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サクラ 怪我をする

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でも、二人で大魔獣を倒していく様を見て、やっぱり参加しなくて良かったと、胸をなでおろした。

いや―――ごめん。二人とも・・・ごめん。でも、やっぱりこれ、すっごく地味。
ザ・キング・オブ・地味。私には恥ずかしくてできない。
だってね・・。これ敵は動いてないわけ。斬られても傷ができるわけでもなしに血も出ない、ひたすら剣を刺していく地味――で、結構体力がいる作業な訳。

二人が2体の大魔獣を倒している間、私は自分のできることを探そうと思って、辺りを見回す。

あるある、私のできること。

崩れてくる壁の下敷きになりそうなおじさんを、壁から離したところに置き替える。手に火がついて叫んでいる人の手の上に、水の塊を移動させる。これで時間が動けば、水が手にかかって火が消えるという寸法。

いやー順調。順調。この能力。犯罪ばかりじゃない。人助けだってできるんじゃない。
やっぱり地味なのは、否めないけどね・・・。とほほ。

小さな人助けに精を出していると、後ろから何者かが近づいてくる音がしてびっくりして振り向くと、そこにはアル・・いやアルフリード王子から逃げようとしたときに苦肉の策で動かした鶏が、私の足に猛スピードで激突した。思っても見ない下方からの衝撃に、すぐに体勢が崩れて仰向けに転がった。

「どひゃーー!!」っと可愛げの欠片もない素っ頓狂な声が自然にでちゃった。

あ・・・綺麗な空・・。

思い切り後頭部を打ち付けて、少し気が遠くなりそうになるのを気合でこらえる。
しばらくじっと痛みに耐えた後で、ゆっくりと起き上がろうとする。と・・・なんだか左手が重い。ふと見ると崩れた壁から突き出していた鉄の棒が、ちょうど腕の辺りを貫いている。
目の錯覚かと思い、何度も確認する。
左腕を何度見ても、数ミリの針金の太さの金属が突き抜けている。

これ・・・ヤバイやつだ・・気を失いそうになる。気を失いたい。なのに気を失えない。目は冴えたままだ。

見たくも無いのに、また見てしまう。
こういうのドラマで見たことがある。うん。抜いちゃダメなんだ。抜くと出血多量で死んじゃうんだ。

私は何とか痛みに耐えながら、壁の塊から針金をはずす。これは意外と簡単にできた。
そうか時が止まっていれば重さは関係ないから、簡単にはずせちゃうのね・・・なんて敢えて物理的なことに思考を逸らす。

いかんいかん。現実逃避はいかん。でもこれどうする?あの、お二方に見せるのはちょっと・・・というか、かなり間抜けすぎて、嫌だ。
そうでなくても戦闘力にカウントされていないアウェイ感に悩まされているのに、これ以上役立たず認定はされたくない。
この際、なんとかマントで隠して、時間を動かしたときにでもアイシス様にお願いして治して貰おう。女王様だけど医療班だからね。一応プロだから、あの人。

私は左腕をマントの中にしまうと、何食わぬ顔でお二方を探した。
彼らはもう、2体目の大魔獣を退治・・・っていうか刺し尽くしたらしく、今は魔獣に取り組んでいた。
倒すとか退治するといった動詞からは、一番遠い作業だよね。これ・・・。うん。
なんだか最初は左腕がジンジンと痛んでいたのが、今では焼けるような痛みに変わってきていた。

ううーー。早く全部やっちゃってくれ!!そいでもって、まずはアルフレード王子に王城に帰ってもらう。それから時を動かしてやっと女王様だ。
痛みに耐えられないときは、おじいちゃんが何か言ってたなぁ。そうだ!!
私は右手で頬をつねることにした。予防注射を受ける時よくやっていたことを思い出したからだ。   
痛みの分散。分散。無心。無心。

「何をしているんだ。サクラ」

気がつくと目の前にアル・・・もといアルフリード王子(これ舌噛みそうになるんだよね)とユーリス様が立っていて、右頬をつねっている私を不思議そうに見つめていた。


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