時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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アルと秘密の共用

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ようやく泣き止んで、正気に返ると恥ずかしさに悶えた。

もうかなりの時間が経過したらしいが、実際時間は止まったままなので、未だ午前中のはずだ。
時を動かそうかと思ったが、アルが話し合いを誰かに聞かれると困るというので、時間は止めたままにしておいた。

そのまま二人で移動して、陽のあたる芝生の上に座り込んだ。
アルの今まで時間が止まった日時と、私が時間を止めたことのある日時とを合わせると、ぴったりとはまった。

私は時を止めた状況を、嘘を交えて話した。
大きな嘘をつくときは、小さな真実を混ぜるといいと昔誰かに教わったことがあるので、そのように注意深く考えながら話をした。

セイアレスに薬を飲まされそうになったくだりは、宿主のオジサンに眠り薬を飲まされそうになったことにしたし、身元調査の書類改ざんは、職を得るためにちょっと細工をしたとだけ言っておいた。
力にはその時初めて気がついたと脚色した。
戦争で家族と家を失くしてから、発現した力だと強調した。

ドルミグ副隊長との戦いは、そのまま話した。
アルは私が、そんな危ない目にあったとは、想像だにしていなかったらしく、ドルミグ副隊長に対してかなり憤慨していたが、ユーリス様のくだりにはかなり疑問を抱いたようで、何度も確認してくる。

「ユーリス様は、私を弟として溺愛しているんで、そういった反応はデフォルトです。」


そんなふうに数回説得したが、あまり理解できなかったようだ。
まあ気持ちは分かる。私だって高位貴族出の騎士隊長様が、ちんけな少年を弟として溺愛しているなんて、自分で説明をしていても照れくさい。
ユーリス様の名誉のために、これだけはいわせてもらった。

「とはいってもユーリス様は、男が好きというわけではないんです。今日だってアイシス様と、うれし恥ずかしデートのはずですから」

というと、頓珍漢な返事が返ってきた。

「お前が、アイシスとやらとデートじゃないのか?」

「僕は下僕だから、アイシス様とユーリス様の間を、取り持ってるんだ。だからアルは邪魔するなって言ったじゃないか。それに僕まだ13歳だから、女の子と付き合うなんて考えたことも無いよ」

あきれたように、言い放った。
馬鹿じゃないんだろうか。

アルはその後、少しご機嫌になったような気がした。

その後二人で決まりごとを作った。

・僕がやむ終えず時を止めたら、かならずアルに連絡をすること。
・アルと話し合ってから、相互了承の元で時間を動かすこと。
・その能力を調べたいので、休暇の日はアルの家に来て欲しいこと。
・アルが僕の力を悪いことに使った時点で、僕は自分の命を絶つこと。

最後の約束は、アルは自分を信用しないのかと怒りをあらわにして抗議したが、これだけは譲れないので入れてもらった。
普段、無表情なアルが怒るとものすごく怖い。修行をサボって怒ったおじいちゃんより怖い。
普通の女の子も、普通じゃない女の子でも、みんな悲鳴を上げて裸足で逃げ出すと思う。いや、これほんと。

自分が女の子であるということと、聖女として召喚されたことはどうしてもいえなかった。
神殿で起こったことは私にとっては悪夢で、忘れたいことだったし、図書館で魔力についての本を読んでいたときから、うっすら思っていたこと。
時に干渉するのは不可能。だとしたらそれができる私は、聖女ではないのだろうか。
聖女は神殿で暮らし、王族と結婚しなければいけない。
それだけは、絶対に断固として避けたい。

伝心加工された魔石をユーリス様にいただいたので、魔力の無い私でもいつでも連絡可能だということを話すと、かなり驚いていた。

やっぱり、すごくお高いんでしょう?この石。
そんな気がしてた・・・。
この魔石の値段。知りたいような知りたくないような・・・。ううう。

いっぱい話をして疲れたので、時を動かしたら帰ろうと思っていたところをアルに引き止められた。
滑車の技術を話して聞かせて欲しいというので、アルの奢りで店にはいって昼ごはんをご馳走になった。


アルとたわいも無い話をするのは、大好きだった。
アルが私の時を止める力に巻き込まれないのには、なにか大きな力が働いているように感じた。
私とアルとの間になにかしっかりとした絆があるという事実だけで、なんだかすごく安心する。
これから私は、多分ほかの男の人と恋に落ちて、結婚し子供をなすことになるだろうけど、アルとの関係はまたそれとは全然違う。

これってなんていう感情だろう・・・。

自分でもさっぱり分からないまま、考えるのをやめた。

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