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ユーリスの想い
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サクラが気絶した。あまりの痛みに耐えられなかったのだろう。
私が治療を施した後アルフリード王子が、医療魔法で全身の血を清浄化する。サクラを心配そうに見つめるその瞳は、どこかで見たようなことのある目と同じだった。
そう、彼女を見つめる私の目だ。
サクラが休みの日には、毎日図書館に通っていることは知っていた。何度も一緒に行きたいといおうと思ったのだが、いえなかった。
何故なら私は騎士であり貴族だ。隊長格に慣れている訓練場の者ならともかく、町の図書館に行けば人々に囲まれて、彼女は本を読むどころではなくなるだろう。
私の知り合いということで、悪意のある者達に利用されたり、傷つけられたりすることも想像に難くない。
まさかそこでお忍びできていたアルフリード王子と会っていたなんて、思いもよらなかった。
アルフリード王子が彼女を愛するようになることは、とても自然なことだったと思う。女性嫌いの異名を持つ王子だからこそ、彼女を魅力的に思うであろうことは容易に想像ができる。
サクラが聖女として召喚された、異世界から来た少女だと聞いたときは心底驚いた。
しかも絶対不可能といわれる、時を止める能力を持っていること。
その能力で彼女が今までやってきたことといえば、調査書の改ざんと、ドルミグ副隊長への反撃。特に私を呼び出すために手紙を書き、私室に忍び込んだと言うくだりでは大笑いしそうになった。
新作オリボレン。これで私を釣ろうと思ったらしいが、それは見当違いだ。私はドルミグ副隊長と訓練・・の文字を見た途端、すぐに部屋を飛び出したからだ。
ドルミグ副隊長の選民思想は知っていたので、常々警戒はしていたが、あの日は油断していたとしか言いようが無い。
普通の人間なら、時間を止められれば自分の私利私欲に使うだろう、がサクラはそうではない。
彼女らしくて、微笑ましい。また惚れ直しそうだ。
しかし今現在アルフリード王子のサクラを見つめる目を、このまま放置するわけにはいかない。
いくら王子でも、彼女だけは渡せない。
「アルフリード王子。ここは私が見ていますから、王城に戻ってくださって結構ですよ」と、牽制しておく。
「どうせ王城でもサクラが目を覚まさない限り、時間は止まったままだ。それならばここにいる」
アルフリード王子が、何を考えているのか推し量れない無表情のまま、サクラから目を話さずに言う。
ここらで、釘を刺しておこう。これ以上彼女に夢中になられるのも困る。
「ところでアルフリード王子は彼女の夢を知っていますか?真面目で浮気しない実直な人で、かつお互いに支えあえる人と平凡に暮らしたいそうです。可愛い夢ですね。それと子供はたくさん欲しいといっていました。私ならそんな生活を与えてあげられます。実は夜会の日に彼女にプロポーズをしたんですよ。返事はまだ貰っていませんが、きっといい返事が聞けると思っています」
アルフリードの無表情が、さらに無表情になる。
王子は彼女を見つめたまま、その手に自身の手を重ねた。
「ユーリス騎士隊長。お前は5男とはいえ4度の戦功を評価されて、爵位を授与されたはずだ。平凡とは程遠いだろう」
私も負けじとばかりに、彼女の反対の手を握り締める。
そんなにサクラを私に譲りたくないのか・・・。
「私は爵位には興味ありません。ダイクレール家の者を養子にして、その者に爵位を継がせようと思っています。それに彼女の能力を鑑みると、私ほどサクラを守るのに適任な人材はいないと思います」
「サクラは聖女だ」
「セイアレス大神官は、彼女を聖女ではないと判断したらしいですよ」
そう彼女は大神官に聖女ではないとの決断を下された。今の彼女の立場は平民だ。
王子が平民を正妃にすることはできない。爵位が無い私ならば可能だ。
聖女ならば、王族と婚姻するのが慣わしだ。大神官が彼女を聖女ではないと見誤ったことが、幸運だった。
セイアレス大神官は、一度公に発表したことを覆しはしないだろう。この度召喚された聖女はユイカただ一人だと・・・。
私はその幸運を、神に感謝した。
私が治療を施した後アルフリード王子が、医療魔法で全身の血を清浄化する。サクラを心配そうに見つめるその瞳は、どこかで見たようなことのある目と同じだった。
そう、彼女を見つめる私の目だ。
サクラが休みの日には、毎日図書館に通っていることは知っていた。何度も一緒に行きたいといおうと思ったのだが、いえなかった。
何故なら私は騎士であり貴族だ。隊長格に慣れている訓練場の者ならともかく、町の図書館に行けば人々に囲まれて、彼女は本を読むどころではなくなるだろう。
私の知り合いということで、悪意のある者達に利用されたり、傷つけられたりすることも想像に難くない。
まさかそこでお忍びできていたアルフリード王子と会っていたなんて、思いもよらなかった。
アルフリード王子が彼女を愛するようになることは、とても自然なことだったと思う。女性嫌いの異名を持つ王子だからこそ、彼女を魅力的に思うであろうことは容易に想像ができる。
サクラが聖女として召喚された、異世界から来た少女だと聞いたときは心底驚いた。
しかも絶対不可能といわれる、時を止める能力を持っていること。
その能力で彼女が今までやってきたことといえば、調査書の改ざんと、ドルミグ副隊長への反撃。特に私を呼び出すために手紙を書き、私室に忍び込んだと言うくだりでは大笑いしそうになった。
新作オリボレン。これで私を釣ろうと思ったらしいが、それは見当違いだ。私はドルミグ副隊長と訓練・・の文字を見た途端、すぐに部屋を飛び出したからだ。
ドルミグ副隊長の選民思想は知っていたので、常々警戒はしていたが、あの日は油断していたとしか言いようが無い。
普通の人間なら、時間を止められれば自分の私利私欲に使うだろう、がサクラはそうではない。
彼女らしくて、微笑ましい。また惚れ直しそうだ。
しかし今現在アルフリード王子のサクラを見つめる目を、このまま放置するわけにはいかない。
いくら王子でも、彼女だけは渡せない。
「アルフリード王子。ここは私が見ていますから、王城に戻ってくださって結構ですよ」と、牽制しておく。
「どうせ王城でもサクラが目を覚まさない限り、時間は止まったままだ。それならばここにいる」
アルフリード王子が、何を考えているのか推し量れない無表情のまま、サクラから目を話さずに言う。
ここらで、釘を刺しておこう。これ以上彼女に夢中になられるのも困る。
「ところでアルフリード王子は彼女の夢を知っていますか?真面目で浮気しない実直な人で、かつお互いに支えあえる人と平凡に暮らしたいそうです。可愛い夢ですね。それと子供はたくさん欲しいといっていました。私ならそんな生活を与えてあげられます。実は夜会の日に彼女にプロポーズをしたんですよ。返事はまだ貰っていませんが、きっといい返事が聞けると思っています」
アルフリードの無表情が、さらに無表情になる。
王子は彼女を見つめたまま、その手に自身の手を重ねた。
「ユーリス騎士隊長。お前は5男とはいえ4度の戦功を評価されて、爵位を授与されたはずだ。平凡とは程遠いだろう」
私も負けじとばかりに、彼女の反対の手を握り締める。
そんなにサクラを私に譲りたくないのか・・・。
「私は爵位には興味ありません。ダイクレール家の者を養子にして、その者に爵位を継がせようと思っています。それに彼女の能力を鑑みると、私ほどサクラを守るのに適任な人材はいないと思います」
「サクラは聖女だ」
「セイアレス大神官は、彼女を聖女ではないと判断したらしいですよ」
そう彼女は大神官に聖女ではないとの決断を下された。今の彼女の立場は平民だ。
王子が平民を正妃にすることはできない。爵位が無い私ならば可能だ。
聖女ならば、王族と婚姻するのが慣わしだ。大神官が彼女を聖女ではないと見誤ったことが、幸運だった。
セイアレス大神官は、一度公に発表したことを覆しはしないだろう。この度召喚された聖女はユイカただ一人だと・・・。
私はその幸運を、神に感謝した。
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