駆け寄って私を胸に抱きしめた。
もう滝のように目からあふれでた涙と鼻水が彼のシャツに染み込んでいく。

「・・離して・・・」


彼の答えが分からない。逃がしてくれるつもりなのか、このまま抱きしめたまま捕まえられてしまうのか。

「お前に何かを強要するつもりは無い。だから死ぬなんていうな。だけど、オレの手の届かないところに行くのは許さない」

「どういう・・・こと?」

アルが少し腕の力を緩めたので、ようやく私は顔を上げて彼の黒く光二つの双眸を見ることができた。
その顔は、また無表情に戻っていたが、その瞳にはなぜだか安心させる光があった。

「この町から出て行くというなら全力で止める。そうじゃないなら、話し合いがしたい。オレはお前の力になれると思う」

その言葉に、いっそう涙が溢れて止められなくなった。


異世界にきてから初めて、子供のように声をあげて泣きじゃくった。アルはそんな私に何も言わず、抱きしめたままずっと頭をなでていてくれた。
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